オードリーのオールナイトニッポン構成作家・藤井青銅『幸せな裏方』出版記念イベントであるある三昧!

こんにちは、フリー編集者兼小説家の魚住です。今回は放送作家・藤井青銅さんを取材しました。実は小説家でもあり、著書も多い藤井さんがエッセイ集『幸せな裏方』を発売。それを記念して、「みんな誰かの裏方だ!業界裏方あるある大会!」なるイベントが開催されました。アークも書籍や雑誌制作の裏方です。裏方にはどんな幸せがあるのか、楽しい裏方イベントのもようをご覧ください。(公開:2017年5月1日/更新:2022年2月13日)

藤井青銅(ふじい せいどう)
放送作家/脚本家/小説家/作詞家
第1回「星新一ショートショート・コンテスト」入賞。以降、放送作家として数々のラジオ・テレビ番組制作に携わる。また、腹話術師・いっこく堂の脚本・演出・プロデュースを行い、衝撃的デビューを後押し。最近は「d47落語会」にて落語家・柳家花緑に47都道府県のご当地新作落語を提供中。著書『ラジオな日々』『ラジオにもほどがある』 『誰もいそがない町』『あなたに似た街』  『【悲報】本能寺で何かあったらしい……光秀ブログ炎上中!歴史Web2.0』  など多数。また、ゆるパイ研究家(日本パイ倶楽部 理事)としても『ゆるパイ図鑑 愛すべきご当地パイたち』を刊行!大人のためのエンタメ&カルチャーメディア「otoCoto」での連載コラムをまとめたエッセイ集『幸せな裏方』(新潮社)が好評発売中!
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『幸せな裏方/藤井青銅』(新潮社)発売記念!
【みんな誰かの裏方だ!業界裏方あるある大会!】

会期:2017年4月12日(水)19:00〜21:00
会場:東京カルチャーカルチャー(運営:ニフティ)東京都渋谷区渋谷1-23-16 cocoti SHIBUYA(渋谷 ココチ)4階
出演:藤井青銅
ゲスト:石井玄(オールナイトニッポン・ディレクター)、野村秀樹(「otoCoto」プロデューサー)、村上謙三久(雑誌「ラジオの時間」編集長)、川端優子(新潮社編集者)、日野玄太(新潮社 校閲部)
MC:関 智(イベントプロデューサー/元編集者)

まずはお客さんとともに乾杯!
MCはイベント・プロデューサーの関智さん(元編集者)

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第1部:業界裏方あるある大会!どの業界にも「あるある!」

藤井青銅さんの最新刊『幸せな裏方』発売記念イベントが開催されたのは、ニフティが運営するイベントハウス型飲食店「東京カルチャーカルチャー」。2016年12月に渋谷へ移転してからも人気のイベントを催してきただけあってキレイなうえにメジャー感満載です。
お客さんが満杯になったところで、オープニングでは出演者はかっこよく、一人一人呼び込まれて登場!

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ゲストは、藤井青銅さんとお仕事されたことのあるラジオ、雑誌、Webなどメディア関連業界の方々が自分たちの「業界裏方あるある」を披露! 裏方といいながらも藤井さんはオモテにも出る方なので、おしゃべりに自信のないゲストのトークを広げたり、ツッコんだりと絶妙なトーク炸裂です。

【放送作家あるある】
①番組の評判がいいと作家のおかげ、評判が悪いと出演者・ディレクターのせいにする。
②新人はゴミ箱を漁る。
③やったことないジャンルでも、依頼があると「できますよ」とさも経験があるように答え、あとで付け焼き刃で知識を仕込む。
④いつの間にか、鞄に赤ペンが増える。
⑤自分が休んでも番組に支障がないことがバレそうで、休めない。
⑥基本、放送局に忠誠心はない。

あれとあれを違うものに置き換えると、自分にも当てはまることばかりです(笑)。②はどういうことかというと、新人は台本の書き方を教えてもらえないので、捨てられた台本を見て、番組構成台本の書き方を勉強したいということですね。昔の出版業界とちょっと似ています。

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「あるある」ネタだけでイベントができるとは思いませんでした。舞台上に有名人がいなくてもこれだけ盛り上がれることに感動ですね。
ゲストの皆さんの「業界あるある」を抜粋しますが、どれも爆笑「あるある」ばかりです。

【ラジオ・ディレクターあるある】
・普段、話す相手を、ラジオで「喋られる」か「喋られない」かではかりがち(そこはこういう風に話した方がいい、とか余計なことを言って嫌われる。
・カラオケに行くと、音のバランスを異常なまでに調整する。
・色白(深夜放送ばかりで太陽を浴びない生活のため)。
【専門雑誌編集者あるある】
・最初の予定とまったく違う内容になりがち(それでも「あえてこういう本にしました」という体をキープする)。
・裏方取材に惹かれがち(裏方の人間の話に惹かれてしまい、本のバランスが崩れる)。
・インタビュー原稿はどこまで手を加えるべきか、加えないべきかで悩み、わけがわからなくなる。
【Webプロデューサーあるある】
・一部のWeb記事やSNSでは結構誤字脱字が多い。人様のものでも読んでいてつい修正したくなる。
・検索上位の記事は、SEO(検索エンジン最適化)対策をどうやっているか考えてしまう。
・公開直前まで修正が入れられるので、入稿ギリギリまで記事をいじってしまう。
・自サイトと同じような記事を見かけると、自分たちが取材した時より前か後か、が気になる。

メディア業界だけでなく、生活していれば、誰でも特定の業界に属したり接しているはず。規模の大小でも面白さが違って見えます。例えば、「病院あるある」と「町のクリニックあるある」の違いは面白そう。他業種の人の「あるある」を知ると自分との共通点も見つけたり、新しい発見もある。何気なくやっていたことも意外がられたりと、話が盛り上がること請け合いのネタなんですね。

▲舞台上にはおじさんしかいません。華はないけど集客力はあります(笑)

第2部:新潮社潜入レポート(校閲編)と「校閲あるある」

ここまでは、メディア業界の裏方あるあるでしたが、第2部からはついに本題。というのも、藤井青銅さんの最新刊『幸せな裏方』出版記念イベントだったことを忘れそうになっていたからでした(笑)。
ここからは「本の裏方」である新潮社の編集者・川端優子さんと、校閲部の日野玄太さんがご登場です!

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藤井青銅さんは興味を持つと、変わったものをキュレーションしたり、全然知らない業界や企業にでも取材に行きたがる体質です。この度、新潮社から『幸せな裏方』を刊行するにあたり、文字校正などの作業で出会った「校閲」というお仕事にピピン!とアンテナが立ったようで、早速「潜入レポートをしたい!」と担当編集者の川端さんに願い出て、実現したもようです。「校閲ガールではなかったけどね(笑)」と時流に乗っかることも忘れない青銅さんです。

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一番驚いたのは、第1回「星新一ショートショート・コンテスト」入賞者は星新一先生と一緒にヨーロッパツアー11日間という話題。驚いたというより羨ましすぎます。もちろん、編集さんと校閲さんの「本の裏方あるある」も発表! 特に校閲さんは特殊なお仕事だけに「あるある!」というよりも「へぇー!」「そうなんだ!」「なるほどー!」という感心する声が多く聞かれました。

【本の裏方・編集者あるある】(抜粋)
・知らない著者の本は、略歴を確認する。
・既に本を出していないかをすぐ検索する。
・人気にパッと火が付いた著名人がいると本を出さないかオファーしようとして、でも絶対殺到してるよな…と何もしないことがある。
【本の裏方・校閲者あるある】
・普段の読書でも、誤植を見逃しそうな所(平仮名が続く所など)になると読むスピードが遅くなり、つい間違いがないか探してしまう。
・私信のメールでも、一応読み返して誤植がないか確認する(自意識過剰なり)。
・基本、校閲の部屋は静かだが、独り言、うなり声が聞こえてくる。
・時には著者の方から「謝辞に校閲さんのお名前を」と言っていただくことがあり、とても嬉しい反面、誤植が見つかった時のことを考えると、つい腰が引けてしまう。

「編集者あるある」はとてもよく分かります。私も興味のある雑誌などは、たとえ書店で立ち読みしていても、すぐに「奥付」を見てしまうのですが、思い当たる人も多いでしょう。校閲さんになると、作家や編集者も一目置くお仕事なので、そう簡単に「あるある!」とは言えない聖域感があります。でも、「うなり声が聞こえてくる」というのもすごい仕事場です(笑)。

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ここまで散々「業界の裏方あるある」イベントを紹介してきましたが、実は『幸せな裏方』は「あるある」ネタ本ではありません(笑)。藤井青銅さんがお仕事で出会った著名人・無名人とのエピソードを綴ったエッセイ集。「裏方」というキーワードから発想して「あるある」にたどり着くのは放送作家の性(さが)でしょう。

▲イベント終了後は気軽にサイン会!

そしてこの本、かなりおもしろいエピソードが盛りだくさんです。ちょっと紹介すると「いずこに消えた? 手塚治虫直筆・オールスター勢揃いの超レアイラストは誰の手に!」「たった1行にウンヶ月?大滝詠一との駆け引き」「伊集院光に勝手に渡した、こうやって売れろ!レポートの行方」。ほかにも有名声優、森山良子、イルカ、古舘伊知郎、デーモン閣下、80年代アイドルたち、柳家花緑、オードリー……などなど、ヒットの舞台裏がおもしろすぎ!

そして個人的なことですが、五章の「人生の選択」に登場する編集者O氏に藤井青銅さんを引き合わせたのは実は私なのです。もしかしたら彼の人生の選択肢を増やすきっかけを作ってしまったかもしれません(笑)。
「何?どういうこと?」と興味を持たれた方はぜひお読みください。

幸せな裏方
藤井青銅・著
1400円+税
発行元:新潮社
Amazonや全国書店にて好評発売中!

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▲イベントに駆けつけたフリーアナウンサーの五戸美樹さんと記念撮影

●文・編集=魚住陽向フリー編集者、小説家
●撮影・編集=大山勇一