400種以上! の世界中の塩を知るお仕事『ソルトソムリエ』

近年、和食ブームや食育の観点から、野菜ソムリエをはじめとする食関連の民間資格に注目が集まっています。今回は塩のプロフェッショナル『ソルトソムリエ』の木内さんにお話を伺いました。「塩」はどの家庭にもあるありふれた調味料ですが、反面、世界中で使われている調味料でもあります。塩という調味料の奥深さや、ソルトソムリエというお仕事についてお聞きしました。(公開:2015年6月5日/更新:2022年3月26日)

残念ながら、塩屋「麻布十番店」は2020年3月31日をもって、また「東京ソラマチ店」は2021年3月28日をもって、閉店されました。
※現在の店舗情報などは記事末をご覧ください。

ソルトソムリエというお仕事

今回お話を伺ったのは日本最大級の塩専門店[塩屋]麻布十番店にて、ソルトソムリエをつとめる木内伸さん(39)。
「お客様の食に合わせて、使う塩のご相談に応じ、アドバイス、ご案内をさせていただくのがソルトソムリエです。塩を使い分けたり、選ぶ楽しさを提供し、塩の良さ、おいしさを知っていただく仕事ですね」(木内さん)

人によって、舌の感覚や味の好みは微妙に違います。それによって表現の仕方も変わってくる難しい仕事。木内さんは数多くの塩の中から「提案」「アドバイス」するプロフェッショナルなのです。

一般客だけでなく料理の専門家も集う塩の専門店

現在、沖縄に5店舗、大阪に1店舗、横浜に1店舗、東京に2店舗ある[塩屋]は元々、沖縄で誕生した塩専門店です。もちろん世界中の塩を扱っています。「日本の塩」「沖縄の塩」「世界の塩」「塩屋オリジナル合わせ塩」などの各コーナーに並んでいる塩の数は400種類以上あるというから驚き。「テイスティングコーナー」で塩の試食、食べ比べができ、詳しいアドバイスも受けられます。

「この麻布十番店には場所柄、飲食店関係のお客様も多くお見えになるので、専門的なご相談にも乗ることも多々ありますね。私自身も日々勉強を続けています」(木内さん)

大人気の「雪塩ソフトクリーム」はイートインコーナーで、塩をかけていただきます

▲画像は左右にスライドできます(PCの場合、写真左右にある矢印をクリック)

塩は必要不可欠であり、世界共通の調味料

以前はお酒販売に関するお仕事をされていたという木内さん。唎酒師や焼酎、ワインに関する資格なども持っており「専門性のある資格勉強が好きなのかもしれない」という言葉もうなずけます。

そもそも木内さんがソルトソムリエの資格をとろうと思ったきっかけは、先輩から受け継がれてきた「塩は世界中どこの国でも使っている」「塩を知れば世界中の人と触れ合うことができる」という「塩屋」社長の言葉でした。
「入社するまで塩の種類がこんなにたくさんあるとは知りませんでした。それに塩は知れば知るほど奥が深いんです。塩を極めてみたいなと興味が湧いてきました」(木内さん)

ソルトソムリエになるためには?

塩に関する勉強は「製塩の歴史」「塩の成分」など塩の知識全般に加えて、官能検査(※1)も行います。実際に味を試して、それぞれの塩の特徴から合う料理を考えたりするそうです。
「今のところ決まった日時・場所がある講座ではなく、営業時間外に店舗ごとに行う勉強会をやっています。教本というのもあって、先輩が教えてくれたり、座学のような感じですね」(木内さん)

2015年5月現在、ソルトソムリエという資格は塩屋各店舗の社内資格で、年に4回試験があります。
店員さんはまず見習い(※2)から始まり、試験に合格すると[ソルトアドバイザー]になり、その上段階の[ソルトソムリエ]になると、えんじ色のネクタイとエプロン、金色のバッジ(名札)をつけることができます。
「一般の方を対象にした塩の講座もあるんですが、今後は社内資格から一般公開した資格にしていこうという流れになってきました。どんどん塩の素晴らしさを広められますね」(木内さん)

(※1)官能検査とは人間の五感を用い、食品などの特性を一定の手法に基づき評価・測定する検査。官能試験ともいう。
(※2)見習いの制服はソルトアドバイザー同様のネクタイなしの黒いエプロンで、「見習い中」というネームプレートを付けています。

資格取得後にも目標を持つ

「リピーターのお客様に『このあいだアドバイスしてもらった塩がとてもおいしかったよ』と言っていただくと非常に励みになります。信頼していただいてるという実感とともに、より責任感を持たないといけないと強く思っています」(木内さん)

ソルトソムリエの資格取得で満足するのではなく、日々勉強を続けている木内さん。
「今後は、教える側に立つ、より知識の深い資格もできるようなんです。これからソルトソムリエを一般に広げていくことになれば、ぜひ[シニアソムリエ]を目指したいと思っています」(木内さん)

親しみやすくも奥の深い「塩」の世界。興味があればソルトソムリエに相談してみてはいかがでしょうか。

残念ながら、塩屋「麻布十番店」は2020年3月31日をもって、また「東京ソラマチ店」は2021年3月28日をもって、閉店となりました。
★沖縄県内の各店舗情報や詳細については「塩屋」公式サイトにてご覧ください。
「塩屋(まーすやー)」公式サイト→ https://www.ma-suya.net/
「塩屋(まーすやー)」オンラインショップ→ http://www.shop-ma-suya.jp/

塩屋(まーすやー)麻布十番店

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●文= 魚住陽向フリー編集者、小説家
●撮影= 清水亮一(アーク・コミュニケーションズ)/●編集= 大山勇一