[公開:2026年10月14日]

はじめに
パンフレットの数字をひとつだけ直したい。会社案内の役員紹介を、人事異動に合わせて差し替えたい。
そのたびに制作会社へ連絡し、見積もりを取り、修正版が届くのを待つ。直したいのはほんの数文字なのに、やり取りだけで何日もかかってしまいます。
「次からは自分たちで直せる形で納品してほしい」と考えたとき、候補になるのがWord、PowerPoint、Canvaといった、社内でも扱えるツールです。ただ、どの形式にも得意なことと苦手なことがあり、修正しやすさを優先すると、仕上がりの精度が下がる場合もあります。
この記事では、編集プロダクションの視点から、制作物を自社で修正したいときの納品形式の選び方と、形式を決める前に確認しておきたいことを解説します。
「納品後に自分たちで直したい」という要望が広がっている
制作物を外部に依頼する企業のあいだで、納品後のデータを社内で修正したいという要望が増えています。
背景にあるのは、文言や数字を少し直すたびに、制作会社とやり取りしなければならない手間です。
こうした手間が生まれるのは、制作会社が使うソフトと、社内で使えるソフトが違うためです。
プロ用ツールのデータは、社内では直せない
冊子やパンフレットを制作会社に依頼すると、多くの場合、データはInDesignやIllustratorといったプロ用のソフトで作られます。文字組みやレイアウトを細かく調整でき、印刷にも対応できる反面、ソフトを持っていない社内のメンバーには手が出せません。
ホワイトペーパーから報告書まで
「自分たちで更新したい」という声は、ホワイトペーパーや営業資料に限らず、統合報告書のような報告書類でも多く聞かれます。印刷会社のなかには、Wordで納品できる制作の仕組みを整えようとしているところもあります。
社内で日常的にPowerPointやCanvaを使っている企業なら、外注する制作物もそれぞれの形式で受け取りたいと考えるのは自然な流れです。
納品形式ごとの特徴
自社で修正することを考えたとき、主な納品形式には次のような違いがあります。

| 形式 | 社内での修正 | 仕上がりの精度 | 向いている資料 |
|---|---|---|---|
| InDesign・Illustrator | 難しい | 高い | 会社案内、統合報告書など 企業の顔となる印刷物 |
| Word | しやすい | 環境によって崩れやすい | 文章が中心の資料 |
| PowerPoint | しやすい | 環境によってずれが出る | 営業資料、説明資料 |
| Canva | しやすい | 中程度(細かな文字組みは苦手) | ホワイトペーパー、チラシ、Web用の資料 |
InDesign・Illustrator:仕上がりを最優先したい資料に
細かな文字詰めや、写真・図版の精密な配置ができ、印刷物の品質を最も確実に保てる形式です。会社案内や統合報告書など、企業の顔となる資料には今も欠かせません。
Word:誰でも開けるが、レイアウトは崩れやすい
社内のほぼ全員が使い慣れているのが、Wordのいちばんの利点です。ただ、バージョンや環境が変わると、改行の位置がずれて図版が次のページに押し出されたり、表の幅が変わったりすることがあります。文章中心の資料には向いていますが、写真や図版を多く配置したデザイン性の高い資料を、崩れない状態で保つのは簡単ではありません。
PowerPoint:扱いやすいが、環境によるずれに注意
PowerPointは、営業資料や説明資料で使い慣れている企業が多く、図版の差し替えやページの追加もしやすい形式です。一方で、開くパソコンにデザインで使った書体が入っていないと別の書体に置き換わり、行数が増えて文字が枠からはみ出すこともあります。
PowerPointで納品を受ける場合は、編集用のネイティブデータと、本来の見た目を記録したPDFの両方を受け取っておくと安心です。PDFで意図した仕上がりを確かめながら、修正はネイティブデータで行えます。
Canva:プロ用ツールと社内ツールの中間
ブラウザ上で動くので専用ソフトが要らず、複数人で同じデータを編集することもできます。フォントメーカーの書体を含め、選べる書体が多いのも特徴で、WordやPowerPointに比べて見栄えを整えやすいツールです。
その一方で、日本語の細かな文字組みはプロ用ツールほどは自由にできません。開くブラウザによって見た目が変わるなど、Canvaならではのクセもあります。こうした注意点や商用利用のルールは、事例紹介「Canvaでホワイトペーパーを制作した事例を紹介」で詳しく解説しています。
修正しやすさと仕上がりの精度は、両立しにくい
見た目を細かく作り込んだ部分ほど、文言を変えるときの手間は増えます。
たとえば、表紙のタイトルをロゴのように見せるため、文字を1字ずつ分解して配置すれば、見た目は美しく整います。しかしそのデータでは、あとで文言を変えるときに1字ずつ打ち替えることになります。見出しの字間を細かく詰めた部分も、文言を変えればやり直しです。

デザインの知識がない人が触る前提なら、見た目を作り込むほど、修正のたびに崩れるおそれが大きくなります。納品されたときは満足でも、直そうとしたら崩れてしまう。これでは、自社で修正できる形式を選んだ意味がありません。
修正を前提にするなら、デザインのこだわりをどこまで入れ、どこから修正のしやすさを優先するかを、データを作る段階で決めておく必要があります。同じ形式でも、データの組み立て方しだいで、修正のしやすさは大きく変わります。
納品形式を決める前に確認しておきたいこと
制作会社に「自社で直せる形式で」と伝える前に、社内で整理しておきたいのは、その資料を誰に配り、誰がどのくらいの頻度で、どこまで直すのかという点です。
社内で使っているツールや既存データの扱いもあわせて確かめておくと、形式もデータの作り方も決めやすくなります。

配布先は社内か、社外か
社内の研修資料や共有資料であれば、多少の文字組みの粗さは問題になりません。一方、顧客や取引先に配布する資料は、企業の印象を左右します。社外に出すものほど、仕上がりの精度を優先したいところです。
誰が修正するのか
修正するのが広報担当者なのか、各部署のメンバーなのかによって、求められる扱いやすさは変わります。ふだんからデザインツールに触れている人と、そうでない人とでは、どこまで作り込んだデータを任せられるかが違ってきます。
どのくらいの頻度で、どこまで修正するのか
年に1回、数字を差し替える程度なのか、毎月のように内容を更新するのか。文言の修正だけなのか、ページの追加まで含むのか。修正の頻度と範囲によって、選ぶべき形式は変わります。更新がほとんどない資料なら、仕上がりを優先してプロ用ツールで作り、修正時だけ制作会社に依頼するほうが合理的な場合もあります。
社内でふだん使っているツールは何か
どれだけ優れた形式でも、社内で使われていないツールでは、結局誰も修正できません。ふだん使っているツールで納品してもらえば、操作を覚え直す必要がなく、担当者が変更しても修正を引き継ぎやすくなります。
既存のデータをどう扱うか
すでにInDesignなどで作った資料がある場合、それを別の形式に移すかどうかも検討が必要です。たとえばCanvaには、PDFを読み込んで編集できる状態にする機能があります。ただし、影や装飾などが画像に変わってしまうこともあり、そのままでは修正しにくい部分が残ります。どこまで作り直すかも含めて、データの変換や調整が可能か、制作会社と相談するとよいでしょう。
社外に出す資料は、プロの編集・デザインを通す
社外に出す資料は、自社で修正できる形式で納品してもらう場合でも、プロの編集者とデザイナーに制作を任せるのがおすすめです。何をどう伝えるかの判断や、修正を見越したデータの設計には、資料づくりの経験が必要になるためです。
ツールが代わりに判断してくれるわけではない
顧客や見込み客の目に触れる資料では、何をどの順番で伝えるか、1ページの中で読み手の視線をどう流すか、といった判断が仕上がりを左右します。ツールが使いやすくなっても、こうした判断まで代わりにしてくれるわけではありません。
「入れたい情報」をそのまま入れても、伝わる資料にはならない
資料を作るとき、盛り込みたい情報はどうしても多くなりがちです。けれども、すべてを入れれば伝わるわけではありません。実際にレイアウトしてみると、文字で埋まって読みにくくなることもよくあります。
編集者は、入れたい情報をそのまま並べるのではなく、実際に入れるとどう見えるかを示しながら、削る、図にする、順番を変えるといった提案をします。発注する側の意向を受け止めつつ、読み手の立場で内容を組み立て直すのが、編集の役割です。
修正しやすいデータを設計するのも、プロの仕事
自社で修正することが前提の資料では、納品したときの見た目だけでなく、あとから誰が触っても整った状態を保てるデータになっているかどうかが、仕上がりと同じくらい大切になります。こうしたデータの設計も、制作の経験があってこそできる仕事です。
デザイナーは「こういうときはこうする」という定石を数多く持っているため、迷ったときの判断が早くなります。編集とデザインを分けて進めることで、見た目の完成度だけでなく制作のスピードも上がります。

まとめ
制作物を自社で修正したいなら、Word、PowerPoint、Canvaといった形式は有力な選択肢になります。
どの形式を選ぶかより先に、誰がどこまで直すのかを決めておくことが大切です。
納品形式を選ぶ前に、配布先、修正する人、修正の頻度と範囲、社内で使っているツール、既存データの扱いを整理しておきましょう。そのうえで、社外に出す資料は、修正のしやすさまで見越してデータを設計できる制作会社に相談するのがおすすめです。
よくある質問
Q1.社内で修正できる形式なら、最初から社内で作ればいいのでは?
A. 社内向けの資料であれば、社内で作るほうが早く、十分な場面も多いと思います。
一方、顧客に配布する資料は、構成や情報量の整理、読みやすいレイアウトなど、ツールの操作とは別の判断が必要です。最初の1冊をプロに作ってもらい、その後の細かな修正を社内で行うという分担も考えられます。
Q2.Canvaで作った資料を、社外に配布しても問題ありませんか?
A. Canvaは、無料・有料のどちらのプランでも、ライセンス条件の範囲内で商用利用が可能です。
ただし、素材やテンプレートの扱いにはルールがあります。詳しくは、事例紹介の記事で解説しています。
Q3.納品後に社内で修正すると、デザインが崩れませんか?
A. データの作り方によって変わります。
見出し文字を1字ずつ分けて配置していたり、社内の環境にない書体を使ったりすると、修正時に崩れやすくなります。修正を前提にする場合は、その旨を最初に制作会社へ伝えておくことが大切です。
Q4.どの形式がよいか分からない場合は?
A. 資料の用途や配布先、修正の頻度などをうかがったうえで、資料に合った形式をご提案します。
形式が決まっていない段階でも、お気軽にご相談ください。
| アーク・コミュニケーションズでは、パンフレットや会社案内、ホワイトペーパーなどの企画から原稿、デザイン、校正、納品まで一貫して対応しています。Word、PowerPoint、Canvaなど、納品後に社内で更新しやすい形式でのご相談もお気軽にどうぞ。 |
この記事について
監修担当プロフィール
成田 潔|アーク・コミュニケーションズ 取締役
横浜市立大学卒業後、アーク・コミュニケーションズに入社。雑誌や書籍、Webコンテンツの企画・編集に多数携わる。携帯ゲーム機やタブレット向けのコンテンツ開発ほか、クラウドファンディングを使った本づくりや、大規模展示会のサポートなど、編集プロダクションの裾野を広げることに尽力。2015年より取締役。
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