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幕末の志士たちも楽しんだ伝統遊戯「投扇興」を、ブラジル大使館公邸で取材する不思議!

2017.8.29(Tue)

古くから伝わる日本の扇子を使った対戦型の遊戯「投扇興(とうせんきょう)」。時代小説(特に幕末あたり)に投扇興を楽しむシーンが出てくるので長年とても気になっていました。それがある日ネット検索したところ、たまたま新宿・京王百貨店で投扇興無料体験会開催の情報が! これを機に、まずは1人で体験しにでかけたのです。これが風情があってとてもおもしろい遊戯でした。道具まで欲しくなるほどです(笑)。

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体験会主催のNPO法人「日本投扇興保存振興会」の方々に話を聞いているうちに外国の大使館で「投扇興交流会」を行うことが多いことが分かりました。後日「ブラジル大使館公邸での交流会に来られますか?」との連絡をいただき、写真室・清水さんとともに「投扇興」の取材に行ってきたのです。写真はもちろんのこと、清水さん撮影・編集の動画も必見です!

今回は「投扇興交流会」の写真を交え、まずは投扇興の遊び方やルールなどを説明しましょう。興味がわいた人は機会があれば体験してみてください。
また、「arKadia(あるかでぃあ)」での記事もぜひご覧ください。英語ページの翻訳は町田慈音さんです。

投扇興とは

投扇興(とうせんきょう)とは、1対1の対戦型の、伝統的遊戯です。対戦型といっても激しいスポーツではなく、扇子を投げ合って競う風流な遊び。体力も運動神経も求められません。老若男女、国籍を問わず、誰もが一緒に盛り上がれるゲームなのです。

投扇興は、京都・大阪から江戸の地に伝わると庶民の間に大流行しました。安政二年(1773年)頃には手引書や指南書が多数出版されています。ところが、あまりにも大ブームになったために賭け事の道具になってしまいました。その賭け事がエスカレートしたため、幕府は文政五年(1822年)に「投扇興禁止令」というお触れを出し、投扇興は公の場から姿を消したのです。現代では日本人にも投扇興を知らない人が多いですが、最近は徐々にマスメディアに取り上げられることも増えてきました。

投扇興にはいくつかの流派があり、ルールも点数の付け方も流派によって様々。ここに紹介する「御扇流(みせんりゅう)」は、今日まで受け継がれる正統な流派の1つで、ルールも分かりやすく競技も盛り上がります。その作法と遊び方にのっとって紹介しましょう。

投扇興の楽しみ方

●道具と舞台
敷かれた緋毛氈(ひもうせん)の中央に「胡蝶」(=的。「蝶」と呼ぶ流派もある)を立てる「枕」(=桐の台)が置かれます。対戦者は枕を挟んで向かい合って座ります。その中央、枕の前に「司扇人」(しせんにん)と呼ばれる審判が座ります。司扇人から見て、右手が「花方」(はなかた)で、左手が「雪方」(ゆきかた)。対戦者の膝元には、閉じた扇子を5本置きます。その扇子を右から1本ずつ取って開き、交互に投げ合って競技を行います。

●扇子の投げ方
扇子はただ投げればいいというものではありません。まず、姿勢や扇子の持ち方からしっかりとおぼえましょう。


姿勢は、背筋を伸ばし、片手は腿の上に置いて構えましょう。
1) 扇子を1本手に取り、あなたが「花方」ならば、扇子の「花」という漢字を上に向けます。親指で扇子の要(軸の下部)を押さえ、他の4本の指を裏面に添えます。
2) ゆっくり裏返して、裏面の「雪」を上にします。
3) この形で胡蝶を狙って構えます。扇子の先端はやや上向きにするとよいでしょう。
4) 扇子を引きながら持ち上げ、軽く手首を使い、扇子の要を押し出すように投げます。


投げ方のコツは、力まずにゆったりと投げることです。力まかせに思い切り投げると扇子はキレイに飛びません。例えるならば、紙飛行機をふんわりと飛ばすように投げると良いでしょう。その方が胡蝶に当たる確率は上がります。手首をやわらかく使うのもコツの1つです。

●採点方法と点式銘
投扇興は落ちた扇子、胡蝶、枕の位置関係で採点し、その得点を競い合います。
そのからみ方によって、銘(めい:技の名前)と点式(てんしき:得点)が決まっています。流派によって、技の名前やその得点種類・数は変わりますが、ここでは「御扇流」の点式銘を参照ください。
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▲御扇流の点式銘(『投扇興に遊ぶ』日本投扇興保存振興会 編)より

技の名前は風流で情緒を感じさせます。これは「百人一首」の和歌に因んだ名前なのです(他に「源氏物語」に因んだ名前、地域にゆかりのある名前を付ける流派もあります)。例えば、投げた扇子が胡蝶に付いた鈴を鳴らしたとします。その技の銘は「秋風」といい、3点が加点されます。

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▲点式銘(英語版)で得点の確認中

もし、あなたが「花方」で、扇子が胡蝶にまったく当たらなかった場合でも、落ちた扇子が「花」の面を上にして落ちていれば、1枚につき1点加点されます。

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▲滅多に出ない「御幸(みゆき)」が出ました! 得点は13点

●礼儀と作法
投扇興は、礼に始まり礼に終わる遊戯です。正座はできればやった方が良いですが、できない人は無理をすることはありません。椅子に座っての参加も可能です。
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▲新宿・京王百貨店での「投扇興体験会」(2017年5月24日)

競技が始まる前には、両手をついて礼(おじぎ)をしましょう。
競技の進行役は審判である「司扇人」の、「礼」の合図で始まります。対戦者が扇子を投げる度に点式銘を告げて、得点を示します。

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▲歌扇人は日本投扇興保存振興会理事長の三浦尊明(本寿院 住職)さん。書扇人は三浦由希さん

すると、後ろに控えた「歌扇人(かせんにん)」が、その銘にあたる「百人一首」を詠み上げます。文机の前に座っているのは記録係で「書扇人(しょせんにん)」と呼ばれます。
対戦が終了すると、得点を集計し、扇子と道具を元の形に戻します。司扇人が勝敗を示し、礼をして終わります。

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▲最初から最後まで礼儀は大切

雅な決勝戦の栄誉!

トーナメントで勝ち上がった2人の決勝戦が投扇興のメインイベントです。
会場に掛けられている色鮮やかな2枚の着物「袿」(うちぎ)は、決勝出場者のみが袖を通すことができる栄誉の象徴。この着物を羽織って決勝戦が行われます。

この日は2ブロックに分かれて、賑やかに行われていた練習試合。でも、さすがに決勝戦は全員が大注目してるので、ファイナリストは緊張しているもようです。
投扇興は、テクニックや力よりも無欲で無心の方が勝利を呼び込みやすいのです。「運」や「偶然」のようなことも作用します。結果が読めないからこそのおもしろさもあるのです。

この日の投扇興交流会を終え、ブラジル大使館公邸ではベアさんの手料理を中心にティーパーティーが行われました。皆さんは楽しく賑やかではあるけれど、とても勉強熱心な面も見受けられました。礼儀正しく、投扇興のやり方も飲み込みが早くて、とても感心しました。

ブラジル大使夫人のベア・コヘーア・ド・ラーゴさんや参加者の皆様、「投扇興交流会」にお招きいただき、ありがとうございました。
そして、取材にご協力いただいたNPO法人「日本投扇興保存振興会」の皆様に深く感謝申し上げます。

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書籍『投扇興に遊ぶ』
監修・発行:日本投扇興保存振興会
価格:2000円+税

NPO法人 日本投扇興保存振興会
住所:東京都大田区南馬込1-16-2 本寿院 内
URL:http://101000.com/
※投扇興交流会や本のお問合せは、日本投扇興保存振興会サイト内の「お問い合わせフォーム」からどうぞ

▲「駐日ブラジル大使館公邸での投扇興交流会」(音が出ます)

●文・編集= 魚住陽向 (フリー編集者、ライター、小説家
●撮影= 清水亮一アーク・コミュニケーションズ

投扇興体験ができるお店・料亭・旅館(予約制)◆
予約さえすれば、すぐに投扇興体験ができるお店があります。そのお店によって投扇興の流派があり、ルールや得点の付け方が違いますので、お店の説明や指導に従って、投扇興を楽しんでください。各店のサイトにて営業時間や定休日、体験料金も要確認。予約の際に「投扇興を体験したい」ことを伝えましょう。

扇や 半げしょう
京都東山・宮川町にある老舗の扇子のお店。
住所:京都府京都市新宮川町松原下ル西御門町440-13
URL:http://hangesho.com/html/taiken.html

助六の宿 貞千代(さだちよ)
江戸情緒を満喫できる宿。江戸趣味プランは食事や宿泊と楽しめます。
住所:東京都台東区浅草2-20-1
URL:http://www.sadachiyo.co.jp/ja/edoplan/#es3

懐石 瓢庵(ひさごあん)
投扇興ができる料亭。
住所:東京都台東区浅草3-34-11
URL:http://www.kaiseki-hisagoan.com/index.html

浅草 時代屋
日本文化を手軽に体験できる観光スポット。いろんな観光体験プランあり。
住所:東京都台東区雷門2-3-5
URL:http://www.jidaiya.biz/taikenmono.html#taikenmono5

白竹堂(はくちくどう)
京扇子の製造販売のお店。2名から予約受付。
住所:京都府京都市中京区麩屋町通六角上ル白壁町448番地
URL:http://www.hakuchikudo.co.jp/experience/tosenkyo.html