[神保町ブックフェスティバル]で「点字・視覚障害体験会」に参加してきました

こんにちはフリー編集者の魚住です。長年、雑誌や書籍を作ることに携わってきましたが、古本も好きです。読書の秋に本の街・神保町で古本を漁りたい、ぶらぶらしたい。というわけで、第25回 神保町ブックフェスティバルに行ってきました。今回はフェス内で行われていた点字・視覚障害体験会参加のもようもあわせてレポートします。(公開:2015年11月13日/更新:2022年3月7日)

※このイベントは終了しています
■第25回神保町ブックフェスティバル
(第56回東京名物神田古本まつり協賛)
[日時]2015年10月31日(土)10:30〜18:00/11月1日(日)10:00〜18:00
[会場]すずらん通り・さくら通り、神保町三井ビルディング公開空地(東京・神保町)
[主催]神保町ブックフェスティバル実行委員会

本の街・神保町に古本好きが大集結!

神保町駅から地上に出てビックリ。[神保町ブックフェスティバル]10月31日(土)の大混雑は尋常じゃありません。すずらん通りもさくら通りもなかなか前に進めない状態。流れに逆らおうものなら鳴門の渦潮に落ちた木の葉のごとくクルクルと波にのまれることウケアイです。ぶらぶらしたい人は本当にぶらぶらして終わってしまいそうです。気合いを入れて、好みの古本を探さないといけません。

▲画像は左右にスライドできます(PCの場合、写真左右にある矢印をクリック)

全体的には50歳代以上の男性客が多いようです。小さな出店が並ぶ中で人気は「古地図」や「写真集」「デザイン本」のお店。なかには、この日の戦利品が持ちきれないことを想定して旅行用キャリーバッグ持参の女性もチラホラ。

さすがは本の街・神保町。そして、しみじみ思いました。「活字離れ」なんてウソですね。みんな、本が大好きです(新刊と古本文化ではまた話が異なりますが)。

点字・視覚障害体験会に参加しました!

皆さんは視覚障害者の読書や情報入手の現状をどれだけご存じでしょうか。恥ずかしながら私が持っていた情報はかなり古かったですね。日本点字図書館が高田馬場にあること、それにテレビのドキュメンタリー番組で点訳された膨大なファイルを見たことがあるぐらい。また文科省推薦の真面目な内容の本しか点訳されないイメージを持っていました。

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以前から出版に携わる者として興味はあったのになかなか触れる機会がなかった点字。今回、[神保町ブックフェスティバル]内イベントの一つに点字・視覚障害体験会(参加無料)があったのは絶好のチャンスです。

体験会の席に着くと、点字の仕方を教えてくれる先生が向かい側に。今回教えてくれたのは森田佳那子(もりたかなこ)さん。視覚障害者ですが日頃の情報インプット量は多く、弁も立つし、教え方もとても分かりやすい。そばに付き添っていたガイドヘルパー(移動介護従事者)の女性もサポートしてくれました。
今回初めて携帯点字器を使って点字を打ってみました。名刺大の紙に自分の名前を打ってみて、森田さんに自己紹介。無事に私の名前を読んでもらえました(本当は苗字と名前の間に1マス空けるのを忘れていたんですが)。
点字は、打つ時は右から左へ。読む時はその逆で、左から右へ指先を進めます。組み合わせが多く、憶えるのは大変です。1つの言葉ごとに1マス空けるなど、ルールもたくさんあるようです。指先で触って憶えるのはもっと苦労しそうです。

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「心のバリアフリー」が必要

「子どもの頃から点字を憶える人に対し、大人になってから病気や事故で視力を失って(中途視覚障害者)点字を憶えるのはとても難しいですね。様々な事情や生活環境があるので[視覚障害者]とひと括りにはできないんですよ。情報を得たり、コミュニケーションを取るために必要な物が一人一人違うんです」(森田さん)
現在ではパソコンなどを使って「読む」ことを補助してくれる物が発達。視覚障害者の方はキーボード打つのも速いそうです。その一方で、パソコンなどやらない人や外出ができない人もいて、情報から遮断されている視覚障害者も少なくありません。

最近はオーディオブックなどの電子書籍も年々増えてきました。
「同じ内容の本で、点訳された本とオーディオブックが両方あると嬉しいですね。どちらか一方よりも両方で読みたいものなのです」(森田さん)
なるほど、聞いてみないと分からないものですね。私は小説も書くので、いつか自分の小説を点訳や音声化してみたいものです。

今回は滅多にない機会ということもあり、「普段、こんなこと聞いたら失礼かなと思ってなかなか踏み込めないんですよ」と言ってみたところ……。
「皆さん、遠慮したり、遠巻きに見てるだけで聞いてくれることは少ないですね。本当はもっとコミュニケーションを取りたいし、視覚障害者のことも知ってほしいです。興味を持ってもらいたいし、私たちも情報がほしい。みんな、どこかバリアを張ってる気がしますね。[バリアフリー]という言葉は設備の意味で使いますが、人の心の中にも[バリアフリー]が必要だと思います」(森田さん)

やはりコミュニケーションって大切だなとつくづく思います。あなたやあなたの家族、友人がある日突然、視力を失ってしまったら……ちょっと想像してください。今までやすやすと手に入っていた情報が簡単には得られなくなってしまうことを……。
情報を発信する側としては「心のバリアフリー」とともに「情報のバリアフリー」も目指したいものです。

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[お問い合わせ]
社会福祉法人 桜雲会http://ounkai.jp/
社会福祉法人 日本視覚障害者団体連合http://nichimou.org/

●撮影・文= 魚住陽向フリー編集者、小説家
●編集=大山勇一