食漫画のパイオニア的漫画誌『思い出食堂』のトークイベントに行ってきました!

少し真面目な話をします。私は多分、これを読んでいただいてる皆さんと同様、子どもの頃(昭和40年頃)から漫画を読んできました。その頃の漫画というものの地位はとても低く、子どもが読む「くだらないもの」として大人からは悪書扱いを受けていたと感じます。日本は高度経済成長期ではありましたが、今ほど豊かではなく、子どものお小遣いもタカが知れています。貸本屋で借りたり、兄弟や友達同士で回し読みしたり、書店で立ち読みしたり。がんばってお小遣いを貯めて読みたい漫画を読み続けてきました。読む側も工夫が必要でした。

その頃の商業誌は少年誌、少女誌、学年誌が人気がありました。そのうちに青年誌、ヤング誌、女性誌、児童・幼年誌、娯楽誌、四コマ誌など様々なジャンルの漫画誌が増えていきました。1980年代、まだ海外から漫画の面白さは発見されていませんでした。しばしば「日本人は子どもっぽい。通勤電車の中で会社員はみんな漫画雑誌を読んでいる」と嗤われていました。ところが現在ではどうでしょう。「Manga」は今や世界共通言語です。日本の漫画家たちは自分の創作活動を頑張ることで、漫画の地位を押し上げてきたのです。

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ところで、漫画家の友人が増えると、クリエイターの立場から創る側の目線も理解できるようになります。絵は描けませんが消しゴムかけ、ベタ塗り、スクリーントーン貼りなど友人の漫画の手伝いもしました。アシスタントも大変ですが、アシスタントに指示を出す側も大変です。「ひとをつかう」ということは適性が必要なので難しいことなのです。

マンガを描くという作業はとても大変です。言ってみれば映画制作をしてるようなものです。現在はデジタルで作画という漫画家も多いですが、それでもストーリーをつくり、場面構成をするという作業はそんなに簡単なものではありません。長編は長編の、短編は短編の、四コマは四コマの難しさがあります。どれも1本で、基本的には起承転結があります。一つの世界を創造するのです。

漫画人気によって漫画家人口が増えれば、どうしても席が足りなくなって、はみ出てしまう人たちがいるのも仕方ありません。そんな日本の漫画の業界の中で、自分を必要としてくれる商業誌=自分の生きる場所を見つけることができた人は本当に尊敬します。プロになった後でも挫折したり、裏切られて絶望したりということはざらです。それでも自分から営業活動したり、広報したり、という努力が必要になってくる。

こんな大変な作業をして、生み出されたのが漫画です。だから、海賊版サイトで読まないでほしいと思っています。これが言いたかったことです。漫画文化の衰退につながるようなことはしてほしくないのです。アークの編集部長(40代後半)は気に入ったコミックスは同作品で「紙」と「電子書籍」両方とも買う人です。別に大金持ちではないのにすごいことです!

最近はグルメ漫画というジャンルも人気です。コンビニに行けば、グルメ漫画が安価で手に入り、グルメ関連の漫画を展示・即売する「グルコミ」や「関西めしけっと」というイベントも大きな展示会場で開催されています。そんなグルコミ人気の中、実は「食漫画」にいち早く目をつけて開拓し、今も「食漫画」にこだわり続けるのが『思い出食堂』という漫画誌です。そして私は、『思い出食堂』に自分の場所を見つけた漫画家さんの作品にも出逢えてよかったと思っています。皆さん、とてもいきいきしているように感じます。

おいしいものはひとを幸せにします。食べても、作っても、読んでも幸せになります。多分、描いていても幸せになるのだと思います。ほっこりする幸せをごちそうさまでした。多分、もっとおかわりすることでしょう。

●撮影・文・編集= 魚住陽向フリー編集者、小説家