学生の本音から見えた採用サイトコンテンツの課題と解決策

[公開:2025年9月4日]

学生の本音から見えた採用サイトコンテンツの課題と解決策をテーマにした記事のキービジュアル。若い男性2人がノートパソコンを見ながら議論している様子で、採用や就職活動に関連するイメージを表現している。

はじめに

新卒採用サイトのコンテンツは、企業と学生をつなぐ重要な接点です。

アーク・コミュニケーションズでは、これまで数多くの企業の採用コンテンツ制作に関わってきました。その中で見えてきたのは、従来のアプローチでは学生の心に届かないという現実です。特に学生を対象とした調査では、「立派な社員のインタビューばかりが並び、現実味がない」という不満の声も聞こえてきました。

この記事では、当社の企画開発部・佐藤友彦部長へのインタビューをもとに、編集プロダクションとして培ってきた経験から見えた、学生や転職希望者の心に響く採用サイトコンテンツのつくり方や思想について解説します。

現在の採用サイトの課題

学生や転職希望者が抱く採用サイトへの違和感

多くの企業が制作する採用サイトには、共通する課題があります。それは、優秀な社員ばかり、完璧すぎる人たちばかりを取り上げたコンテンツが並んでしまい、「共感しにくい」「現実味がない」サイトになってしまっていることです。
弊社が行った、就活中の学生へのインタビューで明らかになったのは、以下のような率直な意見でした。

  学生の本音   具体的な声
社員紹介の偏り「社員座談会やインタビューに登場するのは、いつも立派な経歴の人ばかりで自分ごとにしにくい」
共感の難しさ「キャリアの成功談は一見参考になりそうだけど、しょせんロールモデルだからと自分自身がしらけて見てしまう」
情報の不透明さ「いいことばかり書いてあるのでは…と勘ぐってしまうので、内容自体をうたがってしまう」
採用サイトコンテンツの課題を示す図。偏った社員紹介は共感しにくく、共感の欠如は学生に疎外感を与え、情報の省略はコンテンツが疑いの目で見られる原因になることを道路標識風に解説している。

採用サイトの目的

こうした声は、企業側が「良く見せよう」とする意識の表れでもあるのですが、その結果として学生や転職希望者との間に距離が生まれています。この理由としては、採用サイトの目的の矛盾ということが挙げられます。

採用サイトの目的は大きく2つあります。
ひとつは「母集団形成」。よい人材をできるだけ多く集めるということが大切なので、どうしても企業から発信するメッセージは「いいこと」になってしまいます。

もうひとつの目的は「採用後のミスマッチを減らすこと」。せっかく採用したのにすぐに離職されてしまっては意味がありません。できるだけ正しく理解して入社してもらうことが重要なので「率直なコミュニケーション」が求められます。

このように「いいこと」と「率直さ」のバランスが採用サイトでは、とても難しいことがわかります。

ユーザーが本当に知りたい情報を考える

社内制度の内容+運用状況

では、どのような情報をどのように企業は伝えていけばいいのでしょうか。よくよく言われることではありますが、20代から30代の若い転職希望者は、キャリアパスと同じかそれ以上に、ライフプランを重視しています。

学生や転職希望者が知りたい情報で優先度が高いもの

採用サイトや企業紹介で伝えるべきポイントを示す図。ワークライフバランス(残業時間・有給取得率・リモートワーク制度)、福利厚生の実際(具体的な活用例や利用しやすさ)、社員の日常(休日の過ごし方や職場の雰囲気)、ライフイベント対応(結婚・育児・介護との両立支援)を4つのアイコンで表現している。
   情報カテゴリ具体的な声
ワークライフバランス残業時間、有給取得率、リモートワーク制度
福利厚生の実際制度の具体的な活用例、利用しやすさ
社員の日常休日の過ごし方、職場の雰囲気
ライフイベント対応結婚、育児、介護との両立支援

今さら…という気もしますが、個人のライフプランをどのように企業が支援するのか、この点を訴求しつづけることはやっぱり大切です。
単なる制度説明ではなく、実際に制度を活用している社員の生の声が必要です。「制度があること」  「制度がどのように運用されているか(実態)」この両面から発信するだけでなく、会社のスタンスだけでなく、雰囲気も伝わります。

「普通の社員の声」への需要

サクセスストーリーも大切ですが、学生はもっと身近な存在の話も聞きたがっています。入社3年目の悩みや、失敗から学んだ経験、日常的な業務の実態など、リアルな情報への関心が高いようです。これらもうまく訴求することが大切です。

課題から考えるコンテンツ戦略

お互いに「ある程度」正直なコミュニケーション

通常、私たちがメディアやコンテンツを制作するときはターゲットを定めてから、そこに刺さるようにつくります。
ミスマッチが起きる最大の原因は、「企業と学生のどちらかが、あるいは両方がウソをついている点にある」と分析します。企業はよい面を強調したくなりますし、学生は面接で当たり障りのない回答に走ります。
この状況を変えるには、採用サイトから「ある程度」正直なコミュニケーションを始める必要があります。

至らないところも上手に伝え、「対策としてこういうことを行っている」などを同時に伝えることで、むしろ信頼性を高めることができます。

多角的な情報提供

ひとつの質問に対して複数の社員が答える形式は、企業の多様性を示すのに適しています。同じ質問でも、部署や経験年数によって回答が変わることで、読み手は自分に近い立場の人を見つけやすくなります。

新しいコンテンツアプローチの提案

日常に密着したコンテンツ

「社食の72時間ドキュメンタリー」のような、日常に密着したコンテンツは読み手の関心を集めます。華やかなプロジェクトの話だけでなく、社員の何気ない日常を切り取ることで、職場の雰囲気が伝わりやすくなります。

効果的な日常コンテンツ例

コンテンツタイプ具体例効果
ドキュメンタリー形式社食24時、新入社員の1日リアルな職場環境が伝わる
社員の休日紹介趣味活動、家族との時間ワークライフバランスを実感
失敗談・成長談プロジェクトの苦労、学び親近感と成長イメージ
チーム風景会議の様子、雑談シーン職場の人間関係が見える

検索性を重視した構成

Webの場合は長いインタビュー記事よりも、見出しを多用し、必要な情報にすぐアクセスできる構成が求められています。アンケート形式で情報を整理し、読み手が知りたい部分だけを効率的に読めるような工夫が大切です。

口コミやAIの活用

第三者の視点や、AIを活用した客観的な分析を取り入れることで、企業が発信する情報の信頼性を高めることも可能です。

採用サイトの基本要素

もちろん、新しいアプローチを試す一方で、基本的な情報も確実に提供する必要があります。

必須コンテンツチェックリスト

学生が採用サイトで知りたい情報を5つに整理した図。応募関連(応募要項・方法・動線設計)、企業情報(会社概要・事業内容)、業務内容(職種別の詳細や1日の流れ)、待遇(給与や福利厚生を具体的な数字で)、技術面(スマホ対応・読み込み速度・ユーザビリティ重視)がアイコン付きで示されている。
カテゴリ必須項目注意点
応募関連応募要項、応募方法分かりやすい動線設計
企業情報会社概要、事業内容簡潔で具体的に
業務内容職種別の詳細業務1日の流れも含める
待遇給与、福利厚生具体的な数字で
技術面スマホ対応、読み込み速度ユーザビリティ重視

採用コンテンツ制作を成功させるポイント

段階別アプローチ

  段階   重要ポイント具体的アクション
1. 企画段階技術より戦略を優先どんな情報を、どう伝えるかを決定
2. 調査段階学生・転職希望者の本音収集学生・転職希望者へのインタビュー実施
3. 制作段階企業らしさの表現型にとらわれないオリジナルコンテンツの検討、インタビュイーとしての社員の選抜
4. 検証段階効果測定と改善応募状況、離職率の分析

企画段階からの戦略的思考

採用サイト制作では、ウェブサイトの技術的な設計よりも先に、コンテンツの企画を練ることが重要です。「どんな情報を、どう伝えるか」という根本的な問いに答えることが、成功する採用サイトの第一歩となります。

ユーザーインタビューの重要性

実際に学生や転職希望者にインタビューを行うことで、企業が発信したい情報と読み手が知りたい情報のギャップが明確になります。この工程を経ることで、独りよがりではないコンテンツ制作が可能になります。

企業らしさを活かしたオリジナルコンテンツ

判型は本の大きさです。会社案内だとおそらくA4が多いのではないかと思います。
従来のリクルートサイトの型にとらわれず、企業の個性や求職者のニーズに応じたオリジナルのコンテンツを検討することが大切です。例えば、海外人材向けの英語座談会や、特定の職種に特化した深掘りコンテンツなど、企業の状況に応じて最適な形を模索します。

採用活動で重視すべきポイントを示す図。中央にパズルのピースのアイコンがあり、周囲に「特定の職種」「企業の個性」「求職者のニーズ」「海外人材」の4項目が配置され、採用ターゲットや訴求内容を表している。

まとめ

採用サイトのコンテンツは、単なる情報提供の場ではなく、企業と応募者が互いを判断する“最初の面接”の場です。
企業と求職者が互いを理解し合うためのコミュニケーションの場です。発信は一方的ではあるのですが、コンテンツを通してうまくコミュニケーションをとり、エントリーしてもらうのが狙いです。

そのためには、見栄えの良い情報だけでなく、リアルな情報を提供することも大切です。普通の社員の日常や、企業の課題についてもうまく語ることで、真のマッチングに近づくのだと思います。

採用サイトのコンテンツ制作では、学生や転職希望者の視点に立ち、本当に知りたがっている情報を考えることから始めてみてください。

よくある質問

Q1. 採用サイトのコンテンツ制作にはどのくらいの期間がかかりますか?

A. 企画の規模や内容によって異なりますが、企画段階から公開まで通常3〜6ヶ月程度をいただいています。特に求職者へのインタビューや社員の取材を含む場合は、より時間をかけて丁寧に制作いたします。

Q2. 社員のネガティブな意見も掲載して、本当に採用に悪影響はないのでしょうか?

A. むしろ正直な情報を提供することで、入社後のミスマッチが減り、長期的には離職率の改善につながります。ただし、エンゲージメントの高い社員に意見してもらったほうが、前向きな課題の指摘になるでしょう。課題を隠すのではなく、それにどう取り組んでいるかを伝えることで、企業の誠実さが伝わり信頼度が向上します。

Q3. 「普通の社員」を取り上げると、企業のブランディングに影響しませんか?

A. エース社員だけでなく、様々な立場の社員を紹介することで、企業の多様性や包容力をアピールできます。求職者は自分と似た境遇の社員の話により共感を持ちやすく、結果的にミスマッチの可能性も下がると思います。

Q4. 採用サイトのコンテンツ効果はどのように測定すればよいですか?

A. 応募数や応募者の質の変化、面接での反応、入社後の定着率などを総合的に分析します。また、サイトのアクセス解析やコンテンツごとの滞在時間なども参考にして、定期的に改善を行うことが重要です。

Q5. 制作費用はどの程度を想定しておけばよいでしょうか?

A. コンテンツの種類や量、取材の規模によって大きく変わります。基本的な社員インタビューから本格的なドキュメンタリー形式まで、ご予算とご要望に応じて最適なプランをご提案いたします。まずはお気軽にご相談ください。

アーク・コミュニケーションズでは、採用関連のコンテツ制作を企画段階からサポートしています。インタビュー、構成設計から制作まで、経験豊富なチームがお客様の思いを形にします。まずはお気軽にご相談ください。

この記事について

監修者プロフィール
佐藤友彦|アーク・コミュニケーションズ 企画開発部 部長

編集者歴25年。大手出版社で雑誌編集に8年間従事し、アーク・コミュニケーションズに入社。
現在まで、書籍・雑誌編集をはじめ、企業の広報誌やインナーツールの編集など、幅広いメディア編集に携わる。
近年は、一般企業のオウンドメディアだけではなく、プレスリリースやキャッチコピー、SNSなど発信内容を編集する「編集コンサルタント」としても活躍の幅を広げる。
また、メディア運営などを通じ、定量的な分析からの記事改善も習熟している。

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