ラジオ界のレジェンド・藤井青銅トークイベント!生き残るための『一芸を究めない』生き方

こんにちは。編集者の魚住です。「ラジオ界の生きる伝説」と言われている放送作家・藤井青銅さんの新刊『一芸を究めない』発売記念トークイベントが開催されると聞き、これは『幸せな裏方』や『一千一ギガ物語』のイベントに続いてぜひ取材せねば!と、渋谷のLOFT9(オンラインもあり)に行ってきました。『藤井青銅“塾” -質疑応答100本ノック-』ということでラジオ好きの質問にばんばん答えるという内容です。そして今回は、会場内で見つけたアツいファンにイベントの感想などレポートしてもらいます。私も初の試みにワクワクです!(公開:2022年8月26日)

一芸を究めない』(春陽堂書店)発売記念
藤井青銅“塾” -質疑応答100本ノック-

日時:2022年8月17日(水) 19:00開場/19:30時開演
会場:LOFT9(東京都渋谷区円山町1-5 キノハウス1F)
出演:藤井青銅
進行:村上謙三久
★まだ間に合う!
配信チケットはキャスマーケットにて発売中
※アーカイブは8/31 22:00まで購入可/8/31 23:59まで視聴可能!

藤井 青銅(ふじい・せいどう)

放送作家/脚本家/小説家/作詞家……などなど(本文参照)

公式サイト☞ https://www.asahi-net.or.jp/~MV5S-FJI/
Twitter☞ https://twitter.com/saysaydodo
note☞ https://note.com/saydo/

村上 謙三久(むらかみ・けんさく)

編集者・ライター。『深夜のラジオっ子』、『声優ラジオ“愛”史 』著者。『芸人ラジオ』『ラジオの時間』(Twitterブログ)ブランド編集長。プロレス関係のお仕事も。

二刀流以上?エンタメ界の千手観音?

まずは藤井青銅さんの略歴を、と書き始めたら、そのお仕事や活動があまりに多岐に渡りすぎて枠に入りきらなくなってきた。まぁ、それを割愛するのが編集者の腕の見せ所ではある。だが、今回のテーマである『一芸を究めない』からいうと、「おかしな仕事も全部やる多才な藤井青銅」を見せつけたくなってきたのである。そこであえてプロフィールを本文に持ってくるという荒技を繰り出そう。すでに知ってる人はしばしのお付き合いを!

藤井青銅さんは1955年生まれで山口県出身。すべては1979年(昭和54年)、23歳の時に第1回「星新一ショートショート・コンテスト」に入賞したことから始まる。ライトノベルの源流といわれる徳間書店アニメージュ文庫にて『死人にシナチク』シリーズなどの小説を執筆。歴史本やエッセイ『幸せな裏方』など数多くの書籍を出版。また、ゆるパイ研究家(日本パイ倶楽部 理事)としても『ゆるパイ図鑑 愛すべきご当地パイたち』(扶桑社)を刊行。

最近では『「日本の伝統」の正体』(柏書房)が大ヒット。『一千一ギガ物語』(猿江商會)や『ハリウッド・リメイク桃太郎 』(柏書房)、『通説を覆す世界と日本の近現代史 ―自由主義VS専制主義200年の攻防!』(さくら舎)など新刊を発売するたびにトークイベントにひっぱりだこ!

伊集院光のラジオ番組にて「架空のアイドル・芳賀ゆい」プロジェクトメンバーの一人として仕掛けを考えたり、日曜の夜・資生堂一社提供のトーク番組で古舘伊知郎司会の「オシャレ30・30(サーティサーティ)」(日本テレビ)の構成をしたり、腹話術師・いっこく堂のプロデュースしたりと、メディアでの活動は多岐に渡る。

そして今まさに「オードリーのオールナイトニッポン」(ニッポン放送)が大人気。「オールナイトニッポン」に関しては、藤井青銅さんの証言が載っている『深解釈 オールナイトニッポン~10人の放送作家から読み解くラジオの今~』(扶桑社)が2022年9月9日発売予定。また、ラジオ好きスタッフが制作したテレビドラマ『お耳に合いましたら。』(テレビ東京系)でのご本人役(主人公の妄想シーン内で青銅さんが「築地銀だこ」制服姿)で出演依頼が! ライフワークとして、落語家・柳家花緑と47都道府県のご当地新作落語をつくり、「D47落語会」にて全国を巡っている。

と、一気に読むとちょっとゼイゼイするプロフィールだ (笑)。世の中、何かにつけて「二刀流」という表現をしたがるが、それでいうと藤井青銅さんの場合、もはや千手観音である。

トークイベントで学ぶ「一芸を究めない」生き方

さぁ、みんなの憧れ!サブカルの聖地「ロフト9」でトークライブ取材の開始です。「アークのブログ」で藤井青銅さんのトークイベント取材は今回で3回目。いつも大好評です。でも、編集プロダクションであるアーク・コミュニケーションズ(以下、アーク)のブログ記事で「なぜ?」と思われたかもしれません。その理由はいろいろあります。

まず、編集者やカメラマン約50名以上が所属するアークにもラジオ好きがおり、リトルトゥース(『オードリーのオールナイトニッポン』リスナーの通称)が存在すること。

そして、今回の新刊『一芸を究めない』は、編集者はじめクリエイターはもちろんのこと、まさにウィズコロナの時代を生きる我々に必要な生き方といえるような気がするからです。

さて、そんな新刊の発売を記念して、企画されたトークライブ『藤井青銅“塾” -質疑応答100本ノック-』。企画したのは(株)ロフトプロジェクトの石崎さん。「伊集院光のOh!デカナイト」(ニッポン放送)放送の頃からのラジオ好きで「憧れの藤井青銅さんと仕事ができる」と嬉しそうです。

新刊『一芸を究めない』(春陽堂書店)の編集者さんをはじめ、過去の藤井青銅出版物担当者を見ていると、「憧れの人とやっと仕事ができる」喜びに溢れています。学生の頃にいつも聴いていたラジオ番組。社会人になって、なかなか仕事がうまくいかない、思うように結果が出せない日々。しかし、30歳代後半〜40代になってようやく自分の企画が通ってきた。企画が通るまでの経験・実績・信用を得られるようになった。自分の思い通りにブッキングができる立場になった。夢が叶う日です。同様の方は多分、全国の書店やラジオ局の皆さんの中にもいそうです。

そして、その下の世代がトークライブに参加し、耳を傾けます。ほとんどがリトルトゥースのようです。第1部は質疑応答。事前に送られてきた質問の数々に藤井青銅さんが答えていきます。仕事の仕方から休日の過ごし方まで、アイドルのインタビュー並みに答えてくれます。第2部は「ゆるパイ」スライドショー。「ゆるパイ」の起源から種類分類、全国の分布図…これはすでに藤井青銅の持ちネタなのです。他にも「野菜のおもしろブランド」というスライドショーも面白いのでオススメですよ、皆さん。

藤井青銅さんの「ゆるパイ」プレゼン。それが、あの日本を代表する歌手の森山良子さん(「オールナイトニッポンmusic10」の月曜パーソナリティ)をパイ好きにしてしまい、ついにはご自身の名曲をもじったオリジナルパイ「この広い野原いっパイ」を作ってしまった(「日本パイ倶楽部」全面協力)というエピソードに大爆笑でした。

今回のイベントはオンラインでも参加できますが、ロフト9までわざわざ足を運んでやって来た激アツのファンがいました。そこで、その場で急遽思い立ち、お客さんの中から3人に原稿依頼をしてみました(青銅さん許可済み)。

・このトークライブを見た感想を書いてください
・文字数に制限なし
・期限は2週間ほど

過去に編集者として取材現場でナンパ(?)するのには慣れていましたが、ちょっと久しぶり。原稿来るかしら? すると、3人からはすぐに原稿が送られてきました。早いし、上手い。お仕事しながらもやりたいことがある3人。これぞ、「一芸を究めない」若者たち代表です。お三方ともアツく感謝です。ありがとうございました。

『藤井青銅”塾”』 トークライブ感想

《一芸を究めない_トークライブ雑記》木村 樹

いきなり私自身の話ですが、「会社員をやめて作家に専念してくれよ」と昔、同じ演劇界で戦っていた同士から、言われたことがあります。私はサラリーマンをやりながら、台本を書いていました。冒険者ではなかったのです。
今と違って、その頃は「なんでも屋」のように複数の仕事をやっている人間は、表現者の目から見れば「節操がない」「ひとつの業種と心中する覚悟がない」「なにかが失敗したときの逃げ道を作っている」保険だらけのつまらない印象だったと思います。
逆に真っ当に勤め人や職人をやっているタイプからすれば「あ、趣味で演劇やってるって話だよね」と片付けられました。
件の一言で、その時の生き方に罪悪感を覚えるときすらありました。生活が破綻しても、その世界で生きていたいぐらい「ものづくり」が好きかどうか、仲間から常にナイフを向けられている気分でした。

青銅さんはなぜ、あんなに軽やかなんだろう。まるで行き先を決めない旅人のように、なぜ淡々とお仕事をされているのだろう。「昨日、なに食べました?」という質問に答えるみたいに、なぜ飄々とした回答ばかりなのだろう。そのヒントが凝縮されたイベントでした。
もっとも心を揺さぶられたお話は、「みなさんは携帯や本もない状態で、一時間過ごさないといけなくなったらどうしますか」という内容。
青銅さんの回答は「歩きながら、過去の記憶力の一人遊びをしている。きちんと覚えきっていない事象を、どこまで思い出せるかの実験。例えば、タンパク質って言葉をはじめて聞いたときに意味をすぐには調べなかった。答えがわかると、楽しみがなくなるから」
台本でいうところの行間の時間を、なにに費やすか。好奇心の先をどう形にするか。
その遊びのプロが今、ここにいるんだ、と。
途中、繰り広げられた青銅さんの「ゆるパイ(全国のご当地パイ菓子みやげの分布図)」の講座がその最たるものでした。
最後の締めの挨拶で「まだ書籍化していないアイデアが4つあり、今は明かせない」と仰っていましたが、その4つの好奇心は誰も容易に想像できないものなのでしょう。
“一芸を究めない”党の青銅代表の掲げたマニフェストは、「日常の気付きを楽しむ」という一芸を究めた男の生きざまでした。
さあ、一時間、丸腰で散歩して帰ろう。青銅さんの本を小脇に抱えながら。

木村 樹
1984年秋田県生まれ。会社員の傍ら、コント作家やトークライブの司会やチラシのデザインなど何足の草鞋も履きまくる。レプロエンタテイメント主催コント台本のコンテスト「百演」にて優勝。2022年10月、新作コントライブ「頓服」敢行予定。
Twitter:https://twitter.com/tatsuki_kimura
Instagram:https://www.instagram.com/kimura_tatsuki/

《トークイベントは生に限る》F

渋谷にあるLOFT9で、放送作家の藤井青銅さんのトークイベントが開催される。それも、リアルなイベントで!それを聞き、私はすぐさまチケットを買った。もちろん、今回のこのイベントは、オンラインでも見られたのだが、私がこのイベントに参加したのはこの「リアル」=「生」という空気感・肌感を感じたいからだ。
まだまだ新型コロナ陽性者数が高止まりしているこのご時世では、オンラインイベントが多いのは仕方がない。そんな中でも以前から青銅さんは、出演者をリモートさせることに異議を唱えている。それは「いろいろな人が集まることに意味があり、そこにラジオの良さがある」からだとか。その通りだと思う。
ラジオ局に勤務している身だからこそ、とてもよく分かる言葉だ。
そして、このイベントはラジオに関わるすべての人々にも見て・聴いてもらいたいと強く感じた。
藤井青銅さんと参加者一人一人との長い質問のやり取り。
近い距離感で、優しい上司に相談に乗ってもらってるような気さえした。
この夜、私は非常に濃密な時間を過ごした。

やはり、トークイベントは生に限る。

F
ラジオ局勤務

《トークイベント感想》野畑 文

「私はラジオに命を救われました」
冒頭から重い文章で、すみません。
でもラジオは人の命を救うことが出来るメディアだと、私は思っています。
言葉は時に、凶器になります。20代、たくさんの言葉に疲弊し、ゴミ箱にさえ入れないゴミのような日々を送っていた私を救ってくれたのは、偶然聴いていたラジオから流れてきた”言葉”でした。  

私は現在、シナリオライターになるために、様々なコンクールへ応募する日々なのですが、いろいろなシナリオを書いていく内に”言葉”を大事にするラジオドラマに魅力を感じました。  
そんな中、藤井青銅さんが書かれた『ピーチ・ガイ〜ハリウッド・リメイク『桃太郎』〜』(NHK-FM 2021年11月1日〜12日放送)を聴いた時、初めて「早く続きが聴きたい!」と感じた、ラジオドラマの体験でした。
ラジオが大好きで、ラジオドラマの作家としても活躍したい私は、藤井青銅さんのイベントを虎視眈々と待っていたので、『一芸を究めない』(春陽堂書店)の出版イベントを知り、即時に申込みをし、参加をしました。
「藤井青銅”塾”-質疑応答100本ノック-」とイベントのタイトルにもあるように、会場からも青銅さんへ質問を受け付けるコーナーがあり、参加された方々がそれぞれの思いを青銅さんへ質問する中、私はラジオドラマを書いていくうえで、現在悩んでいることを質問しました。
すると青銅さんは「10人居たら2人ぐらいは『それ面白いですね』って言ってくれる人が居るから、そこを狙ってやっていったらいいよ」と答えて頂き、シナリオの学校からの帰り道、悔しくて泣きながら帰ったあの日が、今まさに目の前にいる藤井青銅さんの”言葉”で救われました。

『一芸を究めない』。この生き方はこれからもっと多くの人に広がっていく考え方であり、誰かを救う”言葉”になる。私はそう信じて、今日も藤井”大作家”青銅先生のように幅広く活躍出来る作家になれるよう、ゆるパイを食べながらシナリオを書き続けます。

野畑 文
Twitter☞ @ayafumi113

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魚住は実は人見知りです。でも、編集者や物書きは「人に会わないで済む仕事」ではありません。好奇心旺盛で、いろんな経験をしたり、いろんなスキルを持っていた方がいいのです。魚住も「アークのブログ」制作は、企画・取材・編集・ライティング・撮影・画像加工・WordPressコーディングと、ほとんど一人(普段、撮影はアークのカメラマン清水氏にお願いしています。スケジュールが空いていればですが)。WordPressのスキルを80%から100%にするためにこの夏、パソコンスクールに通いました。自腹で約11万円払い、60歳の手習いですね(笑)。

他にも小説を書いたり、料理やお酒の記事企画を考えたり、撮影の練習をしたり、出版の世界がもっと楽しく盛り上がるためにはどうしたらいいか模索したり…以前は編集者やりながら書店員もやってみました。技術者や職人さんが好きだったり、「工場萌え」なので工場勤務もしたことがあります。私も一芸を究めない人間です。

この新刊『一芸を究めない』を読めば分かりますが、ひと昔前は「一芸を究めた」生き方の方が尊敬されました。いろんなものに手を出す人間は「フラフラしている」「浮気者」「広く浅く」「飽き性」などネガティブ表現をされたものです。「副業」なども禁止している企業も多かったと思います。

ところがこのご時世、いろいろと息苦しいことも増えましたが、良いことの一つが「一芸を究めない」生き方、いろいろなことをやる人が生きやすくなってきたこと。そして、そんな生き方の方が生き残れる可能性があること。言い方を変えれば「多趣味」「多才」なワケです。本業・副業というよりも「逃げ場所がある」と捉えていた方が人生が楽になりますし。

▲自分の企画を通して、夢をカタチにした「少年オトナ」たち

お仕事的にも精神的にも行き詰まり、悩める魚住に藤井青銅さんが言ってくれた言葉があります。

「依頼なんかなくてもお金にはならなくても、もう知らん顔して好き勝手にやりたいことを全部やってみてはどうですか」

これぞ、『一芸を究めない』生き方です。良い子はマネしてください。そして生き残ってください。今回、取材にご協力くださった皆様、本当にありがとうございました。

『一芸を究めない』
藤井青銅・著
1,500円+税
発行元:春陽堂書店

オードリー、伊集院光、ウッチャンナンチャン、大瀧詠一、柳家花緑……時代を彩る才能と仕事する現役ベテラン放送作家による悩まないための処世術!
仕事で得た処世術、ノウハウやコツはもちろん、著者が考えてきたこと、発見してきたこと、文芸・芸能・放送のこと、80年代バブルから現在に至るまでの心躍る業界クロニクルにもなっている。特にラジオ好きなビジネスマンにお勧め。■新人…「苦労は買ってでもせよ」は本当か?/■人脈…すべては「人」から始まる/■企画…思いつきは無茶でいい ほか。
人には「逃げ場所」が必要なのだと思う。人には「寄り道」も必要なのだ。オンラインでも☞発売中

※この書籍制作にアーク・コミュニケーションズは携わっていません

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●文・撮影・編集・WordPress= 魚住陽向編集者・小説家