オリジナル撮影台を製作してきました! in 原田左官工業所

こんにちは。フォトグラファーの清水亮一です。2021年7月頃は猛暑でした。そんな時期に「ものづくり」がしたくなり、左官体験をしてきました。左官といえば、以前にアークのブログで紹介した原田左官工業所です。今回は左官職人さんの指導のもと、壁塗りだけでなく、自分が物撮りなどに使う撮影台の製作にもチャレンジしてみました。左官体験中は手が離せないので、今回は左官職人さんの作業を1日ずっと見ていても飽きないという編集者の魚住さんが撮影した素材も混じっています。(公開:2021年10月29日)

密を避け、マスク着用、手指の消毒、換気など、新型コロナウイルス感染症対策を万全にした状態で体験取材・撮影を行っております。

左官の基本!壁塗り体験は難しい

原田左官工業所は、自ら「国内唯一の提案型左官」と謳うほど左官業界の中でも革新的な企業です。社長の原田宗亮さんは、職人さんの働き方改革や新人育成など、次々に環境を改革し、改善してきた人物。新規の顧客開拓のために常に新しいことを考え、左官屋さんとしてはめずらしい企画をたくさん提案してきました。以前にアークのブログで紹介したSAKAN LIBRARYやこの「左官体験」もその企画の一部です。

今回、実際に壁塗り体験ができると知り、フリー編集者の魚住さんとともに東京の西日暮里にある原田左官工業所におじゃましました。ちなみに、魚住さんはInstagramで原田左官工業所をフォローしていて、毎日アップされる美しい壁や床などを見るのが大好きな変わった人です(笑)。

坂本莉希弥師匠の腕には本当に惚れ惚れします。見よ!この滑らかで美しい塗りを!

今回、先生をしてくれる左官職人さんは坂本莉希弥(さかもと・りきや)さん。名前の字面だけ見るとまるでアイドルみたいですが、左官歴6年の立派な職人さんです。我々は「師匠」と呼ばせていただきました。

▲写真左から、吉井さん、落合さん。古民家のリフォームできたかな?

この日、たまたま一緒に体験することになったのは、「栃本ふるさとプロジェクト」で活動をしている吉井久美子さんと、その友人である一級建築士の落合淑さんのお二人。吉井さんは「栃本ふるさとプロジェクト」の一環として古民家を自力でリフォームするために左官を学ぼうとこの体験に参加したそうです。

「栃本ふるさとプロジェクト」 とは、埼玉県の奥秩父の山々に囲まれた山村「栃本」とともに生き、その地の自然・歴史・文化・伝統行事・ひとびとの魅力を発信するチームです。
URL:https://www.tochifusa.com/
Instagram:https://www.instagram.com/tochimotohurusatopj/

やはり初体験というのはなかなか思うように道具を使いこなせないものです。塗ったはずの土がボロボロと落ちてくる。手首を上手く使い、手元から壁にコテを当てる。徐々にコツをつかみ、塗る回数を重ねていくと、ほんの少しだけ形になり始めていきます。

漆喰はおもしろい!

さて、次は板を横に置いた状態で塗っていく作業を体験します。ここでは、実際に撮影で使用する背景用のボード「撮影台」を製作します。

最初は、背景として使えるシンプルな撮影台を作ろうと考えていました。ベタッと真っ白じゃなく、コテの塗りあとが少しあるぐらいなものをイメージしていたのです。

今回、初めて塗る「漆喰」(しっくい)は、自分が思っていたよりも粘り気がありました。もうちょっと滑らかにすんなり塗れると思っていたのに粘り気でうまく塗れない。サラッとした質感じゃなくで、粘着力があるので塗っていても引っ張られる感覚です。均一に塗るのは本当に難しく、ムラが出てしまうのです。

なので、途中で方針を変えました。「質感が滑らかに見えすぎるかも」と思い、砂を混ぜてみたのです。それから、ギザギザの道具を、塗った漆喰の上から撫でるように引いて、波立たせてみちゃいました(笑)。

DIYで気軽に「左官」を始めるのは、ちょっとハードルは高いかもしれない。でも、自分の作品や自分が使う物として漆喰を塗るのは、できないことはありません。もちろん、素人には「さぁ!左官やってみるぞ!」と気合い入れないとできないことだし、実際にはテクニックは難しいものです。だからこそ、「やっぱりプロはすごいな」と思います。

当然ではありますが、職人さんには遠く足下にも及びません。しかし、どんなジャンルでも「ものをつくる」時間はとても尊く、自分に刺激を与えてくれるのです。今回は、おもしろい撮影台ができたかな、と思います。ちょっと波波部分をやりすぎちゃったかもしれないけど(笑)。

完成した撮影台を使ってこんな撮影をしてみました。いろいろ撮ってみましたが、その中から今回は6点を公開します。

今回はノリで波波部分を作り、どうなるかと思いましたが、「枯山水」の雰囲気が見えたので、「これは和風のテイストで、落ち着いたイメージでいこう!」と考えました。アーク社内で呼びかけて南部鉄器の急須を借りました。

ただ、あまりに渋すぎて華がないと目を惹かない。「撮影台」の印象も強めなので「お茶」をテーマにして和菓子をメインの被写体としました。「和菓子はやわらかいもの」なので、できるだけやわらかい光にし、波の立体感がなくならないように注意して撮影したのがポイントです。

実は物としての名前は「撮影台」なんですが「台」という言い方ではなく、これは「背景」であり、「写真の印象の方向性を決めるベースとなるもの」なのです。
「背景よりも被写体が目立つように」というのが大前提ではありますが、写真全体の印象、色で感じる印象、温度感など目から入る情報を左右するのが撮影背景。イメージの大枠でもあります。絵画に喩えると、キャンバス(背景というベース)があって、それにどんな絵を描こう(被写体を撮ろう)という感じですね。

次はこの撮影台で「何を撮ろうか」と創造する瞬間を思うととても楽しくワクワクしてきます。原田左官工業所の皆さん、ご協力ありがとうございました。

■原田左官工業所
住所:東京都文京区千駄木4-21-1 ハラダビル
アクセス:JR 西日暮里駅から徒歩約9分

 URL:https://www.haradasakan.co.jp/
 Facebook:https://www.facebook.com/haradasakan/
 Instagram:https://www.instagram.com/haradasakantokyo/

オルタナティブ
原田左官工業所の仕事

(原田宗亮・著/幻冬舎/2021年11月1日発売)


今、新進気鋭の建築家やデザイナーたちの注目を集める原田左官工業所、初の作品集です。新しい素材や自由な発想、熟練の技術を武器に生み出された左官の数々を写真と制作エピソードで綴ります。魅力的な作品を多数掲載しています。常識にとらわれない柔軟な発想が生み出す左官の奥深さを感じてください。
Amazon
※この本の制作にアークは携わっておりません。

●撮影= 清水亮一(アーク・コミュニケーションズ
●文章協力・撮影(iPhone)・編集・WordPress=魚住陽向編集者・小説家