日本人は変人が多い? 「イグ・ノーベル賞の世界展」で爆笑してきました!

2018.10.23(Tue)

2018年9月13日、「イグ・ノーベル賞」医学教育賞を堀内朗医師(昭和伊南総合病院/長野県駒ヶ根市)が受賞したというニュースは記憶に新しいところです。イグ・ノーベル賞といえば毎年日本人が受賞し話題になっている、まるで冗談みたいな研究を大マジメに取り組んでいる、いわゆる「裏ノーベル賞」。聞けばもう12年連続で日本人が受賞しているというから驚きです。そんな「イグ・ノーベル賞の過去の受賞研究が見られる展示会が開催」と聞いてプレス内覧会に行ってきました。※ちなみに本記事での「おバカ」「くだらない」という表現は「ほめ言葉」です。

『イグ・ノーベル賞の世界展』
オープニングセレモニー&プレス内覧会

日時:2018年9月21日(金) 11:00〜15:00
会場:Gallery AaMo(東京都文京区後楽1-3-61)
ゲスト:マーク・エイブラハムズ(「イグ・ノーベル賞」創設者)、テリー伊藤(オフィシャル・アンバサダー)、ドクター中松ほか過去の「イグ・ノーベル賞」日本人受賞者

「イグ・ノーベル賞」:1991年に創設された「人々を笑わせ、そして考えさせてくれる研究」に対して贈られる賞。生物学、数学、テクノロジーなど様々な分野において、面白いが埋もれた研究業績を広め、並外れたものや想像力を称賛&賞を贈り、科学の面白さを再認識させるという斬新な話題が毎年一般の人々の注目を集めている。米国のユーモア系科学雑誌編集長であるマーク・エイブラハムズ氏が創始者で、サイエンス・ユーモア雑誌『風変わりな研究の年報』と同氏が企画運営している。いわばノーベル賞のパロディーであるが、「表のノーベル賞」に対して「裏のイグ・ノーベル賞」とも言われている。

オープニングセレモニー:念願の「紙飛行機」飛ばし!

毎年9月頃になると「日本人がイグ・ノーベル賞を受賞!」のニュースをここ何年も聞いているような気がしていました。それもそのはず。「12年連続で日本人がイグ・ノーベル賞を受賞」しているからです。

日本人は世界中から真面目で働き者な国民と思われているフシがありますが、こんなにもおバカな研究をしている人が多いなんて意外でしょう。驚きながらもこういうことが大好きなので注目していましたが、「イグ・ノーベル賞が展示会になって日本で開催される」と聞き、喜び勇んでプレス(マスコミ)内覧会に行ってきました。

東京ドームシティ内のGallery AaMo(ギャラリー・アーモ)で行われた「イグ・ノーベル賞の世界展」オープニングセレモニーには、賞の創始者であるマーク・エイブラハムズ氏がこの日のために来日し、ご登場! ゲストでありながらMC(通訳付き)もつとめる勢いです。

「イグ・ノーベル賞受賞者数で日本はトップクラスです。その理由として私は、日本の伝統にあると思います。この風変わりな地球と向かい合い、調和する心根を持っているからでしょう」(M・エイブラハムズ氏)
それが本当かどうかは分かりませんが、日本がイグ・ノーベル大国になっているのは真実のようです。

イグ・ノーベル賞にはいくつかのお約束があります。アメリカの名門、ハーバード大学で行われる本家の授賞式では、オープニングに観客が舞台上の人(的)めがけて紙飛行機を一斉に投げます。映像で見たことはありましたが、これをやれる日が来るとは感激です。これをやりに来たといっても過言ではありません。既に各客席に用意されていた紙飛行機を思いっきり投げて…すぐに墜落しました(下手っぴでした)。


▲登壇者が紙飛行機を持ってる場面は結構レアです

本家授賞式のお約束はもう一つあります。受賞者が60秒以上スピーチをしてしまうと、舞台上に6〜7歳ぐらいの女の子が現れて「もうやめて! 私、飽きちゃったの」と怒られるというもの。これは受賞者にはキツいけど笑えるひとくだりです。それをこの日もやりました。どう登場するんだろうと期待していたら「大きくなった女の子」という設定で登場。思い切り日本語で「もうやめて! 私、飽きちゃったの」……やっぱり成人女性がやると申し訳ない気持ちが出てしまうのでやはり子どもの方がいいですね(笑)。

この日に集まったのは過去の受賞者の方々です。一人ずつ登壇して挨拶する前には皆さん一様にして緊張の面持ち。冗談みたいな研究といってもやはりご本人は大真面目です。そして名誉ある「イグ・ノーベル賞」を受賞しているのですから、何年経とうと誇らしく、嬉しそうに見えます。この日、登壇されたのは以下の受賞者の方々です。遅ればせながらおめでとうございます。

★オープニングセレモニーで登壇した受賞者の皆さん(受賞年順)
●1995年「ピカソとモネの絵を見分けるハトの研究」心理学賞
渡辺 茂さん(慶應義塾大学 文学部 名誉教授)

●2002年「イヌ語を翻訳する機械 バウリンガル」平和賞
鈴木 創さん(日本音響研究所 代表取締役)

●2003年「ハトに嫌われた銅像の化学的考察」化学賞
廣瀨幸雄さん(金沢大学 名誉教授)

●2005年「35年間に渡り自分の食事を毎回撮影し、食べた物が脳の働きや体調に与える影響を分析し続けたこと」栄養学賞
サー・ドクター中松義郎さん

●2008年「アメーバ状生物の粘菌が迷路の最短ルートを解く」認知化学賞
●2010年「粘菌が最適な鉄道網を決める」交通計画賞
中垣俊之さん(北海道大学電子科学研究所 所長)

●2012年「スピーチジャマー」音響賞
栗原一貴さん(津田塾大学 准教授)

●2013年「心臓移植をしたマウスに、オペラの『椿姫』を聴かせたところ、モーツァルトなどの音楽を聴かせたマウスよりも、拒絶反応が抑えられ、生存期間が延びたという研究」医学賞
内山雅照さん(帝京大学 医学部付属病院 心臓血管外科講座)

●2014年「床に置かれたバナナの皮を人間が踏んだ時の摩擦係数を計測した研究」物理学賞
馬渕清資さん(北里大学 名誉教授)

●2017年「雄と雌で生殖器の形状が逆転している昆虫(トリカヘチャタテ)の存在を明らかにしたことに対して」生物学賞
吉澤和徳さん(北海道大学 准教授)

●2018年「大腸の内視鏡挿入を容易にするために内視鏡スコープを自ら大腸に挿入することを研究したことについて」医学教育賞
堀内 朗さん(医師、伊南行政組合昭和伊南総合病院 内科診療部長・消化器病センター長)

妙な展示物が並ぶカオスで笑える展覧会

展覧会の会場には、国内外問わず、過去のイグ・ノーベル賞受賞の研究パネルがたくさん展示してあります。なかにはパネルだけでなく、研究開発されたグッズや研究時に使用された物まで並んでいて、ふと「自分は何を見てるんだろう?」という空間が歪んだ状態に陥ることもあります(笑)。

研究パネルを見ながら会場内を進んでいくと気づいたことがありました。「うんこ(おなら)ネタ」や下ネタは全人類の鉄板ネタだということ。日本でも「うんこ漢字ドリル」ブームがありましたが、男子小学生が無条件でウケるネタは国境と世代を越えるんだということがハッキリしました。ホントにおバカです。

受賞するのは研究だけではありません。例えば、ジンバブエで極端なハイパーインフレが起きていた時期、ジンバブエ準備銀行総裁であったゴノ氏は額面が100万ドル、10億ドル、100兆ドルという超高額紙幣を次々と発行させたことに対しての強烈な皮肉として、2009年数学賞「幅広い数字の簡単で毎日できるトレーニング法をジンバブエ国民に与えたことに対して」を授与。ちょっと社会派です。

研究のほとんどは実用化しなさそうな研究ばかりですが、なかには実際に実用化されている物もあります。有名な『バウリンガル』(タカラトミー/英語版も販売)や『大人には聞こえない不快なモスキート音を発する「ティーンエイジャー撃退器」』、『おならの臭いを消すパンツ「アンダー・イーズ」』、『非常時にガスマスクに早変わりするブラジャー「エマージェンシー・ブラ」』などなど。いやあ、笑いすぎてもうお腹いっぱいです。

「イグ・ノーベル賞の世界展」会場入口には「ショップコーナー」も設けられています。あなた好みの「おバカ」グッズを見つけてみてはいかがでしょう。

* * * *
M・エイブラハムズ氏の言葉「日本とイギリスは変人であることを誇りにする国です」を聞いた時は一瞬「誇りに思うかなぁ?」と正直思いました。でも、ずっと「日本の研究者は食えない、博士号を取っても報われない」と言われながらも、こんな笑える研究を大真面目にする研究者がたくさんいて、ホッとすると同時に嬉しくなりました。エイブラハムズ氏の言う通りかもしれません。世界中のおバカな研究者たちに「地球の平和」を感じます。


イグ・ノーベル賞の世界展
日程:2018年9月22日(土)〜11月4日(日)
時間:平日 12:00〜18:00/土日祝 10:00〜18:00
※開催期間中は無休

料金:当日 高校生以上 1400円/小・中学生 900円
前売 高校生以上 1200円/小・中学生 700円
(未就学児は無料)

主催:株式会社東京ドーム、株式会社ドリームスタジオ
制作協力:Marc Abrahams氏(イグ・ノーベル賞主宰)
後援:読売新聞社

URL:https://www.tokyo-dome.co.jp/aamo/event/ignobel2018.html

会場:Gallery AaMo(ギャラリー アーモ)
住所:東京都文京区後楽1-3-61 東京ドームシティ内
アクセス:JR 水道橋駅 東口より徒歩約7分、都営地下鉄三田線 水道橋駅 A3出口より徒歩約7分、東京メトロ丸ノ内線・南北線 後楽園駅 2番出口より徒歩約8分、都営地下鉄大江戸線 春日駅 A1出口より徒歩約8分



●撮影・文・編集= 魚住陽向(フリー編集者、ライター、小説家