今年もやって来ました、芸術の秋! アート大好き編集者・魚住です。バスに乗って東京都内のギャラリー、美術館を巡るという画期的なアートイベント[アートウィーク東京]。昨年(2021年)スタートした際には、勝手に自作した「アート散歩のしおり」を片手に全4ルートを制覇し、濃厚なレポ記事を公開しました。おかげさまでかなり好評の様子……と思ったら、ちょっと待って! 今年はバスのルートが増えて6ルートに? 公式のスマホアプリが無料リリース? いろいろ進化してる? これはもう再取材しなければ…というワケで再び行ってきました!(公開:2022年11月28日)
[アートウィーク東京:Art Week Tokyo]
会期:2022年11月3日(木・祝)〜6日(日)
時間:10:00〜18:00
会場:東京都内51軒の美術館/インスティテューションとギャラリー/AWTインフォメーションセンター(東京都港区南青山5-4-30)
主催:一般社団法人 コンテンポラリーアートプラットフォーム(JCAP)
提携:Art Basel(アートバーゼル)
◎アートウィーク東京モビールプロジェクト
主催:東京都/アートウィーク東京モビールプロジェクト実行委員会
助成:文化庁
※東京都内に広がる主要なアートスペースをつなぐAWT BUSの運行を企画・実施するプロジェクト
[アートウィーク東京]遠足のしおり
そもそも「[アートウィーク東京]って何?」という方も多いと思います。ざっくり言うと「東京都内にある美術館やギャラリー(50軒以上)を専用のバスルートで巡り、好きな時に好きな場所で乗り降りして、アートを楽しむことができる4日間のアートイベント」。それでもまだピンとこない方はまず基礎中の基礎である昨年記事から要チェックです。写真満載、アート満載ですよ。
ところがです。今年の記者発表会に行ってビックリ! 昨年、全ルートを制覇し、あんなに濃い記事を作ったにも関わらず、「昨年のアートウィーク東京はプレ(試験的)だった!」と知ったのです(ちょっとショック)。
▲[アートウィーク東京]アンバサダーの鈴木京香さん美しかった〜!(画像は左右にスライドできます)
しかし、今年は昨年よりパワーアップしています。どこが進化しているかというと下のマップをご覧ください。
これは今年(2022年)の[アートウィーク東京]のバスルートですが、4つから6つにルート増設されました。これはパワーアップしすぎです。このバスは「AWT BUS」といい、10時〜18時まで約15分間隔で巡回しています。
●[アートウィーク東京]参加の仕方
①公式アプリ「AWT PASS」をダウンロード(無料)
今年、[アートウィーク東京]がパワーアップしたもう一つの要素が公式アプリ(App StoreかGoogle PlayからDL可能)。
②事前に巡回ルートやギャラリーをチェック
公式アプリにて展覧会情報やイベント情報も見られるので、事前に行きたい美術館やギャラリー、観たいアート作家の情報をチェックして(情報を見るのは公式サイトでも可)、自分なりの巡り方を考えておきましょう。「AWT PASS」はAWT参加施設、バスルート、バス停の表示とカスタマイズ、AWT BUSのリアルタイム位置情報の確認もできます。
③「AWT PASS」を提示してAWT BUSに乗車(無料)
昨年は「事前にバス乗車チケットを購入」でしたが、今年はバスへの乗車料は無料。バス停で係の人に「AWT PASS」を提示するとAWT BUSに乗車できます。そして、AWT各バス停のどこから乗って、どこで降りても可。約15分間隔でやって来る巡回バスが乗り放題なのです。
④AWT参加美術館の入場料割引
ギャラリー入場料は無料ですが、美術館入場料は有料です。でも、公式アプリ「AWT PASS」の画面を美術館入場窓口で見せれば割引特典があるのです。割引された入場料がいくらかは美術館によって違います。それも公式アプリで確認できます。
また、オリジナルトートバッグ(菊地敦己デザイン)がもらえるスタンプラリーに参加できるので、公式アプリの機能をチェック。[アートウィーク東京]はその年によってのイベントやプログラムも多数開催されているので、毎年チェックが事前に必要なのです。
そして、[アートウィーク東京]2022年最大の変化は、世界最高峰のアートフェア「アートバーゼル」と提携(昨年は協力)したこと! これってアート好きからしたら世界的にすごいことなのです。
[アートバーゼル]とは、世界最高の規模と質を誇る近現代美術のアートフェア。毎年、拠点となるスイスのバーゼルをはじめ、香港、マイアミビーチで開かれるアートフェアには世界各地から大勢のアートファンや専門家が集まる。2022年10月にはパリで開催。
※『一流のアートに出会える世界最大級のアートフェア「アートバーゼル」とは?』
アート散歩のススメ
大きな進化を遂げて本格的に始動した[アートウィーク東京]。これはワクワクが止まりませんが、ちょっと落ち着いて考えてみましょう。昨年は全ルート制覇しましたが、ルートが6つになり、開催期間は4日間。これは体力的にも大変すぎる!
というワケで、2022年は「ゆっくりと気になったアートスペースを巡る」がテーマ。ゆるゆるアート散歩です。
11月3日、アート散歩のスタートは大好きな谷中からにしました。小春日和の散歩には昭和な空気が流れている東京の下町がピッタリです。Eルートからのスタートです。
[Art Week Tokyo 2022]Eルート
E1:東京国立近代美術館/E2:ミヅマアートギャラリー/E3:ウェイティングルーム、マキファインアーツ/E4:タリオンギャラリー/E5:フイギユア、ミサコ&ローゼン/E6:XYZコレクティブ/E7:カヨコユウキ/E8:スカイザバスハウス
昨年も訪れた「スカイザバスハウス」。元銭湯なので外観はもちろん、下駄箱もそのまま。ここでの展覧会は「三輪美津子 Full House」(11/1〜12/2)。昨年もそうでしたが銭湯だった天井が高い造りなので大きな作品展示が活きるのです。ここでの迫力あるアートに圧倒されてきました。何だか気持ちの良い圧倒です。すがすがしい。
▲画像は左右にスライドできます
谷中は昨年の[アートウィーク東京]以来なので1年ぶり。新しいお店やうっかり見逃していたお店など、店先を見るだけで楽しいのです。もちろん、ずっと谷中にあるお馴染みのお店も。今日の目的はアートなので、外観を撮影するだけにとどめます。
▲「発酵と醸造の専門店 市松屋」は深川ワイナリーの直営店/「八代目 傳左衛門めし屋」/「カバヤ珈琲」/「昔せんべい 大黒屋」ついつい買っちゃうお店構え(画像は左右にスライドできます)
11月4日はCルートから。清澄白河スタートです。
ブルーボトルコーヒーが出店して以降、かなりオシャレなお店が増えた清澄白河。「アークのブログ」でも都市型ワイナリー「清澄白河フジマル醸造所」や「北海道ナチュラルチーズ・コンシェルジュ チーズのこえ」といった専門店を取材したご縁もあって大好きなエリアなのです。
[Art Week Tokyo 2022]Cルート
C1:東京都現代美術館/C2:ハギワラプロジェクツ/C3:Cルート⇄Dルート乗り換え地点(日本橋交差点付近)/C4:三井住友銀行東館/C5:東京国立近代美術館/C6:タグチファインアート/C7:無人島プロダクション/C8:カナカワニシギャラリー、サトコオオエコンテンポラリー
▲「二人展:塩原有佳、石井佑果」(サトコオオエコンテンポラリー)※画像は左右にスライドできます
まずはギャラリー「サトコオオエコンテンポラリー」へ。展覧会は「二人展:塩原有佳、石井佑果」(10/15〜11/6)。木場エリアは以前、材木を置く倉庫だったというスペースが多く、このシンプルなギャラリーも天井が高く、大きな作品がとても映えます。ただ大きいだけでなく、よく観察しないと見落としてしまいそうな角っこやキャンバスの厚みに細かな工夫と遊び心が施されていて、クスッとしてしまう可愛らしさ。それに写真には写すのが難しい「白の中に白で描くアート」に思わず角度を付けて見たり、目をこらしてしまいました。おもしろい!
▲「二人展:塩原有佳、石井佑果」(サトコオオエコンテンポラリー)※画像は左右にスライドできます
[Art Week Tokyo 2022]Dルート
D1:アーティゾン美術館/D2:ギャラリー小柳/D3:銀座メゾンエルメス フォーラム/D4:資生堂ギャラリー、東京画廊+BTAP/D5:PGI/D6:タケニナガワ/D7:国立新美術館、日動コンテンポラリーアート
この日はなんとアーティゾン美術館が休館日。外観だけ撮影してから銀座へ。D3とD4を廻ろうかと考えていましたが、D3に行くとかなりのハイブランドぶりに庶民の私は入口の段階で気おくれして入るのをやめてしまいましたとさ(笑)。
でも、「資生堂ギャラリー」ならまだ大丈夫。展覧会は「第八次椿会 ツバキカイ8 このあたらしい世界」(8/27〜12/18)。グループ展のようです。受付で「ロープが張ってあって、入ってはいけなさそうですが、ロープも展示物です。またいで大丈夫です」と一人一人に声をかけてくれて思わず、ふふふ。来場者が展示物に座ってるのさえ絵になっています。
▲画像は左右にスライドできます
11月5日は目黒からスタート。実は朝から腰痛がひどくて、休もうかどうしようか悩みましたが、行く所を2軒に絞って濃いめに観て廻ることに。
[Art Week Tokyo 2022]Aルート
A1:東京都庭園美術館/A2:コウサクカネチカ、タクロウソメヤコンテンポラリーアート/A3:ミサシンギャラリー/A4:カイカイキキギャラリー/A5:オオタファインアーツ、コタロウヌカガ、タカ・イシイギャラリー、タロウナス、ペロタン東京、ユタカキクタケギャラリー、ユミコチバアソシエイツ/A6:森美術館/A7:ギャラリーサイド2
A1の「東京都庭園美術館」は朝香宮(あさかのみや)邸として1933年(昭和8年)に建てられた建物。部屋の内装がフランスのアールデコ様式で2015年に重要文化財に指定されたり、庭園もとても美しくて見所満載ですが、私が一番興味を持ったのが旅行好きだった朝香宮夫妻(鳩彦王、允子妃)のパリ旅行や鉄道関連のコレクションの数々。かなりの鉄道オタクだと思う。館内は1室除いてほとんど撮影禁止でした。
▲画像は左右にスライドできます
[Art Week Tokyo 2022]Bルート
B1:東京都写真美術館/B2:リーサヤ/B3:ポエティック・スケープ/B4:インフォメーションセンター/AWT BAR/B5:ファーガス・マカフリー 東京/B6:マホクボタギャラリー/B7:スノーコンテンポラリー/B8:MEM
▲「見るは触れる 日本の新進作家vol.19」※画像は左右にスライドできます
B1の「東京都写真美術館」の展示は、昨年の展示がとても良かったので、今年もとても楽しみにしていたのです。今年は館内で二つの展示会を鑑賞。まずは「見るは触れる 日本の新進作家vol.19」(9/2〜12/11)。参加者は、水木塁、澤田華、多和田有希、永田康祐、岩井優。「写真そのものに加え、展示するスペースまで全てがアートなんだな」と興味深く鑑賞。
▲「見るは触れる 日本の新進作家vol.19」※画像は左右にスライドできます
「東京都写真美術館」のもう一つの展示会はB1Fにて開催。「写真新世紀30年の軌跡 写真ができること、写真でできたこと」(10/16〜11/13)は一般投票で選ばれた歴代受賞者10名(青山裕企、新垣尚香、大森克己、奥山由之、澤田知子、高島空太、中村ハルコ、蜷川実花、長谷波ロビン、浜中悠樹)による受賞作品展。斬新なテーマからハッとする写真まで、腰痛の痛みも忘れ、見入ってしまいましたよ。無理して来て良かった〜。
▲「写真新世紀30年の軌跡 写真ができること、写真でできたこと」※画像は左右にスライドできます
しかし…ついに11月6日は腰痛が悪化してダウンしてしまいました。というわけでFルートは行けずじまいです。
[Art Week Tokyo 2022]Fルート
F1:東京オペラシティ アートギャラリー/F2:ケンナカハシ/F3:ルイナール/F4:インフォメーションセンター/AWT BAR/F5:ナンヅカアンダーグラウンド/F6:ブラム&ポー/F7:ギャラリー38
そして、今年はギャラリーもほとんど行けてません。体調不良とはいえ、とても残念です。でも、たくさん回ればいいというものでもないですよね。2022年の[アートウィーク東京]では、何気なく入ったギャラリーでとても素敵なアートに出会えました。数は少ないけれど、1つ1つが濃密なアート鑑賞ができて今年も楽しかったです。
海外のアーティストもいいですが、もっともっと日本人の若手アーティストのアートにも触れたいと思います。また来年、「アートウィーク東京2023」で新しい感性に出会いたいですね。