会社案内リニューアルで失敗しないために編集者が語る本当に大切なこと

[公開:2025年7月8日]

「会社案内リニューアルで失敗しないために編集者が語る本当に大切なこと」キービジュアル

アーク・コミュニケーションズでは、「会社案内をリニューアルしたい」というご相談をいただくことがあります。

そこで今回は、当社企画開発部の佐藤部長にインタビューを行い、制作現場で培われた実践的なノウハウをもとに、制作会社の選定から実際の進め方まで、編集者としての専門的視点から詳しく解説したいと思います。

会社案内のリニューアルを検討している広報担当の皆さんに、私たちの経験から「本当に大切なこと」をお話しします。

なぜリニューアルするのかを最初に考える

リニューアルしたい!というときは必ず理由がある

「なぜリニューアルしたいのか」をハッキリさせること。じつは、これが一番大切なことです。会社案内をリニューアルするということは、少なくとも会社の中で何か変化があったのだと思います。どんな変化があったのか、まずそれを棚卸することから始めましょう。

  • 伝える内容が変わった(新事業の開始、事業の統廃合など)
  • 伝えたいメッセージが変わった(ミッション・ビジョン・バリューの見直しなど)
  • 伝え方を変えたい(ターゲットの変更など)
リニューアルしたい!というときは必ず理由があるのイメージ図

佐藤部長
リニューアルの理由があれば、関係者が迷わずプロジェクトを進めることができ、デザインやテキストなどの良し悪しの判断基準も明確になります。結果的に、目的を叶えるものができあがります。

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ミッション・ビジョン・バリューの見直しがあった

実際に、ミッション・ビジョン・バリュー(MVV)の見直しをきっかけに会社案内をリニューアルされるクライアントは多いです。また、このタイミングでは、会社案内だけではなく、コーポレートサイトも同時にリニューアルすることをおすすめしています。

佐藤部長
MVVが変わるということは、会社が社会に発信したいメッセージが大きく変わるということ。
だからこそ、このタイミングでの一斉リニューアルが最も効果的なんです。
少なくともコーポレートサイトのメインビジュアルを変更したり、新たなページを加えたりして、会社案内と同様のメッセージを伝えることは必要です。

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BtoBだけでなくBtoCのメッセージを発信したい

最近よくあるのが、BtoB企業が自社価値向上のため「そろそろBtoCも意識しないと」と思い立ってリニューアルをするケースです。

これは時代の流れでもあるんですが、自分たちの仕事が社会にどう役立っているかを魅力的に伝えることが求められているんです。ここは編集やデザインの力が本当に活かされる部分だと思います。

佐藤部長
BtoC面での訴求は自社価値向上のほか、採用面でのメリットが大きいです。
最近の学生さんたちは「この会社で働くことで、社会にどんな貢献ができるのか」をとても重視します。
また、会社案内のリニューアルによって、社員のエンゲージメント向上に寄与することも期待できます。

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社員のエンゲージメント向上につなげたい

会社案内って、実はインナーの人たちのロイヤリティやエンゲージメント向上にもつながるんです。
「あ、俺たちの会社ってこういう会社なんだ」という実感は、実際に手に取れる会社案内の方が得やすいと思います。だから、社員を巻き込んで作ることができれば、さらに意味のあるリニューアルになります。

佐藤部長
完成した会社案内を社員の皆さんに配ると、とても喜んでもらえるんです。
「自分たちの会社が素敵に紹介されている」
「家族に自分の仕事を説明しやすくなった」
という声もよく聞かれます。こういう場合は、社員が参加できるような企画も含めるようにします。

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編集者が考える会社案内の設計

読者はあえて絞り切らない

通常、私たちがメディアやコンテンツを制作するときはターゲットを定めてから、そこに刺さるようにつくります。
しかし、会社案内はやや特殊で、読者は多岐にわたります。
株主、採用応募者、新規顧客、既存取引先…ステークホルダーが多すぎて「読者を絞り切れない」と悩む広報担当者の方もいるのではないでしょうか。
ある程度、読者対象を挙げたら、絞り切らないというのはひとつの方法です。

佐藤部長
会社案内は名刺のようなものなので、「読者を絞り切れない」という声が多いのも納得です。
だから、読者はあえて絞り切らない。そうしてターゲットを広くとる分、会社案内の役割はシンプルにするのがおすすめです。

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会社案内の役割をシンプルにする

私たちが提案するのは、会社案内とコーポレートサイトの二軸で考えることです。
会社案内で情報を網羅することはできませんし、取引やエントリーなど何かを決定するための詳しい情報を取りたい人は、結局コーポレートサイトを見に行きます。

だから会社案内は割り切った考えをするのもひとつの手です。

  • コーポレートサイトへのブリッジとして機能させる
  • 信頼感の醸成に重点を置く(ターゲットはさまざま)

この2つの目的に絞って考えると、会社案内に掲載する要素がぐっと絞られ、明確になります。

会社案内の役割をシンプルにするのイメージ図

佐藤部長
つまり、会社案内は「詳しくはWebで」の入り口として位置づけるということですね。
この割り切りができると、構成も内容も情報粒度も整理できますし、ブランディングのための思い切った編集も可能になります。

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16ページ以下にして「最初から」読まれやすく

制作会社によっていろいろな考え方がありますが、アーク・コミュニケーションズでは16ページ以下が会社案内の目安だと考えています。

16ページ以下であれば、手に取った読者が「1ページ目から順番にページをめくって読む」ことが期待できます。すると、ストーリーを会社案内に持ち込むことができます。つまり、会社案内は1ページから16ページまでのストーリーのつくりこみがとても大事になってきます。

佐藤部長
たとえば24ページを超えると読者が途中で疲れてしまったり、拾い読みをされてしまう冊子になる可能性があります。16ページは「最初から順番を追って読んでもらえる限界値」だと考えています。

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会社案内の必須コンテンツを考える

会社案内でいわゆる必須といわれるコンテンツは

  1. 会社概要
  2. ミッション・ビジョン・バリュー
  3. 代表メッセージ
  4. IR情報
  5. 事業説明

こうしたものが挙げられます。
会社概要などはそのまま掲載するべきコンテンツですが、そのほかのコンテンツは編集を加えて、ストーリーにのせることもできます。
編集を加えるか、あまり調理せずにそのまま出すかはコンテンツごとに考えるほうがいいと思います。

担当者の方に準備していただきたいこと

リニューアルの理由を整理する

冒頭でも書いていますが、お打ち合わせで一番最初にする質問は「なぜリニューアルを考えているんですか?」という質問です。
ここでの理由はある程度整理しておくと、以降の打ち合わせも制作もスムーズです。

「なんとなく」好きなデザインを準備する

「こんな手ざわりのものにしたい」
「こういう雰囲気が好き」

というデザインの見本は、1つ2つでいいので準備しておいていただきたいです。

「なんとなく」で選んでいただいてよくて、別に上手なロジックがなくても構いません。打ち合わせを通して、なぜそのデザインが好きなのかをいっしょに言語化していきます。ここで詰めたことは、担当者の方が上申する際の準備にもつながります。

佐藤部長
「なんとなく好き」でも全然OKです。むしろそういう感覚的な部分を大切にしてください。話すうちに自社の特徴、「アットホームなところ」「成長できるところ」「グローバルなところ」など、そのデザインを求める理由が見えてきます。私たちがその理由をいっしょに見つけて、論理的に説明できるようなお手伝いをします。

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どんな判型がいいか考えてみる

判型は本の大きさです。会社案内だとおそらくA4が多いのではないかと思います。
ただ、本は「利用シーン」によって、大きさを変えています。たとえば家で座って読むのであれば、多少大きくて重い本でも問題ありません。一方、外で持ち歩きたい本は小さくて軽いほうが便利です。

「今まではA4でつくっていたから、今回もそれで」という考えもありますが、改めて利用シーンを考えてみると、判型にも改良の予知が残っているかもしれません。

佐藤部長
「今まではこうだったから」と決めつけずに、利用シーンなどをイメージしながら考えてみてください。最終的に今までと同じ結論になっても、考えるプロセスがあることでより納得感が生まれると思います。

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見積もりは制作会社と会話をしながらチェックする

適正な見積もりかどうかを判断するため、業界の相場感を把握しておきましょう。ただし、あくまで業界の一般的な基準であり、制作会社によって料金体系や価格帯は異なるのでご注意ください。

日本編集制作協会の基準(2025年2月時点)では、16ページ程度の会社案内制作は概ね150万円からが目安とされています(印刷費、撮影費、取材原稿料などは除く)。

つまり、撮影や取材を行う場合は、もう少し高めの見積もりになります。私たちの経験では、企画段階から丁寧に詰めていったり、撮影の規模、デザインのこだわりによっても見積もりは変動すると感じています。制作会社と業務範囲を確認しながら、見積もりのチェックをしましょう。

見積もりは制作会社と会話をしながらチェックするのイメージ図

佐藤部長
単純に見積もり金額だけで比較しても、良し悪しを判断することはできません。
たとえばページ単価が10万円くらいだと、企画やコンセプトづくりの工程、撮影や取材などが省かれている可能性があるので、見積もりの「項目」を制作会社と丁寧に詰めていくのがおすすめです。

佐藤部長イメージイラスト

リニューアルの構成例(16ページ版)

仮にですが、16ページの構成を考えるとしたら、

  • 1ページ目:表紙
  • 2-3ページ目:イントロダクション
  • 4-9ページ目:事業紹介(3見開き)
  • 10-11ページ目:社員インタビュー
  • 12-13ページ目:社長メッセージ
  • 14-15ページ目:ミッション・ビジョン・バリュー/IR情報
  • 16ページ目:拠点紹介、業績、沿革、会社概要

特にイントロと事業紹介の流れをどうつくるかが、その会社らしさを表現する重要なポイントになります。また、社長メッセージは後半に回すなど、まずは読者の興味関心を惹くコンテンツを序盤に用意することも大切な視点です。

佐藤部長
この構成はあくまで一例です。
コンセプトなどによっては、社員インタビューなどを交えながら大きなひとつのストーリーにするかもしれません。伝えたいメッセージを念頭に、構成を考えるのがおすすめです。

佐藤部長イメージイラスト

編集プロダクションとしてのご提案

編集プロダクションとしてのご提案のイメージ図

MVV策定から関わることもあります

本来、ミッション・ビジョン・バリューは企業さん自身で考えるものです。でも私たちがコピーライターとして入って、たたき台を作ることもあります。
それをテーブルの真ん中に置いて、みんなでブラッシュアップしていく。そんなお手伝いの仕方もできます。

佐藤部長
MVVって、社内だけで考えていると煮詰まってしまうことも多いんです。外部の視点を入れることで、より客観的で魅力的な表現に仕上がることがあります。

佐藤部長イメージイラスト

上申の準備からサポートします

担当者さんが「なぜこのデザインにしたいのか」を言語化するお手伝いから始めることが多いです。決裁者への説明がスムーズにいくよう、最初の段階から編集者、デザイナー、アートディレクターがチームで関わっていきます。

全体を貫くコンセプトを大切にします

16ページで読んでもらうには、何か1つ全体を貫くデザインコンセプトや編集コンセプトが必要です。
例えば「会社の中を覗いていく」というコンセプトなら、顕微鏡や望遠鏡をモチーフにしたデザイン展開も考えられます。あるひとりの社員になりきって社内を見ていくという設定もあるかもしれません。そんな「新しい金型」をいっしょにつくっていけたらと思います。

佐藤部長
コンセプトがあると、写真の撮り方、イラストの使い方、色使いまで、すべてに一貫性が生まれます。結果的に印象に残る、魅力的な会社案内になるんです。

佐藤部長イメージイラスト

会社案内は会社の未来を描くもの

会社案内のリニューアルを、単なるデザインの刷新にしてしまうのはもったいないです!
なぜ今リニューアルするのか何を変えたいのかを明確にして、コーポレートサイトとの役割分担を考えながら、読者に「この会社、信頼できそうだな」と思ってもらえるストーリーを作る。

それが本当のリニューアルだと思います。

もしリニューアルでお悩みのことがあれば、ぜひ一度ご相談ください。
メッセージの整理から構成、デザイン、制作まで、一貫してサポートさせていただきます。

佐藤部長
会社案内は「今の会社」を表すだけでなく、「なりたい姿」を表現するツールでもあります。
ぜひ未来への想いも込めて、いっしょに素敵な会社案内を作りましょう。

佐藤部長イメージイラスト

よくある質問

Q1. 会社案内のリニューアルはどのくらいの頻度で行うべきですか?

A. 明確な年数の決まりはありませんが、私たちの経験では3〜5年に一度は見直しをおすすめしています。ただし、ミッション・ビジョン・バリューの変更や事業内容の大幅な変更があった場合は、期間に関係なくリニューアルを検討した方がよいでしょう。

Q2. リニューアルの検討から完成まで、どのくらいの期間が必要ですか?

A. 規模や内容によりますが、16ページ程度の会社案内で約3〜4ヶ月が目安です。企画・構成の検討に1ヶ月、デザイン・制作に2ヶ月、校正・印刷に1ヶ月程度を見込んでおくとよいでしょう。MVVの策定から始める場合は、さらに2~3ヶ月プラスとお考えください。

Q3. ページ数はどのように決めればよいですか?

A. 16ページ以下を基本として、伝えたい内容に応じて調整することをおすすめします。8ページでは情報が不足しがちで、24ページを超えると意図しているように読者が読んでくれない可能性があります。16ページ以下なら「頭から最後まで読んでもらえる」適切な分量だと考えています。

Q4. 費用を抑えてリニューアルする方法はありますか?

A. 既存の写真やテキストを活用する、ページ数を調整する、印刷部数を見直すなどの方法があります。ただし、企画やデザインの部分で安易にコストカットすると、結果的に「効果のない会社案内」になってしまうリスクがあります。優先順位を明確にして、メリハリをつけることが重要です。

Q5. 制作会社はどのような基準で選べばよいですか?

A. 提案力、コミュニケーション能力などの編集能力、実績を重視してください。特に「なぜその構成やデザインを提案するのか」を論理的に説明できる制作会社を選ぶことが大切です。また、MVVの策定段階から関わってもらえるかどうかも重要なポイントです。

アーク・コミュニケーションズでは、会社案内のリニューアルを企画段階からサポートしています。MVVの言語化、コンセプト策定、構成設計から制作まで、経験豊富なチームがお客様の思いを形にします。まずはお気軽にご相談ください。

この記事について

監修者プロフィール
佐藤友彦|アーク・コミュニケーションズ 企画開発部 部長

編集者歴25年。大手出版社で雑誌編集に8年間従事し、アーク・コミュニケーションズに入社。
現在まで、書籍・雑誌編集をはじめ、企業の広報誌やインナーツールの編集など、幅広いメディア編集に携わる。
近年は、一般企業のオウンドメディアだけではなく、プレスリリースやキャッチコピー、SNSなど発信内容を編集する「編集コンサルタント」としても活躍の幅を広げる。
また、メディア運営などを通じ、定量的な分析からの記事改善も習熟している。

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