「マンガ大賞2017」授賞式に行ってきました&記念すべき10年目に発起人・吉田アナが思うこと

▲「マンガ大賞2017」は「響〜小説家になる方法〜」。柳本光晴さんの受賞代理は小学館の担当編集さん

「マンガ大賞2017」授賞式の取材に行ってきました。傑作ぞろいのノミネート13作品の中から今年大賞に選ばれたのは、柳本光晴さんの『響〜小説家になる方法〜』(小学館)。毎年、選考委員の方々が苦労して作り上げているマンガ大賞も今年で10回目です。授賞式の立派なセレモニー感に「本当にマンガ好きの有志によるボランティア?」とビックリ! 今回は、授賞式のようすとともに、発起人であるニッポン放送吉田尚記アナウンサーの「10年目に思うこと」を聞いてみました。(公開:2017年4月17日/更新:2022年2月12日)

「マンガ大賞」とは、マンガ好き有志によるマンガ賞。「マンガを肴に酒を飲みたい!」と2008年スタートし、今年で10回目を迎える。発起人は、マンガ・アニメ・アイドルなどアキバ系カルチャー・アナ第一人者の吉田尚記アナウンサー(ニッポン放送)。運営はマンガ大賞実行委員会が行い、選考員は実行委員が直接声をかけたマンガ好きの有志たち。書店員をはじめとする様々な職業の人が集まり、ボランティアによって支えている。
「マンガ大賞」公式サイト

「マンガ大賞2017」授賞式にワクワク!

2017年3月28日、ニッポン放送本社ビル地下2階にあるイマジンスタジオで行われた「マンガ大賞2017」に行ってきました。もちろん、授賞式のもようを取材するためです。本当は今年の受賞作が発表される瞬間に立ち合ってみたかったからですが(笑)。

特設ステージも立派です。MCはもちろん「マンガ大賞」発起人であるニッポン放送アナウンサー吉田尚記さん! オープニングVTRも本格的すぎて驚きです。実行委員の方々は手弁当で運営されているということですが、ノーギャラで動いているとは思えないほどのクオリティーの高さ。番組1本できちゃいますね(笑)。

▲画像は左右にスライドできます(PCの場合、写真左右にある矢印をクリック)

さて、今回の「マンガ大賞2017」大賞を受賞したのは柳本光晴さんの『響 〜小説家になる方法〜』(小学館)です。この作品は2014年から「ビッグコミックスペリオール」で連載。女子高生の響(ひびき)が文芸界・出版界で注目されていく物語。「マンガでは文芸の世界はまだ誰も手をつけていなかった分野」「天才を描きたかった」という作者・柳本さんの思いが詰まっているマンガです。

壇上に登った柳本さんからのエピソード、最初に電話で大賞受賞の連絡が来た時に、「ドッキリなんじゃないですか?」「間違いじゃないですか?」という無駄なやりとり5分間(笑)…というのが笑えました。この受賞をきっかけにアニメ化・実写化が期待できそうです。アシスタントさん達と「実写化する際は、主人公は誰が演じるか?」で盛り上がっているそうですが、柳本さん自身は「演じてくれるならどなたでも。とにかく動いているところが見たい!」とのこと。これは楽しみですね。

▲画像は左右にスライドできます(PCの場合、写真左右にある矢印をクリック)

これまでの受賞作はやっぱり傑作ぞろい!

2008年にスタートしてから「マンガ大賞」は10回目を数えます。過去の大賞受賞作は知らない人がいないぐらい有名な作品ばかり。初めから人気の高かったマンガもありますが、各作品ともに「マンガ大賞」を受賞してからさらにファンの層が大きく広がったように思います。

■2008年■
岳⑤/石塚真一
(小学館)
■2009年■
ちはやふる③/末次由紀
(講談社)
■2010年■
テルマエ・ロマエ/ヤマザキマリ(エンターブレイン)
■2011年■
3月のライオン⑤/羽海野チカ(白泉社)
■2012年■
銀の匙 Silver Spoon②/荒川弘(小学館)
■2013年■
海街diary⑤群青/吉田秋生(小学館)
■2014年■
乙嫁語り/森 薫(KADOKAWA/エンターブレイン)
■2015年■
かくかくしかじか④/東村アキコ
(集英社)
■2016年■
ゴールデンカムイ⑤/野田サトル
(集英社)
▲「マンガ大賞2017」授賞式会場ロビーには、各年の受賞の喜びが描かれたメッセージが!この受賞メッセージイラストは「マンガ大賞」公式サイトで見られます

「マンガ大賞」10年目に発起人・吉田アナに聞きました!

2008年にスタートした「マンガ大賞」も今年で10年目。発起人で、MCでもあるニッポン放送アナウンサー吉田尚記さんにお話を聞きました。

——毎年「マンガ大賞」を楽しみにしてますが、ついに10回目なんですね。
吉田 あっという間でしたね。運営委員、選考委員は誰も報酬をもらってないんですよ。「マンガを肴に酒を飲みたい」をテーマによくぞ10年って感じ(笑)がします。

——皆さん、ボランティアなんですね。
吉田 ただ、この賞を毎年やっていると我々自身が「おもしろいマンガを読み落とさない」というメリットが大きいんです。例えば、毎年ノミネート作品は10作品(今年は13作品)ですが、マンガ好きでも全部読んでいる人はまずいない。ジャンルはバラバラだし好みも違いますから。選考員をやってくれてる人は相当なマンガ好きなんですが、それでも必ずノミネート作品中2〜3作品ずつ読んでない。そして、読んでいないその2〜3作品がほぼ確実におもしろいんです。それが最大のメリットですね。

——それでは、なぜ大賞を選ぶんでしょうか?
吉田 時々、そういう質問をされるんです。「おもしろいマンガをオススメでいいじゃん!」って言われることもあります。でも皆さん、13作品タイトルを言われても憶えられないじゃないですか。ところが1作品だったら憶えられる。本当はノミネート作品を発表した段階で「これはおもしろいマンガなんですよ」で良いかもしれません。でも、それを主張する時に1作品にしないと注目度も分散されてしまうし、皆さん憶えてくれない。実は「ノミネートされた段階で、すでにおもしろいです!」とお伝えしているわけです。

——この10年で「マンガ大賞」の名前は大きくなりましたね。
吉田 この賞が大きくなったというより、恒例になっているから「みんなが待っててくれる」ようになったのはやりやすくていいですね。それに一番最初から書店員さんを巻き込んでるから、書店の売り場コーナーも大きく設けてもらえて、ありがたいですね。

——毎年運営していて大変なことも多そうですが?
吉田 運営委員、選考委員から文句が出たことが一度もないです。「好きでやってる人たちの集まり“なのに”10年続いた」と考えるか、「好きでやっている“からこそ”10年続いた」と考えるか、難しいところではありますね。大変さよりも楽しさが勝ってる? そうですね。こんなに堂々とマンガの話を世間に向かってすることってなかなかないですからね(笑)。そこができるのが「マンガ大賞」のメリットだと思っています。

——お忙しいところ、ありがとうございました。

* * * *

ノミネート作品は発表されてから全部読みましたが、やはりどのマンガも超おもしろかったです。個人的な好みをこっそり発表してもいいですか。『波よ聞いてくれ』『金の国 水の国』『ゴールデンゴールド』『アオアシ』です。

■マンガ大賞2017 ノミネート作品(五十音順)
※一次選考にて挙がった作品253タイトル(過去最多)の中から同率順位含む上位13作品。
『アオアシ』(小林有吾/協力・上野直彦)/『からかい上手の高木さん』(山本崇一朗)/『金の国 水の国』(岩本ナオ)/『空挺ドラゴンズ』(桑原太矩)/『ゴールデンゴールド』(堀尾省太)/『ダンジョン飯』(九井諒子)/『東京タラレバ娘』(東村アキコ)/『波よ聞いてくれ』(沙村広明)/『ハイスコアガール』(押切蓮介)/『響 〜小説家になる方法〜』(柳本光晴)/『ファイアパンチ』(藤本タツキ)/『約束のネバーランド』(白井カイウ・出水ぽすか)/『私の少年』(高野ひと深)

あなたのマンガ大賞は何でしょうか? ノミネート作品には皆さんがご存じのマンガも多いと思いますが、初めて目にしたタイトルはこれを機に一度手にとって読んでみてください。
それこそが「マンガ大賞」の真の目的だと思います。

▲画像は左右にスライドできます(PCの場合、写真左右にある矢印をクリック)

●文・編集・撮影(iPhone)=魚住陽向フリー編集者、小説家
●撮影・編集=大山勇一