長野にクオリティーの高い『エリアブックレット』がたくさんある理由

こんにちは編集第3グループの松本奈津美です。国内ガイドブック編集のお手伝いをしています。最近は『まっぷる横浜 中華街・みなとみらい’16~’17』(昭文社)制作に携わりました。私は長野県長野市出身なんですが、今日は私が集めた長野の『エリアブックレット』(地域色の高い小冊子やフリーペーパー)を紹介します。長野には魅力的な『エリアブックレット』がたくさんあるんですよ!(公開:2016年3月11日/更新:2022年3月18日)

■「古き良き未来地図」「古き良き未来地図・改」

▲画像は左右にスライドできます(PCの場合、写真左右にある矢印をクリック)

長野市内の古民家リノベーションしたお店を紹介する小冊子(各100円)。全ての店舗紹介は温かい手書きイラスト付きで、新しくも懐かしい、リノベーションの雰囲気に良くマッチしています。イラストマップもかわいい! リノベ前の店舗業態推移や、改装費、セルフリノベ度グラフが全店舗についているのも面白いし、帰省するたびにこれを片手に散歩やおいしいものを食べに行きます。
リンク オープンアトリエ「風の公園」

■「鶴と亀」

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長野県飯山市の兄弟が作っている、全国で話題のフリーペーパー(無料)。まるで写真集のようです。ほとんどのページを田舎のおじいちゃんおばあちゃんの生き生きした写真で埋め尽くされていて(たまに突然チラリズムも)、全面ファンキーでぶっ飛んでいます。

制作者さんが好きだというヒップホップカルチャーの手法(サンプリングとか!パンチラインとか!)を用いて、「奥信濃」のおじいちゃんおばあちゃんのイケてるスタイルを紹介しています。斬新かつ愛のある視点がcoolだし熱い!
リンク 鶴と亀 フリーペーパー

■「街並み」

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2005年8月創刊。「SBC通り」「相ノ木通り」「善光寺」「長野駅東口」といった毎号のテーマに沿って、長野市を中心とする地元の何気ない風景を美しく切り取った小写真集(各号1冊500円)です。撮りためられた写真の中には「すでにない長野の風景」も多く、見ているだけで胸にぐっとくる写真ばかり。巻末(茶色い紙ページ)の特集も郷愁を誘います。「街並み おまかせセット」2500円/5冊入り(スタッフがセレクトした5冊/送料無料)もあるようです。
リンク ナノグラフィカ

■「日和」

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まちなみカントリープレスは長野の地元出版社。昔から馴染みがあるフリーペーパー(無料)で広告もセンス良くて充実しています。コンセプトは「長野県の暮らしをおもしろく」ということで、ファッション、ヘアサロン、ミュージックなどいろんなジャンルのカルチャーやトレンドを紹介。長野のフリーペーパー文化が高クオリティなのは「日和」が基礎を作ってくれていたから、というのもあると思います。
リンク まちなみカントリープレス

■「チャンネル」

▲画像は左右にスライドできます(PCの場合、写真左右にある矢印をクリック)

長野市の書店「Ch.books」が発行するフリーペーパー(無料)。長野県に住む人や物にこだわり、毎号一つのテーマ特集で丁寧に掘り下げているので読み応えがあります。フリーペーパーの方が今ちょっとお休み中ということで寂しいですね。書店にはカフェコーナーもありこれまたステキな雰囲気。
リンク ch.books

『エリアブックレット』と『古民家リノベーション』との密かな関係性とは?

長野と言えば『古民家リノベーション』が近頃盛んで、以前に増してどんどんステキな街並みになってきています。市の開発もあり若者も年配の方も行きやすい施設がたくさんあります(ぱてぃお大門とか)。県外からの観光客も増え、地域イメージもアップしてきている気がします。
前述の「古き良き未来地図」も、最初の発行時の2012年の紹介数は30件ですが、それが15年の改訂版では約二倍の59件になっています。

■参考:長野・門前町のリノベーションまちづくり、新局面に|日経アーキテクチュア

▲『チャンネル』の発行をしている本屋さん「ch.books」の店舗もリノベーションによるもの

ここからは私感ですが、長野の『古民家リノベーション』ブームと、『エリアブックレット』の充実ぶりは無関係ではないのです。長野ではデザインや音楽など、クリエイティブな分野で活躍する若いクリエイターさんが増えてきています。彼・彼女らは県内外からやってきて信州大学などで学び、卒業後もそのまま長野にとどまる方が多く(または東京から戻ってきたり)、そういったクリエイターさん達がオシャレで住みやすい街に作り変えていく→さらに新たなクリエイターが増える、といったステキなスパイラルがいま長野で起きているようです。

▲『街並み』の写真は主に『OGRE YOU ASSHOLE』のベーシスト清水隆史さんによるもの。元々はバンドの音楽が好きだったのがきっかけで清水さんの写真を知りました。清水さんの写真のファンにもなったことで、長野のまちづくりやリノベーションに関わる、門前の情報発信地としてよく名前を聞いた「ナノグラフィカ」や「ネオンホール」の起ち上げ人でもあったことが分かり、とても驚きました。清水さんも県外からやってきて長野を中心に活躍するクリエイターのひとりです

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というわけで今、長野がアツい! のですよ!
エリアブックレットは県外でも入手可能ですが(詳しくは各々のHPにて)、せっかくですから是非、長野に観光に来てください!

●編集=松本奈津美/●写真撮影・編集=大山勇一
●文章協力=魚住陽向フリー編集者小説家