世界中で親しまれている日本のマンガやアニメ。遠くロシアにも「マンガ家になりたい!」と思う若者がいて、マンガの描き方を教えるオンライン講座があるらしいのです。今回は講師をつとめるマンガ家・高木裕里先生に講座のことやロシアのマンガ事情についても聞いてみました。(公開:2016年5月31日/更新:2021年2月12日)
高木裕里(たかぎ ゆり)
マンガ家。
デビュー作は「I NEED YOU」(週刊少女フレンド増刊/講談社)。デビュー6年後に一旦休筆したが、「HQロマンス大賞」(宙出版) を受賞して再デビュー。代表作に「孤独の群衆」「サイレントローズ」「孤独の群衆」(茜新社)などがある。現在は「怖い童話」(ぶんか社)や「月刊ハーレクイン」(ハーレクイン社)などで執筆中。
また、ロシアの若者に向けてオンライン講座の講師だけでなく、東京デザイン専門学校マンガ科講師もつとめる。過去には中国の学校の客員教授なども経験。
★高木裕里先生作品(Amazon検索)
★最新作は「別冊ハーレクイン Vol.60」(6月30日発売)に掲載されます。
モスクワの若者に日本のマンガを教えるオンライン講座
ロシア連邦の首都モスクワにある「ジャパンハウス」。ここは、カルチャーなどを通して日本とロシアを結ぶビジネスセンター。レンタルオフィス・会議室やイベントホールの他に「日本文化クラス」と称したカルチャースクールもあります。その中に「マンガ講習会」もあり、高木裕里先生はモスクワにいる生徒たちに向けてマンガの描き方を教えているのです。
「このマンガ講座のオンライン授業が始まって4年目になります。ロシアでマンガというと新聞の風刺画のようなものしかなく、マンガという文化自体がありませんでした。だから、ロシアのマンガ文化は始まったばかり。マンガ創世記と言えると思います」(高木裕里先生)
高木先生が講師を務めるマンガ講座には「初級コース」「中級コース」があり、どちらも毎年9月にスタートします。期間は9月〜12月まで、月に1回で各3時間のオンライン授業です。つまり、3時間×4回。そして、4月に高木先生がモスクワに行き、直接指導して行う最終授業は2時間×2回。計18時間の授業が受けられるそうです。
「例えば、初級コースは5ページ(表紙+4ページ)のマンガ作品を完成することを目標にしてカリキュラムを組んでいます。道具の使い方、絵の描き方など技術面、ストーリーの作り方や構成などのノウハウを教えて、12月までネーム(ラフ、絵コンテ)という段階まで私がチェックします。ネームを見て、OKを出した生徒は私が4月にモスクワに行くまでに原稿を完成させておく。今度は現地で直接、原稿を添削する。これが半年間の流れですね」(高木先生)
▲テレビ会議室を使ったオンライン授業(写真参照)では、モスクワの会場に6つぐらいのモニターを設置。東京から高木先生が行う授業はリアルタイムでモスクワの生徒さんが見られて、現地のスタッフが通訳して生徒に伝えるのです。
「時差が6時間あるので、東京では夕方スタートの授業は、モスクワでは朝10時スタートなんです。(日本時間の)16時〜19時で初級の授業をし、1時間休憩を挟んで、20時〜23時で中級の授業を行います。あんまり朝早すぎると寒くて生徒が来ないし、今より少しでも遅く始めると今度は私が終電に間に合わなくなる。みんな熱心で授業の最後に質問してくれるんですが、質問攻めがなかなか終わらなくて『全部答えてたら私が帰れなくなっちゃうんだよ!(笑)』ってことも」(高木先生)
日本のマンガ雑誌や単行本は基本的に右開き。欧米では逆に左開きです。その左開きの製本に合わせるために、日本のマンガの原稿を逆版(左右反転)にします。そうすると登場人物が全員左利きになったり、絵のデッサンに狂いが生じることもあります。
「ロシアの場合も欧米と同様に左開きですが、私の指導は『日本式のマンガを教える』ということですべて日本式。右開きで教えてますが、どうしても逆に描いてくる生徒もいますね(笑)。」(高木先生)
生徒が完成させたマンガは、日本とロシアの架け橋ともいえる文化交流イベント「HINODE」にて展示されます。
「この講座に来て初めてペンを持つ子も多いので当然なのですが、生徒の技術レベル的にはまだまだ拙いですね。でも、みんなのマンガに対する熱意はすごく感じます。国が違っていても好きなものが同じなんだと思うと感動しますね。ロシアでマンガを通じて日本に興味持ってくれたり好きになってくれたりして、『マンガ』のチカラってすごいなぁって思いますよ」(高木先生)
▲1クラス20〜30人ぐらい。年齢層は10代が中心で、16歳から18歳が一番多い。最年少は10歳ぐらいで、上になると20代後半ぐらい。男女比は女性8割、男性2割のようです。
NEXT:一番人気は『NARUTO』…ロシアのマンガ・文化事情