全長78km! 「第23回 奥武蔵ウルトラマラソン」を完走しました

「東京マラソン2015」にて完走したアークの編集者が、今年は「奥武蔵ウルトラマラソン78㎞」に出場したとのことで、再び話を聞いてみました。目標距離が変わると、準備や練習も仕方も変わってきます。長距離マラソンに挑戦したい人のために「どんな準備や練習をしたら良いか」というアドバイスも聞きました。(公開:2016年8月22日/更新:2022年2月25日)

菊池宏充(36)
アーク・コミュニケーションズ編集者。編集9年目。
実用書、企業媒体などを多数担当し、現在は教育誌を製作中。5年ほど前からランニングに夢中に。
(2016年取材当時の情報です)

※ウルトラマラソンとは、42.195㎞(フルマラソン)を超える道のりを走るレースのこと。


【奥武蔵ウルトラマラソン】
スタート/ゴール:埼玉県毛呂山町・毛呂山総合公園。全長78㎞・最大高低差812m。2016年大会(6月5日)には2240人以上が出場。参加資格は「3年以内に42.195㎞以上のレースを完走した経験があり、かつ起伏の激しいコースに対するトレーニングを充分積んでいる健康な20歳以上の男女」

奥武蔵でウルトラマラソン・デビュー!

——ウルトラマラソン出場は初めてですか?
菊池 はい。昨年は「東京マラソン」で完走して目標タイムを達成できたので、自分はどこまで走れるのか挑戦の第一歩として出場しました。知人にウルトラマラソン・ランナーがいて練習会に参加してるうちに「奥武蔵はすごくいいよ!」と勧められたのもあり、「僕のウルトラマラソン・デビューは奥武蔵にします!」って宣言して(笑)。

▲レース開始して1時間ぐらい雨が降ってました。冷たくて気持ちが良いですが、雨が上がった後は蒸発して湿度が急上昇します

▲画像は左右にスライドできます(PCの場合、写真左右にある矢印をクリック)

——「奥武蔵ウルトラマラソン」のコースはきついんですか?
菊池 78㎞という距離もありますけど、何より高低差がきつかったです。特に累積標高が2127mというのが非常に厳しかったです。累積標高というのは全部の標高差なんです。奥武蔵で言えば、上りが延々続いたり、下ったらずっと下りというのではなくて、上りと下りを繰り返すという感じで。これはつらかったです(泣)。例えば図にすると、なだらかなラインの山じゃなく、ギザギザの山のようなものになると思います。

※大会要項パンフレットより抜粋

——想像したくないほどきつそうですが、山の景色はきれいですね(笑)。
菊池 これは本当に気持ち良いです。以前は真夏に開催していて、過酷なことで有名な大会だったようですが、昨年から6月開催になって、ぐっと走りやすくなったみたいですよ。あと、この大会はエイドステーションが充実していることでも有名で、3㎞間隔で26カ所もあって、食べ物・飲み物の量・質ともに豊富なのが魅力的でした。用意されてるメニューもおもしろいんですよ。バナナ、おにぎり、パンはもちろん、焼き鳥にノンアルコールビールとか、キュウリ、冷や奴、うどん、そば、お粥、とか。74㎞地点で最後に食べる冷たいお汁粉が甘くてうまかったですよ。全体的にお祭りっぽい雰囲気で、ついついエイドステーションに長居してしまうこともありました(笑)。

▲山の緑がきれい…まだまだ風景を楽しむ余裕があります

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奥武蔵のコース・難関ポイント

——朝7時スタートなんですね。コースはじめから登りがきついんですか?
菊池 いえ、最初はフラットな林道で、まだそんなに厳しくはないです。風景を見る余裕もありましたから。20㎞超えて、鎌北湖AS(エイド・ステーション)あたりまでは少し上り下りがありましたが、そんなに激しくはないのでまだ楽しく走れました。このあたりで頑張っちゃうと後半もたないと思ったので頑張りすぎないようにしなきゃ、と気をつけていました。そして、鎌北湖あたりからだんだん険しい山の方に入っていきます。

▲今回、3㎞間隔にあるエイドステーション(26カ所)は一番最初だけスルーして、あとは全部寄っておいしく食べたり飲んだりしてました(笑)

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菊池 25㎞地点ぐらいから本格的な山登りが始まりますが、僕は基本的に急な坂は歩くようにしてました。先は長いし、途中で足が動かなくなっちゃうかもしれないので。パッと見て傾斜がゆるければ走りますが「ダメだな」と思ったらすぐに早歩きに切り替えていました。

——マラソン中継を見てると、決められた時間までに、各所に設けられた関門にたどり着けない人もいますが…。
菊池 決められた時間ごとに関門を通過しないと失格になり、バスで搬送されます。「奥武蔵」の場合、一番最初の関門は14時の刈場坂ASで、スタートして7時間です。ゴール閉鎖が19時ということは制限時間は12時間ですね。刈場坂以降、コース後半は関門が細かく設定されていました。やっぱり後半はみんなきつそうで、僕も関門にひっかからないように必死でした(笑)。

▲上りは走り続けずに基本的に早歩きで動いていました

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菊池 折り返し地点を過ぎたあたりから膝が痛くなってきたんですよ。50㎞〜60㎞の間が今回一番しんどかった! さすがにもう何度も「やめたい!」って思いましたね。先ほど言った、細かい上り下りが繰り返しいっぱいあるんです。ランナーあるあるだと思うのですが、無理すると本当に飛び上がるぐらい膝まわりが痛くなる時があるんです。その時ももう騙し騙し走ってましたね。走り方を少し変えて、身体が楽な走り方を選んでいました。あと、頭では「痛くない!」とか自分に思い込ませようとしてました(笑)。

——そんななか「いけそうだ!」と思ったのはどの地点ですか?
菊池 58㎞地点では「これからまだ残り20㎞もあるのか」と考えてしまってしんどかったんです。でも、「あとはハーフマラソンぐらいの距離だ」「5㎞を4回走ればいい」などと考えているうちに、いつの間にか残り15㎞地点を走っていて、「あ、あと皇居3周か!」と(笑)。その間もエイドステーションがたくさんあるので適度に休みつつ、「あともうちょっとだ!」「いける!」って思えたのは残り10㎞過ぎたあたりからです。

——聞いているだけで、息切れがします(笑)が、完走おめでとうございます。タイムはどれぐらいですか?
菊池 9時間46分55秒で完走しました。走るコースはきつかったですが、大会全体の雰囲気がすごく楽しかったです。たとえば、折り返したランナーたちとすれ違う時にお互いに声をかけ合ったりしてました。「がんばれー!」「ナイスラン!」「もうちょっとだぞー!」そんな声援が励みになりました。

▲各エイドではコスプレやフラダンス踊ってる人、楽器演奏してる人も。水着の女性がランナーに水をかけてくれたりも

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ウルトラマラソンを走るための練習アドバイス

——6月の大会出場に向けてどれぐらいからトレーニングを始めたんですか?
菊池 今年の年明け、1月ぐらいから意識した練習を始めましたね。1月は毎週、フルマラソンやハーフマラソンのレースに出てました。純粋にその大会に出場したいという気持ちがある一方、ウルトラマラソンの練習にもなるかもという気持ちもあって。大会に出場すれば絶対にその距離を走らなきゃいけないから練習にもなるじゃないですか(笑)。家にいたらサボっちゃいますからね。練習でいうと1月、2月は週4回ぐらい走っていて、3月、4月はちょっとサボり気味で週2回ぐらいで、直前期は月間で300〜400㎞は走ってたかな。

——練習内容はフルマラソンの場合と変えたりするんですか?
菊池 変わりましたね。目標のレース距離を想定して、フルマラソン大会を走るペースじゃなく「そんなに無理せずにもう少しゆっくり走ろう」とか。それに、やっぱり長距離レースに出るということは普段の練習でも、ある程度長い距離を走る必要があると思うんです。ここ2〜3カ月で3〜4回長い距離を走りました。例えば、吉祥寺スタートで多摩湖まで行って一周して戻ってくるとフルマラソンぐらいの距離になるんですが、このコースを何人かで一緒に走りました。また、別の日に1人で会社から鎌倉までだいたい65㎞を走ったり。あとは山中の練習です。雲取山(くもとりやま)を夜通しかけて10時間ぐらい走ったり。これは60㎞ぐらいでした。

▲完全に余裕がなかった時だったと思います(笑)

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——練習前後の身体のケアは何かしてるんですか?
菊池 ストレッチはやるようにしてます。それぐらいかな。走る前と後です。走る前はいきなり伸ばしちゃうとダメなんで、ちょっと走って身体を温めた後にストレッチ。走り終わった後はすぐにストレッチします。身体が痛くなりたくないですから。でも、今回の筋肉痛は想像を超えました。日曜に走って月曜は筋肉痛、ということはありましたが火曜日まで引っ張るとは…痛かったです(笑)。

——来年の「奥武蔵ウルトラマラソン」出場を考えている人のために「こういう練習しておいた方がいい」というアドバイスはありますか?
菊池 初参加の僕が言うのもおこがましいんですが…。とにかく、この大会は「山だった!」という印象です。アップダウンが激しいから普段の練習で「峠走(とうげそう)」をやっておくといいんじゃないかと思います。実際、僕も山を走ってみて自分のペースが分かりました。9㎞ぐらいずっと山を登り続けるコースを走ってみた時に、どうやって走ったらいいか何となくペースがつかめたし。あと、下りで恐いのは膝に負担がかかること。歩幅や足の着地の仕方など、人それぞれのやり方があるから練習してみないとどれが自分に合うのか分からないので「自分の楽な走り方はどれなのかな?」と探れる峠走は意味があると思います。いきなり大会本番を迎えるのは本当にやばいです。フルマラソンの練習にもなるし、おすすめです。

▲レース終了後。膝がこんなことになりました(泣)
▲完走後に食べたカレーがめちゃくちゃうまかったです

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——来年もこの大会に出たいですか?
菊池 出たいです! でも、他のウルトラマラソン大会との兼ね合いもあるので出るかどうかゆっくり考えていこうと思います。奥武蔵のある6月は他にも魅力的な大会がいくつもあるんです。たとえば、「サロマ湖100㎞ウルトラマラソン」にも出場したいって考えてるんです。当面の目標は今年12月開催の「神宮外苑24時間チャレンジ」です。今回、走ってる時は超しんどかったけど、終わってみて「あー!終わったー!」じゃなくて、「あ、練習したらまだ記録が伸びるかも!!」って思ってテンションが上がってます。走るのは楽しいですよ。

——来年の「サロマ湖100㎞ウルトラマラソン」ももし走ったら、またマラソンレポートを聞かせてください。今回もお疲れ様でした!

●文= 魚住陽向フリー編集者、小説家
●編集=大山勇一