イラストレーター・飯塚めりさんに聞く喫茶店観察とZINEづくりの楽しさ!

こんにちはフリー編集者兼ライターの魚住です。2016年1月「アークのブログ」にて「第二十一回文学フリマ東京」レポートをお届けしました。その取材時に見つけたのが「別冊Café Monster」という喫茶店絵日記のZINE。それを製作しているイラストレーターの女性にも惹きつけられ、思い切って取材を申し込んでみたのです。そういうわけで今回は魅力的なイラストレーターさんに喫茶店絵日記の冊子づくりという興味深い活動のお話を聞きました。(公開:2016年8月8日/更新:2022年4月26日)

【ZINE】(ジン)とは、自作の絵、文章、写真などを少量印刷(プリンター、コピー機など)&製本した小冊子のこと。

飯塚めり
★イラストレーター。日本イラストレーション協会JILLA会員。出版社での編集、イラスト制作経験あり。雑誌・書籍・WEBなどをはじめとし、イラストエッセイ、挿絵、カット、説明図、解説マンガ、似顔絵、教材や装丁などに使う多種多様なイラストを手がける。『ホリイのずんずん調査 かつて誰も調べなかった100の謎』(文藝春秋)、『東京ディズニーリゾート便利帖』シリーズ(新潮社)、「KADOKAWAの年賀状ムック」シリーズ、『すぐわかる』シリーズ(KADOKAWA)など、他にも様々な媒体のイラストを担当し、幅広く活躍中。
★喫茶店観察家。公式サイト Twitter instagram
※販売Shop情報はこのページの後半に!

喫茶店めぐり絵日記をまとめた「別冊Café Monster」

2015年11月、「第二十一回文学フリマ東京」会場で、とても印象に残っていた「別冊Café Monster」。購入してページをめくると、喫茶店をめぐり、その場で描かれた絵日記(イラストエッセイ)がとてもかわいい。そのうえ、コーヒーやケーキの数々がおいしそう! 何よりも居心地の良さそうなカフェの様子が感じられ、自分でも小冊子片手にカフェめぐりしたくなりました。絵日記以外にもアンケート企画したり、街めぐり特集やイベントレポートしたり、編集的なセンスもバツグンです。

このステキな小冊子を製作しているのがイラストレーターの飯塚めりさんでした。彼女のもうひとつの肩書きは「喫茶店観察家」です。喫茶店に行くとほぼ必ずイラストを描いているめりさん。

「SNSに『今カフェに居ます』的な写真をアップする人は多いですよね。それはそれでいいと思うんですが私の場合むしろ、ひっそりと居たいクチなので(笑)。でも、喫茶店に居てワクワクしていることをログとして残したい欲求はあるんです。『喫茶店が好きな気持ちを絵を描いて残す』ということを大事にしたいと思ってます」(飯塚めりさん)

喫茶店にてイラストを描く時「食べる前、冷めないうちに急いで描く」というこだわりがあるそう。ライブ感のあるイラストはおいしそうなところが伝わってきます

「イラストを描いたらSNSにアップするということを習慣にしようと。三日坊主じゃないけど、徐々にやらなくなるかもしれないワケです。自分が描いたものを『ひとが見ようが見まいがやってやるぞ!そして続けるぞ』と。いや、もちろん誰かが見てくれたらワクワクしますけど(笑)。義務にならないように、今までやってきたことを見失わないよう楽しんでやってます」

「別冊Café Monster」は展示会やイベントなどに訪れためりさんの作品ファンや喫茶店・カフェ好きの方々が購入していきます。そしてイベント会場で、またSNSを通じて感想をもらえることも。地方から上京した時に小冊子片手に何軒もはしごするエネルギッシュな読者もいて、とても嬉しいそうです。

「『別冊Café Monster』で紹介したお店に読者の方が実際に行って『あのお店、よかったです!』と言ってもらえることが何より嬉しい。また別の集まりで、新しくお店を教えてもらったりするんですが、行ってなかったお店を知ることもあります。私の冊子を見て「ここが好き」と言ってくれる人は感性が近い可能性があって、好みのお店の雰囲気も似てると思うんで私から聞いていますね」

めりさんは「読み応えのあるもの、1回読んでもういいやとならない、『永久保存版』として手元に置いておきたくなるものを創る」ということを心掛けているそうです。
「自分が感じてることや楽しんでいることがいろんな人に伝わるといいなと思っています。フレンドリーでありたい。お店との関係も『一時の空気』のようにお店のジャマしないように、その中に溶け込んで楽しみたい。そういう感じで楽しんでいる情報の発信です、と。カフェってみんなの場所であり、みんなの共有財産。だから、それぞれにカフェを愛してほしいし、どのお店も長く続いていってほしいなと思っています。私の活動は、陰ながらの応援といった気持ちもあります」

喫茶店、カフェめぐりでは10日に1軒ぐらいの割合で新規開拓しているとのこと。多い時は1週間すべて新規開拓の期間になることもあるそうです。
「喫茶店はたくさん巡っていますが、すごい軒数を巡っていたり、超くわしい人にはかなわないし、研究家とか専門家とも違うなと思っています。どちらかというと喫茶店の雰囲気を味わい、『今日こんな変なことがあった』とか、いろんな出来事、ふと聞こえてきた会話にワクワクしたいんです。私はそういうところに特化して楽しんでいるので『観察家』っていう呼び方が正しいかな(笑)。語感もいいですし。この肩書きはそう考えて付けました」

めりさんのお祖父様が喫茶店のマスターだったということもあり、めりさんが喫茶店を関心を持ったり、好きになったのは物心つくかつかないかの頃からというから筋金入り。お祖父様が創業された喫茶店「すずや」は現在も北海道室蘭市にあります。伯父さんが2代目で、今は3代目のいとこの方がやっているということです。

すずや
住所:北海道室蘭市中央町1-4-7
TEL:0143-23-4470
営業時間:月〜土7:30〜18:00/日・祝7:30〜17:00(定休日:なし)
創業は1950年(昭和25年)というだけあり昭和レトロな雰囲気の喫茶店。プリンアラモードやチョコレートパフェなどのデザートだけでなく、手作り特製あんを使ったぜんざいやクリームあんみつのファンも多いのは「甘味処」でもあるから。ピラフセットやドライカレーセットも懐かしいメニュー。店内はめりさんが子どもの頃から変わってないということです。

「別冊Café Monster」よりぬきカフェ紹介!

かわいいイラストによる喫茶店絵日記でステキなカフェを知ることができる「別冊Café Monster」。2013年7月にvol.01を発行し、2016年8月現在、vol.07まで発行されています(春と秋の年2回発行ペース)。その中身をちょっとのぞかせてもらい、その中からオススメのカフェをピックアップ紹介します。

■吉祥寺「近江屋」(map):なんといってもロケーションがごちそう。大きな交差点の角地に立地し(吉祥寺パルコ1&2階)、大きな窓から往来を眺められ、リラックスできます。大胆なアイスクリームの量に驚くフロートメニューたちもオススメ。

■吉祥寺「武蔵野珈琲店」(map):薄暗く静かでシックな雰囲気と、窓際から差し込むやわらかな光との絶妙なコントラストが居心地のよいお店。珈琲も紅茶もケーキも美味。

■渋谷「コーヒーハウス ニシヤ」(map):今ドキのおしゃれさと古きよき喫茶店らしさとが融合しているコーヒースタンド。夜はバーになるので店員さんもバーテンさん的佇まい。ダンディな雰囲気がたまらないお店。

■下北沢「ラ・パレット」(map):紅茶専門店。笑顔が素敵な店員さんたちに癒される。あたたかなムードがあふれ、紅茶メニューはもちろんのこと、手づくりのケーキ、スコーン、サンドイッチ、デリなど、どれも美味しい。心安らぐ要素がたくさん。

■神田「乙コーヒー」(map):神田明神の参道にある、古い建物をリノベーションしたカフェ。北欧的なかわいらしさ。ひとつひとつの席の間隔がゆったりしているので、小さなお店ですがとてものんびりとした気持ちになれます。

■銀座「和蘭豆」(map)※銀座店以外にも数店舗あり:レトロでヨーロッパのカフェのような風情が素敵な喫茶店。フロートアイスド(コーヒーフロート)やコーヒーゼリーなど見目麗しい大人向けデザートが充実。

■虎ノ門「草枕」(map):まるで茶室のような、ストイックな雰囲気が魅力の喫茶店。とても静かですが、不思議と緊張することもなく、珈琲や甘いものを堪能できます。カウンター席にびっしりと並んだ文庫本たちが素敵。

【販売ショップデータ】
販売ショップリスト→ https://www.merizucca.com/works
アリスブックス
架空ストア
COMIC ZIN
模索舎
メロンブックス
●タコシェ(東京都中野区中野5-52-15 中野ブロードウェイ3F)
●Readin’ Writen’(東京都台東区寿2-4-7)
●NeNoi(東京都新宿区西早稲田2-4-26 西早稲田マンション103)
●乃帆書房(秋田県秋田市大町2-4-23)

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静かな語り口ながら、喫茶店への熱い思いが伝わる飯塚めりさん。イラストレーターとしても喫茶店観察家としても、これからますますのご活躍を期待しています!

今回、飯塚めりさんには「別冊Café Monster」の一部ご掲載をお許しいただいたり、記事制作のアイデア、カフェの基本的な情報をアドバイスいただくなど、かなりご協力いただきました。めりさん! ありがとうございました。
また取材にご協力いただいた「カフェ トロワバグ」さんにも大変お世話になり、ありがとうございました。

カフェ トロワバグ
本の街・神保町の交差点(靖国通りと白山通りが交差)にほど近いビルの地下1階にある老舗の喫茶店。本好きな人はもちろん、喫茶店通やコーヒー好きにも有名な名店です。オーナーは三輪徳子(みわのりこ)さん。初代オーナー、店長であるご両親から受け継がれた2代目です。「トロワバグ」は、フランス語で「三つの輪」。店名の由来はお名前からきていたのですね。コーヒーはもちろんのこと、名物の「グラタントースト」、「フォカッチャプレート」、「ポークリブサンド」、ケーキ類など、おいしいメニューは1回では食べきれないので何度も通ってみてくださいね。

営業時間:月10:00〜20:00(L.O.19:30)/火〜金10:00〜21:00(L.O.20:30)/土・祝日12:00〜19:00(L.O.18:30)/日曜定休
URL:https://troisbagues.com
アクセス:都営地下鉄、東京メトロ神保町駅A5出口より徒歩約1分

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●文= 魚住陽向フリー編集者、小説家)
●撮影・編集=大山勇一