東京にある「北海道ナチュラルチーズ・コンシェルジュ チーズのこえ」に行ってきました!

こんにちは。アーク・コミュニケーションズの編集者・小島です。教養・雑学の書籍をはじめとした実用書などを担当しています。以前には『チーズの図鑑』『日本酒の図鑑』(KADOKAWA/メディアファクトリー)を制作。元々食べるのが大好きなのですが、北海道産ナチュラルチーズ専門店が東京・清澄白河にあると聞いてとても気になっていました。そこで、料理研究家・吉田めぐみさんとともに「北海道ナチュラルチーズ・コンシェルジュ チーズのこえ」に行ってきました。店主である(株)FOOD VOICEの今野さんにお話を聞けたのでぜひご覧ください(公開:2022年5月12日)

※新型コロナウイルス感染症対策を万全にした状態で取材・撮影を行っております。

「北海道ナチュラルチーズ・コンシェルジュ チーズのこえ」

300種類以上のチーズがずらり!

チーズといえば私は以前に『チーズの図鑑』(KADOKAWA/メディアファクトリー)を制作しましたが、「アークのブログ」でおいしい料理レシピを紹介してくれている料理研究家・吉田めぐみさん(吉田めぐみさんのプロフィールと料理レシピ記事はコチラ)もチーズが好きすぎてチーズの資格を取得したようなのです。これはぜひ一緒に行きたいと思い、今日の取材兼お買い物が実現したというワケです。

東京・清澄白河というと「清澄庭園」「東京都現代美術館」が有名ですが、ブルーボトルコーヒーの日本1号店がオープンしたことで一気に注目を浴び、オシャレなカフェが増えました。元々は、隅田川や小名木川、仙台堀川を中心に生活する下町。「北海道ナチュラルチーズ・コンシェルジュ チーズのこえ」はそんな情緒ある下町の住宅街にあります。

北海道の形をした窓が可愛くて印象的な外観。お店に入ると、ガラスケース、冷蔵庫など、店内の隅々まで溢れんばかりのチーズたち。バターもあります。これは乳製品好きにはたまらない天国です。ちょっと種類と数が多すぎて目移りしてしまうほど。幸せな悩みです。

北海道内には100を超えるチーズ工房があるといいます。この「北海道ナチュラルチーズ・コンシェルジュ チーズのこえ」は北海道チーズの第一人者のコンシェルジュが40の工房を選び、300種類以上のチーズが揃っています。

店内にはチーズだけでなく、ワインや日本酒、クラフトビールも並んでいます。もちろん、こちらも北海道産。都内の酒販店ではなかなか手に入らないお酒もあって、こんな機会は滅多にありません。お買い時です。

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さて、お察しの通り、我々のもう一つの目的はお買い物です。めずらしいチーズを知り、冷蔵庫をのぞくのがとっても楽しいです。初めて見るチーズや北海道で造られたワイン、日本酒、クラフトビールなど、店主の今野さんに情報をうかがいながら選びました。気合いが入ります(笑)。

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突然ですがここで、北海道産ナチュラルチーズの種類と代表的なチーズをちょっとだけ紹介します(参考:ホクレン農業協同組合連合会/北海道牛乳普及協会発行「ほっかいどうナチュラルチーズの本」)。皆さんもお買い物の参考にしてください。

北海道産ナチュラルチーズの主なタイプと代表的なチーズ

熟成させない作りたての味わい
■フレッシュチーズ
生乳を乳酸菌や酵素で固め、水切りしてつくる非熟成タイプのチーズ。他のタイプに比べ水分が多く、牛乳本来の風味やさわやかな酸味があり、クセがなく、食べやすさが特徴。
●クリームチーズ●フロマージュブラン●マスカルポーネ●リコッタ●カッテージチーズ

熟成するほどに増す濃厚な旨み
■セミハード・ハードチーズ
生乳を固めたもの(カード)をプレスして水分を少なくした半硬質〜硬質のチーズ。熟成期間は3ヵ月から1年ほど(セミハード)、6ヵ月〜3年ほど(ハード)と、長期熟成とともに旨みが増す。
●ゴーダ●チェダー●ラクレット●ミモレット●エメンタール●パルミジャーノ・レッジャーノ

イタリア南部の代表的な製法
■パスタフィラータチーズ
イタリア語でパスタは「生地」、フィラータは「糸状に裂ける」。チーズの基となるカードは熱湯で練ることで繊維状の弾力のある組織になる。この原理でつくられているチーズ。
●モッツァレラ●カチョカヴァロ●プロヴォローネ●ブッラータ●スカモルツァ●さけるチーズ

表面にカビを植え付けて熟成させる
■白カビチーズ
チーズ表面に白カビを植え付け、中心に向けて熟成。熟成が進むにつれ、内部はクリーム色の柔らかな状態に。トロリと濃厚な味わいになる。製造日から3〜4週間目が食べ頃。
●カマンベール●ブリー●ヌーシャテル●ブリ・ド・モー●シャウルス●バラカ

チーズの内部から熟成させる
■ブルーチーズ
チーズの中に青カビを入れ、内側から熟成させる。青カビの熟成には酸素が必要なため、内側から外側へ酸素を求めて熟成が進む。独特の香りは青カビの脂肪分解作用によるもの。塩味が強い。
●ロックフォール●ゴルゴンゾーラ●スティルトン

表面に菌を植え付け、洗いながら熟成
■ウォッシュチーズ
チーズの表面に乳脂肪とタンパク質を分解する菌を植え付け、塩水やお酒(バーボンウイスキー、ブランデー、日本酒)などで洗いながら熟成させる。味わいはマイルドだが、表面のぬめりや香りが強いものが多く、通好み。
●タレッジオ●エポワス●マンステール●モン・ドール

ヤギの乳でつくられるチーズ
■シェーブルチーズ
作りたてから3ヵ月ほど各段階で様々な味わいが楽しめる。作りたては酸味があり、熟成が進むにつれ山羊(シェーブル)乳特有の風味とコクが出る。このチーズに様々な製法が用いられる。
●ヴァランセ●サントモール●クロタン

「日本産チーズ」というカルチャーを伝えていく

チーズ好きにはたまらないこのお店「北海道ナチュラルチーズ・コンシェルジュ チーズのこえ」を始めたのは今野徹さん。北海道産ナチュラルチーズ専門店というこだわりが気になります。そこで、今野さんにこのお店を始める経緯をうかがいました。


今野 徹(こんの・とおる)
1976年、北海道生まれ。帯広畜産大学大学院修了後に北海道庁農政部、農林水産省に勤務。2015年5月に退職し、8月には「100年続くものづくり、1000年続く地域づくりをともに考える」を旗印に、株式会社FOOD VOICEを設立。2015年11月に「北海道ナチュラルチーズ・コンシェルジュ チーズのこえ」を、2019年7月には野菜のちから(産直野菜や手作り総菜、パン、こだわり調味料を提供)をオープン。

実を言うと手間ひまかけた日本国産のおいしいチーズは見ての通り、そんなにお安くはありません。輸入チーズに比べると国産チーズは原料単価が高いそうなのです。それに加え、チーズにかかる関税が安くなって、輸入チーズがどんどん日本に入ってくるのが現状でした。
「国産のチーズをどうにかしないと、消費者の国産チーズへの興味が薄れていく。それによって日本の農業の衰退にも繋がる。何とかしたいと思い、立ち上げたのがこのお店なんです」(今野氏)

北海道から遠く離れた東京で、北海道産ナチュラルチーズ専門店を立ち上げたのにも意味があります。
「東京から北海道はやはり物理的な距離があります。東京において北海道産ナチュラルチーズの情報をちゃんと届ける・伝える場所を作ろうと思ったんです」(今野氏)

そうして、今野さんが北海道のほとんどのチーズ工房150軒を回り、セレクトし、声をかけたチーズ工房さんと出資して立ち上げたのがこのお店なのです。
「何でも揃う物産店だったらアンテナショップでいいわけです。輸入チーズが主流で国産チーズを食べてこなかった人が『これ、おいしい!』『日本のチーズでいいじゃない!』って思わせるにはやはりセレクトしなきゃいけない。それに同じ想いを持っている人たちと一緒にやりたい。まぁ、人で選んだわけではないですが、『この人がつくるチーズをお店に置きたい』という気持ちを中心に工房を回りました」(今野氏)

さかのぼると、帯広畜産大学の頃から畜産を含めての農業畑での経験がいきており、北海道庁農政部、農水省での人とのつながりも大きいそう。
「畜産行政が長いので牛乳の知識もあるし、チーズ工房にも大学時代から行っていたので、この形のお店ができるのは私しかいないと自負しています。チーズ工房さんとコミュニケーションを取れるのが我々の強みですね。こちらから商品の発注はするのですが、それよりも『いい出来具合いになったら送ってね』という感じで(笑)」(今野氏)

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出資されているチーズ工房の数は40と増えているそう。出資という形をとらなくても送ってもらうよう頼んだチーズもあるそうです。
「たまにスポットで本州のチーズも置いたりしています。合わせると工房の数は100ぐらいになりますかね。それは北海道だけ生き残ればいいというのではなくて、日本産のチーズというカルチャーを伝えていきたいからなのです。北海道だけでなく、本州のチーズ工房とも支え合いになっていると思います」(今野氏)

出店地に東京都内でも清澄白河という町を選んだのはたまたまだったそうですが、ご近所のお客さんやリピーターになって通ってくる常連さんも多いそうです。
「昔の八百屋さんや酒屋さんのように、顔を見ただけでお客さんの世帯構成や好みをわかったうえで商品を紹介する。一人一人と会話して。コミュニケーション一つにしてもラクしないようにしています。何も言わなくても『あなたが欲しいのはこれでしょ』って、そんな店を目指しています」(今野氏)

皆さんも清澄白河にある「北海道ナチュラルチーズ・コンシェルジュ チーズのこえ」を訪れたら、今野さんらお店のスタッフさんのチーズの声(チーズ情報)に耳を傾けてみてください。

この取材を終えて…

この取材で、最後まで今野さんのお話をメモを取りながら熱心に聞いていた吉田めぐみさん(過去のチーズ料理記事はコチラ)。チーズの資格取得だけじゃなく、日常的に本当にチーズが好きなんだなと感じます。そんな彼女が買ったチーズは何なのか、どう調理しておいしく食べたのかも気になったので聞いてみました。

こんなにチーズの種類があると本当に迷いました。端から全部食べてみたい (笑)。これだけ網羅されている日本のチーズのお店は唯一無二です。悩んだ挙句、店主の今野さんにもアドバイスをいただきながら購入したチーズの一部を、私・吉田めぐみ流に紹介します。

「川瀬チーズ工房」のモッツァレラは、ミルキーさとジューシーさが素晴らしかったです。シンプルにカプレーゼで食べましたが、ミルクの甘さや優しさにとても幸せを感じました。

「しあわせチーズ工房」の茂喜登牛は、私の大好きなウォッシュタイプのチーズ。これがとてもクセになります。トロトロの中身はそのままスプーンですくって味わうもよし! 少しオーブンで焼いて野菜につけていただくのもよし! いろいろな味わいを楽しみました。

「共働学舎新得農場」のグランデ・シントコはハードタイプのチーズ。ハードタイプのチーズといえば、旨味がとても強く、食べる旨味ダシのような印象です。そのままスライスして食べてもいいですね。他には明太子と長芋のグラタン(麺つゆも加えた和風グラタン)を作りました。溶けるチーズの代わりにこのチーズを小さく切って乗せて焼いたところ、和風だしとの旨味×旨味のコラボが最高&最強でした。

そして最後に、「ASUKAのチーズ工房」のストリングしおかぜ。この、さけるチーズには北海道産本ししゃもの粉末が練り込んであるとか! そして、そのチーズをししゃもからとったダシ醤油に漬け込んで作ってあるという、なんとも面白いチーズではありませんか! 確かな噛みごたえと、噛むほどにじゅわっと感じるししゃもの旨味と醤油の旨味がとてもおいしく、あっという間に一袋食べてしまうほどでした。ごちそうさまでした!

* * * * *

「多様なチーズと出会いたい!」「おいしいチーズが食べたい!」という食いしん坊な動機でやって来ましたが、今野さんのお話を聞いて、「北海道ナチュラルチーズ・コンシェルジュ チーズのこえ」に込められた日本の食卓や農業への想いがひしひしと伝わってきました。

「北海道ナチュラルチーズ・コンシェルジュ チーズのこえ」と同様に生産者の顔が見える「野菜のちから」を近くにオープンされたり、味噌づくり体験教室を開催されたりと、今野さんの信念と実行力に感銘を受けました。

日々の食事を大切にし、私たちの食を支える生産者さんに思いを馳せて買い物をする。私たち一人一人の日常の行動が豊かな食を支え、日本の農業を守ることにつながるのだと、あらためて実感しました。

今回は「アークのブログ」取材(撮影)にご協力いただき、本当にありがとうございました。

北海道ナチュラルチーズ・コンシェルジュ チーズのこえ
URL:http://food-voice.com/cheese-no-koe
営業時間:11:00〜19:00
定休日:不定休
住所:東京都江東区平野1-7-7 第1近藤ビル1階
TEL&FAX:03-5875-8023
アクセス:東京メトロ半蔵門線、都営大江戸線「清澄白河駅」A3出口より徒歩約5分

●文章協力・撮影・編集・WordPress=魚住陽向編集者小説家

アーク・コミュニケーションズ編集者・小島まき子の制作物一例

『チーズの図鑑』(KADOKAWA/メディアファクトリー)
『日本酒の図鑑』(KADOKAWA/メディアファクトリー)