情報誌編集に携わってる大塚と申します。2016年初夏、銀座、博品館劇場にて「歌劇『明治東亰恋伽~朧月の黒き猫~』」を観劇して参りました。乙女ゲーを原作としたいわゆる「2.5次元」舞台です。私はこの原作をほとんど知らなかったのですが、はたしてこんな私でも楽しめるのか?!ということで少々長いですがレポートさせていただきます。2.5次元に興味のある方にも、そうでない方にも、お役に立てれば幸いです。(公開:2016年8月30日/更新:2022年4月22日)
☆歌劇「明治東亰恋伽~朧月の黒き猫~」
http://kageki-meikoi.com/
「めいこい」と「めいげき」のキービジュアル。劇場でもらったチラシより
その1 2.5次元舞台とは?
「歌劇『明治東亰恋伽~朧月の黒き猫~』」は、「2.5次元舞台」といわれる舞台であります。2.5次元というのは、漫画、アニメ、ゲーム、小説の世界【2次元】と、現実世界【3次元】の“間”というニュアンスで使われる言葉です。具体的には、俳優、声優といった存在で、2次元と3次元の間の架け橋となるものが【2.5次元】といっても過言ではないかと思います。
では何をもって「2.5次元舞台」なのかというと、原作が「漫画、アニメ、ゲーム、小説(どちらかというとラノベ)」であること。今日、一番有名でそのジャンルを広く伝えたものは「ミュージカル『テニスの王子様』」(通称、テニミュ)でありましょう。
至極簡単に言うと、イケメン俳優たちが2次元のキャラクターを演じた舞台です。
(参考)
☆あなたは「2.5次元舞台」を知っていますか?
https://allabout.co.jp/gm/gc/459697/
☆2.5次元舞台の市場拡大
https://www.oricon.co.jp/news/2042631/full/
その2 「明治東亰恋伽」とは?
今回取り上げる「歌劇『明治東亰恋伽~朧月の黒き猫~』」、略して「めいげき」も原作となる2次元作品がございます。乙女ゲームです。
乙女ゲームとは、数人の男性キャラクター(平均すると6人+シークレット1人程度)を主人公(プレイヤー)が選択肢やミニゲームを駆使して攻略し、その男性キャラクターと恋愛するという、恋愛シミュレーションゲームです。
「めいげき」の原作は「明治東亰恋伽」といい(こちらは略して「めいこい」)、元はモバイル用ノベルゲームとして2011年からリリースが始まり、その後メディアミックスコンテンツとして、ドラマCDや小説、コミック、アニメと展開していった作品です。今では、スマートフォンアプリほか、PSP専用ソフト「明治東亰恋伽 トワヰライト・キス」にてゲームをプレイすることができます。2016年8月末にはVita移植版として「明治東亰恋伽 Full Moon」が発売になります。
「めいこい」の内容を簡単に説明すると、高校生の女の子がひょんなことで明治時代へタイムスリップをし、その時代の文化人と出会う物語です。漫画やアニメでしばしば見かける、時代トリップファンタジー作品であります。
☆明治東亰恋伽 Full Moon
余談ではありますが、私が上京して初めて行った声優イベント(「大和彼氏」というメディアミックス作品のオンリーイベント)でこの「明治東亰恋伽」のフライヤーを落手しておりました。その当時は「文豪と恋wwwそんなの売れるのかよwww」と思っておりましたが、それから5年。「大和彼氏」よりも人気が続く作品になっておりました。何が当たるのか、わからないものですね。
2011年にもらった「めいこい」の紹介冊子が自宅から出てきました。運命を感じます
その3 「めいげき」に行くまで
と、ここまで語りましたが、私は「めいこい」についてはタイトルを知っているもののゲームをはじめ、メディアミックスした小説もアニメも見たことはありません。知っているのは、文化人と恋愛できるトリップ作品らしいということだけ。
そんなしったかぶりの私が何故、「めいこい」の舞台を観に行くことになったかというと……それはただ単に友人からチケットを譲ってもらったからです! ものすっごい単純です!
友人は「めいこい」のファンで、昨年末に会った際にも「めいこい」の話をし、私に作品を布教(=強く勧めること)しておりました(私もそれに負けじと自分の好きな作品を布教するという、お互い様の関係)。私はその時、「あ〜あれね、あの文豪と恋するやつね」と聞いているのか聞いていないのか、といった反応で彼女の話を聞いておりました(オタクはそういうもの)。
しったかぶりではあるのですが、彼女から聞いた話で「めいこい」については以下の知識を知り得ております。
・主人公(私)のめいちゃんは、牛鍋が好き
・チャーリーという怪しい男のせいで、明治時代にタイムスリップしてしまう
・春草さん(CV[=キャラクターボイス:声優さん].KENN)が人気
・彼女は鏡花ちゃん(CV.岡本信彦)が好き
「めいちゃんは牛肉が好き!」がすごい印象に残ったものの、友人には申し訳ないですが、実際プレイすることは結局ありませんでした。
ちなみに私が作品を選ぶ際のポイントは、キャスト!世界観(設定)!自分の好みのキャラクターの有無!のため、「めいこい」はイマイチ私には中々近づきにくい作品でありました。条件がなかなか合わず……。注文が多い人間というのは困りものですね。
その4 観劇前に情報を集める
私自身、2.5次元舞台を観に行くことは初めてではありません。しかし、原作作品に全く触れず観劇しに行くというのは初めての行為です。
2.5次元舞台に対して「観劇する際は原作を知っているのが最低限のルール」だと考えるところから、これまでは気になるキャストがいても足を運ばないことにしておりました。
なぜなら、知っているほうが、その1200倍楽しいと知っているからです。逆に、原作作品を知らないと楽しめないのでは? 物語に置いてけぼりになるのでは? という恐れもありました。
2.5次元舞台は、ざっくり3種類にわけられます。ミュージカル、ストレートプレイ、朗読劇の3種類です。朗読劇は数少なく、ほとんどはミュージカルかストレートプレイです。簡単に分けると、キャストが歌うか歌わないかの違いです(ものによっては、ストレートプレイであっても歌う作品があります)。「めいげき」はタイトルに歌劇とあるので、ミュージカルで間違いなしです。
原作作品をわからないなりに、どんな舞台になるのかを想像するべく手探りに調べてみました。「演出:吉谷光太郎」と公式サイトでありましたので、更に調べてみることに。なんと、彼が演出する舞台を過去に私は数作品を観劇しておりました。これも縁ではありますが、思い返せば楽しめた所もあり、気になった所もあり……。
元来、ひねくれた性格でもあり、あら探しもしはじめるタチの悪い観客である私は「よし、過度な期待をしない!」と心に決めます。観劇前から不安になるのはよくありません。
その5 キャストについても調べてみた
何度か2.5次元舞台に足を運んだことがあるので、俳優に関してはわりかし知識があります。原作を知らなくても出演者から、とっかかりをつけることもできるので確認してみました。
以下、キャスト(キャラクター)の大雑把な紹介と、私の感想です。
・青木志穏(ヒロイン・綾月芽衣役)
明治時代にタイムスリップする、女子高生。牛肉が好き。
初めて見る方。可愛い。
・橋本祥平(菱田春草役)
日本画家で有名な……本作では美術学生として登場。森鴎外の屋敷に居候している。
初めて見る方、舞台「ハイキュー」に出ていたらしい。それ以外わからない。
・荒木宏文(森鴎外役)
あの有名な森鴎外、以上。
過去に一度、見たことあり。テニミュ俳優! 歌がうまい。
・赤澤燈(泉鏡花役)
戯曲で有名な泉鏡花ではあるが、本作では書生。何故か肩にうさぎが乗っている。
こちらもテニミュ俳優。2月に主演作品を観劇。
・遊馬晃祐(川上音二郎役)
役者。女形もやっているらしい。他に比べてモダンな格好している。
橋本さんと同じく。初めて見る。
・汐崎アイル(小泉八雲役)
こちらも怪談、奇譚で有名な小泉八雲。本作では大学教授。うさん臭そう。
この方もテニミュ俳優。よく名前を見るが実際、見たことはない。
・吉岡佑(藤田五郎役)
元新撰組のあの方。本作では、警察官として登場。
同テニミュ俳優。3月にミュージカル(2.5次元舞台)を観劇。すごく細い。
・安里勇哉(奇術師チャーリー役)
物語のキーパーソン、謎の男。彼のマジックにより、主人公は明治時代へ。
舞台「黒子のバスケ」に出ていたよう。初めて見る方。
☆ゲームでのキャラクター紹介
https://www.meikoi-psp.com/chara/
なんと男性陣7人中4人もテニミュに出演していた方です。おそるべしテニミュです。私自身も最初は2.5次元舞台に出る俳優については、あまり詳しくはなかったのですが、テニミュを見てからは段々と名前がわかるようになりました。
昔から、漫画やアニメを原作とした舞台はあったと思いますが、やはり今日名を広げるようになったのは「ミュージカル『テニスの王子様』」の影響でしょう。2003年から始まり、その人気はシーズン(キャスト)が変わっても続く。恐ろしいモンスタージャンルです。歴史が長く、公演数もキャストも多い作品ですから、自ずとテニミュに出ていた俳優を目にする機会が多いのだと思います。逆に全くテニミュ俳優がいない作品を探すのが、難しいと思うほどです。
☆ミュージカル「テニスの王子様」
2.5次元舞台を観に行くのは、舞台などにあまり足を運んだことがない方からするとハードルが高く感じると思います。もしくは少し小馬鹿にしてしまう節があるかもしれません(私も以前はそう思っていました)。しかしテニミュに関しては、ある程度のキャラクターを知っていれば、おおよそ問題なく観劇できると思います。私もその昔、テニミュを観に行って、見事にハマった人間であるので折り紙付きです。それに、他の2.5次元舞台に比べるとチケットの価格も(どうやらつい最近値上がりしたそうですがそれでも)安いです。本当に初心者向けだと思います。
と、余談はここまで、俳優に関してはビジュアルを含め、あまり問題なさそうに思えました。特に推している俳優がいないとしても、私が楽しめる要素がグンと上がりました。
と、事前の調査だけでこんなに長くなってしまいましたが、いよいよ劇場に向かいます。
学生時代にテニミュにハマり、自宅には関連のDVDや購入したブロマイドがたくさん
●文=大塚理紗
●編集=成田潔
●商品撮影=田村裕未