自費出版がリーズナブルになったので小説本を作ってみました!

こんにちは。編集者で小説家で丑年の魚住陽向です。今年(2021年)の誕生日で還暦を迎えます。昨年から「note」でこんなエッセイ連載を始めてしまいました。そして、せっかくですので「アークのブログ」企画として「今年還暦だからこそ初めてのことに挑戦してみた!」シリーズも始めます。今回は小説家らしく、紙の本の「自費出版」に挑戦してみた報告です。自費出版に興味ある方の参考になればと思います。(公開:2021年2月5日/更新:2022年1月16日)

紙の本を作り始める前に!

この本を制作したのは2020年秋(小説を書き上げたのは2019年春)。分かる範囲で自費出版のノウハウを放出します。完成した本は大好評発売中なので、買ってね。読んでね。。

私は出版業界の片隅に約40年棲息しています。編集者なので「自分で編集できるからいいね」と思われるかもしれませんが、編集者だからこそ分かることがあります。

それは、原稿執筆者(作家)と編集者が同一なのはあまりいただけないということ。理由は、「客観性と冷静さがなくなる」からです。私も当初は、予算のなさと個人的な制作をお願いするツテがなくて、自分で編集しようとしていました。しかし、アーク・コミュニケーションズのご協力を得ることができ、この小説本を制作する運びとなったわけです。ありがとうございます。

ここで、紙の本を自費出版する際に必要な目的(目標)やスキルを挙げておきます。

●出版の目的
無料で贈呈する、人生の「記念」や「思い出」「記録」なのか、それとも有料販売して、「ひろく大勢の人に読んでほしい」(制作費の元はとりたい)のか。これによって印刷部数が変わってきます。

販売する場合、装丁デザインも変わってきますが、設定が重要なのは「販売する場」(流通)です。それは「イベント」や「実店舗」だったり、インターネットの販売サイトだったりします。それもちゃんと最初から考えておきましょう。

●必要なスキル
・執筆者(作家)……執筆した作品が既にあることが前提です。それに今回は、私がイラストレーターを探してアポ取りしました。また、一般社団法人日本音楽著作権協会(JASRAC)に申請手続きも自分で行っています。
・編集者……アークの取締役・成田さんがつとめてくれました。本文やノンブルの書体(フォント)やルビの振り方など、ストーリーのイメージに合わせて凝ってくれました。用語統一など原稿整理、誤字脱字、変換ミスのチェックなど編集者にお願いしないと仕上がりがキレイになりません。
・表紙デザイン・装丁デザイナー……始祖鳥スタジオ・小西幸子さんがたくさんの可愛いデザイン候補を挙げてくれました。「アリス体」という昭和ロマンな書体がとてもお気に入り。やっぱり、餅は餅屋なのです。

表紙にイラストを使うか写真を使うかで、誰に、どんなイメージで依頼するかが変わってきます。今回は魚住が小説のイメージに合うイラストレーターを探しました。日頃からお仕事をお願いできそうな好みのイラストレーターや書道家、写真家をSNSで見つけるとフォローしています。その中からイラストレーターの「らすく」さんに直接SNSで連絡・依頼したのです。

今作では文中にどうしてもある楽曲の歌詞を使用したくて、音楽使用許諾申請しました。「厳しそう」「怖そう」「高額そう」「面倒くさい」など勝手なイメージを持っているかもしれませんが、結構簡単ですし、印刷部数も少量なので高くもありません。自費出版といえども著作権は大切です。簡単に、手続きの流れ(「出版物」の場合)をお知らせしておきます。

まずは、気軽に一度、一般社団法人日本音楽著作権協会(JASRAC)のWebサイト(出版物などの製作)にアクセスしてみてください。→https://www.jasrac.or.jp/info/create/publish.html
※紙の本ではなく、電子書籍の場合は料金が異なるので要注意です!
※「楽譜・書籍などの出版物 使用料計算シミュレーション」をやってみましょう。
※あなたが使用したい曲の歌詞がJASRAC管理作品か「作品データベース」で確認してみよう!

あとは、サイトにある「手続きの流れ」通りに申請手続きをするだけです。許諾番号をいただくと嬉しいものですよ。
え? 難しい? 面倒臭い? 私は楽しくてしょうがなかったけどなぁ。分からないことがあったので2回ほどJASRACに電話問い合わせしてみましたが、優しいおにいさんにとても分かりやすく親切に教えてもらえました。それでも面倒臭かったり、お金を一銭も使いたくなければ、楽曲の歌詞を使用しなければいいだけのことです。あとは、イメージ通りの歌を自分で作詞するのはどうでしょう。

ここでのポイントです! 「自分は素人なので編集者に頼むルートがない」という方は、「出版社の自費出版サービス」に頼むべきです。最近は「印刷所の自費出版サービス」もあるようです。

リーズナブルなオンデマンド印刷

さて、とっても大切なのが印刷所です。ここで予算が決まるし、出来も変わる。だからこそ、複数の印刷所に見積もりを出してもらうのです。今回は編集者である成田さんにお任せしました。

印刷所のWebサイトに料金表が出ている場合もありますが、お願いして見積もりを出してもらった方が安心する人も多いと思います。電話でもメールでもお問い合わせフォームからでも勇気を出して問い合わせしてみてください。その際に、自分が出したい本の条件を決めておくことです。( )内は私の場合です。

・印刷方法(オンデマンド印刷) ・印刷部数(100部) ・完成した本のサイズ(四六判=単行本の大きさ。ほぼA5サイズ) ・本文の合計ページ数(表紙込み228ページ) ・表紙印刷色(スミ1色) ・本文の印刷色(スミ1色) ・表紙カバーの有無と印刷色(表紙カバー・フルカラー)
※このあたりまでは決めておいてください。

・紙質(クリーム系キンマリ) ・帯の有無(帯4色・巻きサービス) ・別料金のオプション
※このへんは先方に相談してください。

・スケジュール ・入稿方法 ・搬入 ・支払い方法 ・校正の有無や回数 ・セット販売やキャンペーン
※これらに関しては印刷所のやり方に準じた方がお得だし、やりやすいです。

そして、オフセット印刷かオンデマンド印刷か、重要な印刷方法で料金が変わってきます。私の場合、少数印刷なのでオンデマンド印刷がリーズナブルなのです。

成田さんがとても良い印刷所を見つけてきてくれて、見積もりもいただき、マッチングばっちりだったので、あかつき印刷にお願いすることにしました。ざっくりした印刷代金を公開すると7万1860円(帯オプションを除く)。基本的には前金制です。本当に貯金しておいてよかったです。入稿してから10日後には書籍100部(ダンボール箱3個)が家に届きました。

ダンボール箱を開けてビックリ! おまけで新米が同梱されていました。あかつき印刷は新潟県魚沼市にあります。さすがは米どころ! 100部お願いしたのに8部おまけもありがとうございます。

約40年間、いろんな雑誌や書籍を作ってきました。自分の小説『天然オヤジ記念物 江戸前不始末』は電子書籍にてAmazonから発売されています。でも紙の本で、ちゃんとした装丁での自分の小説本を手にしたのは初めてのこと。嬉しくていろんな方向から本を撮影しましたよ。私の本はフォトジェニックだなぁ。本が入っていたダンボール箱さえ捨てられずにいます。制作ご協力してくれた方々には感謝しかありません。足を向けて寝られません!

自費出版なので、一般の書店では販売されていません。普通の図書館にも置かれていません。でも、私が書いた事実を残すために、国立国会図書館に足を運び、この本を納本してきました。

一般貸し出しはなく、本を見られることはありませんが、「私が書いた小説が一冊の本になった事実が国に記録される」ことになります。データベースで確認してニヤニヤしています。

販売は同好の士が集まる場所で!

●文学フリマ
アマチュアによる文学作品が販売されるイベントといえば「文学フリマ」。ここは「アークのブログ」で取材させてもらったことがあるし、過去に3回ほど出店(コピー本を販売)したのでお馴染みです。

2020年春には中止となっていたので心配でしたがその年の秋には無事開催されました。私も「1ブース(会議机半分スペース)+椅子1脚分」を申込み(6000円)して、出店してきました。

開催するにあたって、新型コロナウイルス感染症対策も徹底されて、入場時の確認もキチンと実施されていました。マスク着用の確認、体温一次スクリーニング(入口サーモグラフィーにてスタッフが確認)、手指のアルコール消毒、新型コロナウイルス感染症接触確認アプリ(COCOA)のアプリホーム画面確認など、クリアしてはじめて入場可能となります。

「会場内の換気」はもちろんのこと、「ブースの間隔をあける」(=出店人数の制限)、「開催時間短縮」(12時〜17時に)、「見本誌やチラシのコーナーの中止」など、今までのやり方とは違ってきている部分も多く、スタッフ(ボランティア)は大変です。ご苦労様です。

過去に出店した際にはお隣の人と仲良くおしゃべりなんてこともありましたが、今回はディスタンス取って静かに販売。元々「文学フリマ」は「音出し禁止」「コスプレ禁止」なので比較的静かなイベントです。今回はそれに輪をかけて静かだなと感じました。少々寂しい印象もありますが、かえってよかったことが「お隣さんがオタク人気が爆発的に高く、行列がすごすぎて、うちに人が全然寄りつかない」現象がないということです(笑)。

この日、時間短縮&参加者減少のなか、計7冊ご購入いただけたのは嬉しかったですね。コロナ禍で上出来だと思います。お買い上げ、誠にありがとうございました。

■第三十一回文学フリマ東京

開催日時:2020年11月22日(日) 12時〜17時

会場:東京流通センター 第一展示場

アクセス:東京モノレール 流通センター駅下車すぐ

URL:https://bunfree.net/event/tokyo31/

(出店者入場は10:30〜11:50)


●COMITIA(コミティア)
今回初めて、自主制作漫画誌展示即売会「COMITIA」というイベントにも出店してみました。申込料は6000円。こちらも「新型コロナウイルス感染症対策」は万全です。「COMITIA」は文学ジャンルのブースも設けられていますが、マンガ同人誌がメインなので、ちょっと肩身の狭い思いをするというのが本音です。でも、お隣のおにいさんのアドバイスを受けつつ、静かな5時間を過ごし、それでも計5冊ご購入いただけました。こんなご時世なのにまずまずでした。足を止めてくれただけでなく、ご購入くださった皆様、ありがとうございました。

■COMITIA134

開催日時:2020年11月23日(月/祝) 12時〜16時

会場:東京ビッグサイト西1・2ホール

アクセス:ゆりかもめ 東京ビッグサイト駅下車 徒歩約3分

URL:https://www.comitia.co.jp/html/134.html

(サークル入場は10:00〜11:30)


●Webサイトで販売
自費出版や同人誌の販売を行うWebサイトはいろいろあるようですが、私は「BOOTH」というマンガやイラスト系が強いところに「昭和な魚住ひなた堂」というショップを設けています。

「書く」「描く」「つくる」才能と、「伝える」「知らせる」「教える」才能。そして、「売る」才能……。全部違います。別の才能なのです。
あなたの「読む」「見る」「感じる」才能を刺激したい……私はそんな作品を創っています。

今回は自腹を切って自費出版に挑戦したわけですが、何よりアーク・コミュニケーションズの協力なしでは小説本は完成しませんでした。そのうえ、ご厚意でアークWebの「制作実績ページ」にこの小説本を掲載させていただきました。重ね重ね、感謝します。

このブログが皆さんの自費出版制作の一助になれば幸いです。

『二人羽織コンシェルジュ 〜紳士は下北沢に舞い降りた。』

魚住陽向・著

2020年11月20日発行

協力:(株)アーク・コミュニケーションズ

BOOTHショップ「昭和な魚住ひなた堂」にて発売中!

URL:https://uozumihinata.booth.pm/items/2479038

もしくは、直版あり!(魚住陽向SNSアカウントにご連絡ください)

●文・撮影・編集・WordPress=魚住陽向(編集者・小説家)
[Twitter]https://twitter.com/uozumihinata