[みそソムリエ]味噌の魅力を東京の下町商店街から世界&未来へ発信!

食品関連業界以外にお料理好きな主婦や会社員にもどんどん広がりを見せる食関連の民間資格。今回は味噌のプロフェッショナルであるみそソムリエの夏川雄介さんにお話を伺いました。東京・下町の商店街から日本の伝統的な「味噌」の魅力を広めていく夏川さんの笑顔には「味噌」と同じ癒し効果がありました。(公開:2015年8月10日/更新:2022年2月2日)

みそソムリエとは、約千年の歴史がある日本特有の伝統食品「味噌」を深く愛し、理解と知識を深め、国内外に味噌文化を広める伝道者。また、味噌造りや味噌を使った料理などを後世に伝えていく伝承者です。
[みそソムリエ]の呼称は[みそソムリエ認定協会]の資格講座、認定試験を受け、認定された者のみに与えられる名称です。
[みそソムリエ認定協会]([みそソムリエ]の呼称を認定する唯一の公式機関)

東京の下町商店街を支える笑顔

東京の台東区鳥越一丁目は東京大空襲で焼けなかった地域。今でも戦前からの長屋が残る昔ながらの職人さんの町です。その下町の商店街・おかず横丁にある郡司味噌漬物店は、昭和32年創業。アットホームな家族経営のお味噌屋さんで、夏川雄介(37)さんは営業部部長を努めています。23歳でこの店で働き始め、今年で14年目。お店だけではなく、百貨店の出店でもお客さんに味噌の魅力を伝えています。

「創業者である会長は終戦後に捕虜として4年間のシベリア抑留経験があるんです。飢えと寒さ、強制労働の日々の中、戦友達との話題は食べ物の話ばかりで、『おふくろが作った味噌汁がのみたい』と話していたそうです。そういう味噌に対する熱い想いがあって、僕もその火を消したくないと思っています」(夏川さん)
今も健在でみんなに「お父さん」と慕われる郡司春雄(96)さんは当時、戦友達の想いを聞いて「生きて帰ることができたなら味噌屋になろう。戦友達の命を支えた、おふくろの作る味噌を商おう」と決心。夏川さんはその想いを受け継いでいます。

▲画像は左右にスライドできます(PCの場合、写真左右にある矢印をクリック)

[みそソムリエ]のお仕事

お味噌屋さんが味噌のことにいろいろ教えてくれるのは当然といえば当然。でも、味噌の知識に深さと幅が出てくるのが[みそソムリエ]。
「元々、味噌のことは調べていたし、知識はありましたけど、[みそソムリエ]なってからは味噌の説明にも説得力が出るみたいです(笑)。百貨店イベントに出店してる際にも役に立ってますね」(夏川さん)
もちろん、お店に来てくれるお客さんにも料理や季節、食材に応じた味噌の相談に応じてくれます。

郡司味噌漬物店の[みそソムリエ]は現在のところ、3人。夏川さんは社長・郡司武司さん、営業部主任の池本康博さんとともに、みそソムリエ認定協会の講座を受け、試験に合格しました。
「講座では、味噌の歴史、種類や原料から仕込みなどの授業がありました。あと、ティスティングの試験も大切です」(夏川さん)
現在、みそソムリエ認定協会には受講希望の問い合わせが多数寄せられており、順番待ちの状態。ご興味のある方は、みそソムリエ認定協会へお問い合わせください。

味噌へのこだわり

味噌は普段、何気なく食していますが調味料としても使い勝手は最高。健康に良いうえに、日本人にとっては癒し効果もありそうです。
郡司味噌漬物店が扱っている味噌は全て天然醸造。なかには、大寒に仕込み、その夏を越え、次の夏にでき上がる味噌もあり、「それは時間はかかるけど、バツグンの味!」と夏川さんは胸を張ります。
「隠し味としても味噌を使ってみてください。カレーやシチューに味噌をほんのちょっと入れるとコクが出ます。また、チーズにちょっと味噌を付けて食べてみて。発酵食品どうしなのですごく相性がいいんです。それから味噌たまりという味噌の上澄み液を醤油代わりに卵かけご飯にちょっとかけるとめちゃくちゃ旨いですよ」(夏川さん)

「郡司味噌漬物店」監修の本『みそ屋が教える赤白みその使いこなしレシピ』(文化出版局)で、おいしい味噌の使い方もチェックしてみてください。

▲画像は左右にスライドできます(PCの場合、写真左右にある矢印をクリック)

未来と、世界に向けての使命

百貨店に出店すると、最近は外国人からの質問が多いそうです。お店公式のおもしろブログ(「misoppa!!」)にも書かれたように「YESとNOを使い分ける」流暢な(笑)セールストークで、日本の味噌の素晴らしさを海外にアピールできるキャラの持ち主。
実は夏川さん、子どもが大好きで、小学校教諭免許を持っています。
「5年生の担任になった時に、味噌を仕込ませて、6年生になって卒業する時にその味噌を食べる…そんなのやってみたかったですね(笑)」(夏川さん)
先生にはならずにお味噌屋さんになり、今は未来に向け[みそソムリエ]として目標を持っています。
「小学校の社会科見学でこの店に来てくれたことがありました。味噌の魅力を伝えるというのが[みそソムリエ]ならば、味噌離れしないよう子どもの世代に伝えていくのが使命かなと思ってます」(夏川さん)

▲写真右の池本康博さんもみそソムリエ。郡司味噌漬物店の名コンビ

味噌の素晴らしさを世界へ、そして未来へ。
みそソムリエ・夏川さんの笑顔は今日も東京・下町の商店街にあります。

郡司味噌漬物店
[住所]東京都台東区鳥越1-14-2
[TEL]03-3851-1783
[営業時間]平日9:00〜18:30
[定休日]日・祝・第2・第4月曜日
[URL] [Facebookページ]
※みそソムリエ資格認定講座に関しては[みそソムリエ認定協会]公式サイトをご覧ください

●文= 魚住陽向フリー編集者、小説家
●撮影=清水亮一(アーク・コミュニケーションズ)/●編集=大山勇一