属人化した知識を新人が理解できる教材に変える方法

[公開:2026年1月20日]

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はじめに

企業の教材制作で、こんな課題を耳にします。

  • 作った教材を新人に渡したものの、なかなか理解してもらえない
  • ベテラン社員の持つノウハウをどう形にすればいいか分からない
  • マニュアルはあるけれど専門用語だらけで、結局は個別に教えることになってしまう

専門知識の教材化は、多くの企業が抱える共通の悩みです。
特に、長年の経験で培われた「属人化した知識」ほど、教材にすることが難しいと感じられています。
しかし、こうした「教材化が難しい」と思われている知識こそ、各社にとって最も重要な資産が眠っている可能性があります。

この記事では、当社の編集部部長・成田へのインタビューをもとに、編集プロダクションならではの視点から、専門知識を新人にも理解できる教材に変えるための方法を解説します。

編集プロダクションだからできる教材制作

依頼先によって異なる得意領域

教材制作を依頼する際、「どこに頼めばいいのか分からない」という声をよく聞きます。実は、コンサル会社、デザイン・システム会社、編集プロダクションでは、それぞれ得意とする領域が大きく異なります。

コンサル会社は、何をやればいいか分からない、担当者もいない、材料があるかないかも分からないような状況で力を発揮します。プロジェクトマネジメントの観点から教育ツールを誰がどう作っていくか役割分担を決めるのが得意です。

一方、システム会社やデザイン会社は、やることが明確で材料が完全に揃っている場合に適しています。技術的な実装に強みを持っています。

編集プロダクションが力を発揮するのは、ある程度の材料はあるけれど、そこからどうすればいいか分からない場合です。材料の編集・加工や、足りない部分を取材で補うことができます。やりたいことは決まっているけれど材料がない場合でも、ヒアリングして方向性を一緒に詰めながら、取材で材料を作成します。

依頼先によって異なる得意領域のイメージ画像
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依頼先適している状況強み
コンサル会社0からのスタートプロジェクトマネジメント面での提案
デザイン・
システム会社
材料が完全に揃っている技術的な実装
編集プロダクションある程度材料がある材料の編集・加工・取材での補完
教材制作の依頼先による違い

多様な媒体制作で培ったノウハウの活用

未知のジャンルでも、書籍制作で培った目次作りのノウハウが活きます。全体を大きく分割し、細分化された項目を作っていく。網羅性を持たせつつ、重要なところを発見して構成に組み込んでいくアプローチは、教材制作にも通じます。
アーク・コミュニケーションズでは、インタビューだけでなく、ワークショップの運営支援など多数の実績があります。関係者を集めて意見を吸い上げながら構成案を作っていくことも可能です。

また、多くの企業が悩む監修者との関係構築も、編集プロダクションの得意分野です。
一言一句チェックしてもらうのか、大まかな確認だけでいいのか。監修の程度のバランスを取ることは意外に難しいものです。
監修者の意図とクライアント側の意図をすり合わせるクッション役として、編集者の経験が生きてきます。

教材化が難しいと感じる本当の理由

「物足りない教材」に共通する課題

企業からの相談で意外に多いのが、「一度教材を作ったんですが、何か物足りなくて……」というケースです。これは教材に限らず、ウェブ記事などでも同じことが起こります。一度作ったけれど、印刷するまでに至らなかった、ウェブで発信するまでに至らなかった。そんな経験をお持ちの方も多いのではないでしょうか。

こうした「物足りない」教材には、いくつかの共通点があります。

構造化の問題
構成案の部分で改善の余地があることが多く見られます。導入の章を作ったり、全体の軸を作った上で肉付けしていくなど、アプローチを変えるだけで、ぐっと良くなるケースは珍しくありません。

作り手と学習者の視点のズレ
教材を作る側は、「これを入れたい」「あれを入れたい」という思いがあります。しかし、教育を受ける側からすると、「この内容を理解するには何を知っておく必要があるのか」「全体の中でどこに位置する知識なのか」を知りたい欲求があります。

使っているコンテンツや内容は同じでも、見せる順番を変えたり、足りない情報を補ったりするだけで、教育を受ける側にとって輪郭がはっきりした教材になることがあります。

属人化した知識こそが重要な資産
「属人化した知識」や「専門用語だらけのマニュアル」と聞くと、多くの担当者が頭を抱えます。属人化しすぎていると、確かにアンタッチャブルになってしまいます。「この人の話は一旦置いといて、分かりやすいところからやっていこう」となる気持ちも理解できます。

しかし、属人化しすぎていて教材化しにくい部分にこそ、各社の一番重要な材料が入っている可能性が高いのです。敬遠するのではなく、敬意を払って積極的に取り入れていく必要があります。

新人が理解できない教材の落とし穴

スタート地点の共有不足

実際に作った教材を新人が理解できなかった。こうした失敗には、はっきりとした共通点があります。
一つは、スタート地点の共有が行われていないことです。どこまで知識があるのか、何が分かっているのか、という前提が共有されていないと、キャリアの濃淡によって理解度に大きな差が出てしまいます。

例えば、ある程度経験のある中途採用者と、まったくの新卒では、同じ内容でも理解度が全く異なります。両方に通じるような教材を作らないと、抜けや漏れが発生しやすくなります。

見落としがちな網羅性の問題

もう一つの共通点が「網羅性の弱さ」です。
例えば、編集の現場で「最適な画像を集める」という指示があったとします。画像の解像度とは何か、PNG、JPEG、GIFといった形式によって何が違うのか、印刷に適しているのはどれなのか。こういった基本的な知識が、実は分かっているようで分かっていないことがあります。

「その辺は言わなくても分かるでしょう」と省略してしまうと、学習者は「何メガ以上あればいいんですね」というレベルの理解で終わってしまい、一番重要なところが理解されないまま終わってしまう可能性があります。

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失敗の原因具体的な問題対策
スタート地点の不明確さ前提知識のレベル共有がされてない学習者の知識レベルを明確に設定
網羅性の弱さ当たり前と思われる知識が省略されている基本的な知識も丁寧に説明
教材制作で失敗する理由

ベテランの暗黙知を引き出す取材の技術

趣旨を共有することの重要性

教材制作で最も難しいのが、ベテラン社員や専門家から暗黙知を引き出すことです。
聞きたいことをリストアップするのは第一歩ですが、それだけでは不十分です。その聞きたいことの裏にある理由や、話していただくことがどう学習者に伝わるかまで説明しておくと、話す側もどんな話をすればいいかが理解しやすくなります。
これは文書化する場合もあれば、その場で軽く説明して感触をつかんでもらう場合もあります。いずれにしても、趣旨を共有することで、取材の質が大きく向上します。

「言語化できない」への対処法

取材をしていると、「それは言葉では説明できない」と言われることがあります。具体的な動作やプロセスの順番など、言葉で伝えにくいものは確かに存在します。

そんな時は、2つのアプローチが有効です。

(1)図による可視化
一旦図に起こして「こういうことですか」と確認しながら進めていきます。編集者側から図版を提案して確認してもらう方法は、最終的にも図でアウトプットすることになるため、効率的です。

(2)動画による記録
実際の作業を動画に撮影させてもらう方法もあります。言葉ではない方が伝わるものは、無理に言語化せず、そのまま記録する方が効果的です。

この2つのアプローチを使い分けることで、言語化できないと思われていた知識も、しっかりと教材に落とし込むことができます。
さらに、一人の専門家だけでは偏りが出ることもあるため、別の方にも話を聞いて複合的に分析を行うことも大切です。仮説を立ててぶつけてみることで、より深い知見を引き出すことが可能になります。

既存マニュアルを活かす分析の視点

編集者が見ているポイント

すでにある程度のマニュアルがある場合、編集者は全体像と細部の両面から分析を行います。

編集者が既存マニュアルを分析する視点のイメージ


全体像のチェック
その行為の道筋や、他の行為にも共通する原理を見ていきます。全体像として伝え方が適切かどうか、世の中の常識的な伝え方と比べて理解できるような形になっているかを確認します。

濃淡のバランス確認
ある部分だけ非常に濃く書かれているのに、ある部分はさらっと流されている。こうした内容の濃淡のバランスも重要なチェックポイントです。読み進める中で「あれ、こんなもんでいいのかな?」と感じる箇所があれば、確認していきます。

読者目線を忘れないチェック

編集者は、取材相手に敬意を払うのと同時に、読者の観点を常に持ちます。

  • わかりやすいか
  • 言葉遣いが適切か(違和感なく読めるか)
  • 矛盾がないか(つっこみどころがないか)

こうした作り手の都合ではない、読者目線でのチェックが、教材の質を大きく左右します。

読者目線を忘れないチェックのイメージ画像
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実践的な教材制作のプロセス

企画段階からの戦略的アプローチ

教材制作で重要なのは、技術的な設計よりも先に、コンテンツの企画を練ることです。「どんな情報を、どう伝えるか」という根本的な問いに答えることが、成功する教材の第一歩となります。

教育教材のプロセスの図

編集者は、物事を整理してアウトプットの全体像を考える企画段階と、読みやすさや誤字脱字をチェックする最終段階の両方で重要な役割を果たします。いちばん大事と思える点について提案しコンセンサスを得ること、そして常に読者の観点を持ち続けることが求められます。

アーク・コミュニケーションズの教材制作サポート

アーク・コミュニケーションズでは、企業の教材制作を企画段階からサポートしています。

主なサポート内容

  • 未知のジャンルでも対応できる構成案の提案
  • インタビューやワークショップを通じた材料の収集
  • 監修者との適切なコミュニケーション
  • 既存マニュアルの分析と再構築
  • 読者目線での最終チェック

ヒアリングして方向性を一緒に詰め、取材で材料を作成できることが編集プロダクションの強みです。

まとめ

属人化した専門知識を新人が理解できる教材に変えるには、単に情報を整理するだけでは不十分です。

教材制作を成功させるポイント

  • 学習者のスタート地点を明確にする
  • 網羅性を持たせながら重要なポイントを際立たせる
  • ベテランの暗黙知を丁寧に引き出す
  • 既存の材料を読者目線で再構築する

教材のもととなる経験や蓄積は非常に貴重であり、敬意を十分払って扱うべきです。こうした作業には、編集経験に裏打ちされた取材の技術と、読者に寄り添う姿勢が欠かせません。

「教材化が難しい」と敬遠されがちな属人化した知識にこそ、各社にとって最も重要な資産が眠っています。編集プロダクションの知見を活用することで、そうした貴重な知識を効果的な教育資産に変えることができます。

よくある質問

Q1. 教材制作にはどのくらいの期間がかかりますか?

A. プロジェクトの規模や内容によって異なりますが、企画段階から納品まで通常3〜6ヶ月程度をいただいています。特にベテラン社員へのインタビューや既存マニュアルの分析を含む場合は、より丁寧に時間をかけて制作します。

Q2. すでにあるマニュアルの改善だけでもお願いできますか?

A. もちろんです。既存マニュアルの分析と再構築も得意としています。全体の構成を見直したり、不足している情報を補ったり、読みやすさを向上させたりといった形でのサポートが可能です。

Q3. 取材はどのような形で行われますか?

A. 対面でのインタビューのほか、オンラインでの取材、ワークショップ形式での意見収集など、プロジェクトに応じて最適な方法を提案します。必要に応じて動画撮影なども組み合わせます。

Q4. 監修者の選定から依頼してもらえますか?

A. はい、可能です。教材の内容に応じて適切な監修者の選定から、交渉、原稿確認時のコミュニケーションまで、一貫してサポートいたします。

Q5. 費用の目安を教えてください

A. プロジェクトの規模や内容によって大きく変わりますので、まずはご相談ください。ご予算に応じて最適なプランをご提案いたします。

アーク・コミュニケーションズでは、企業の教材制作を企画段階からサポートしています。属人化した知識の教材化、既存マニュアルの改善、新規教材の制作など、お気軽にご相談ください。

この記事について

監修者プロフィール
成田 潔|アーク・コミュニケーションズ 取締役

横浜市立大学卒業後、アーク・コミュニケーションズに入社。雑誌や書籍、Webコンテンツの企画・編集に多数携わる。携帯ゲーム機やタブレット向けのコンテンツ開発ほか、クラウドファンディングを使った本づくりや、大規模展示会のサポートなど、編集プロダクションの裾野を広げることに尽力。2015年より取締役。

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