富山県立山町・ 橋渡りの伝統儀式『布橋灌頂会』を知っていますか?

北陸新幹線の開業以来、テレビや雑誌で北陸3県の観光・グルメ情報がよく取り上げられるようになりましたが、今回はまだまだ全国的にはメジャーになっていない、知る人ぞ知る観光情報をご紹介します。それが富山県立山町で行われる『布橋灌頂会(ぬのばしかんじょうえ)』という荘厳な伝統儀式です。(公開:2015年3月13日/更新:2022年9月28日)

2022年(令和4年)9月25日は無観客にて開催されました。

▲荘厳な雅楽とともに高僧が女人衆を導くように進みます。布橋は108枚の板からできており、煩悩の数だけ踏みしめながら渡ります

江戸時代の、立山信仰の世界を疑似体験!

日本三霊山の一つ、霊峰・立山には江戸時代、登拝をすると極楽に行けるという言い伝えがあり登山信仰が盛んでした。しかし当時女人禁制だったため女性は登山できなかったのです。

そこで、悩める女性たちのために登山しなくても極楽浄土に行ける女性救済の儀式『布橋灌頂会』が始まったといわれています。1996年に約130年ぶりに再現され、2005年からは2〜3年ごとに開催されている、伝統的な癒しのイベントです。

▲「布から足を踏み外せば極楽に行くことができない」とも伝えられており、やや畏ろしい雰囲気も残しているのは伝統儀式ならではでしょうか

『布橋灌頂会』は、公益社団法人日本ユネスコ協会連盟の「第3回プロジェクト未来遺産」に富山県内で初めて登録されました。また、サントリー文化財団による「第36回サントリー地域文化賞」を受賞し、年々その素晴らしさが知られるようになってきました。

橋を渡ると新しい自分に生まれ変わる!

参加女性は女人衆(にょにんしゅう)と呼ばれ、白装束を身にまとい、目隠しをし、三途の川に見立てられた姥堂(うばどう)川に架かった布橋を渡ります。布橋はこの世とあの世の境界で、無事に渡り切ると死後に極楽浄土に行けると信じられていました。

朱塗りの布橋を渡ると、向こう側はもうあの世。姥堂内で念仏を唱え、再び橋を渡り、この世に帰って来た時には、もう新しい自分になっているということです。

▲『布橋灌頂会』での歩行は独特です。まず、右足を出し、その右足に左足をそろえる。右左右左と歩きます。この歩行を「右左右左(うさうさ)」といいます。帰りはその逆の歩き方で、「左右左右(さうさう)」になります

【最新情報は立山町観光協会へ】
「私もぜひ、白装束をまとって布橋を渡ってみたい」という女性もいらっしゃると思います。女人衆は募集の後、抽選のうえで参加が決まります(要・参加費用)。
こまめに前もっての情報チェックをおすすめします。
一般見学者も性別年齢問わず、女人衆が橋を渡った後に橋を渡ることができます(一般見学者橋渡り有料)。
また、布橋灌頂会の「プチ体験」も含めた「立山黒部アルペンルートのツアー企画」も計画されています。
もちろん、橋渡りに信仰の有無や宗教も問いません。癒されたい女性だけでなく、登山や自然に興味のある方も、落ち着いた大人の旅を楽しみたいご夫婦も北陸新幹線を使って行ってみてはいかがでしょう。
お問い合わせ先:布橋灌頂会 実行委員会 TEL:076-462-1001
【立山町観光協会ホームページ】

2022年(令和4年)9月25日は無観客にて開催されました。

このチラシは2006年のものです

▲画像は左右にスライドできます(PCの場合、写真左右にある矢印をクリック)

立山布橋灌頂会 Nunobashi Kanjoe Purification Ceremony on Holy Mt.Tateyama](音が出ます)

●文= 魚住陽向(フリー編集者、小説家)/●編集= 大山勇一