「ハラールエキスポジャパン2016」に行ってきました!

こんにちはフリー編集者(たまに小説家)の魚住です。今年7月に行った見本市「インバウンド・ジャパン2016」に「ハラール」関連ブースがありました。それまで「ハラール」という言葉は何となく聞いたことがありましたが、言語も宗教観も文化・習慣もまったく分からない世界です。今回の「ハラールエキスポジャパン2016」には勉強のために行ってみました。かなりデリケートな問題もはらんでいるのではないかと内心びびってましたが、かわいいキャラクターもいたりして楽しい見本市でしたよ!(公開:2016年12月12日/更新:2022年3月14日)

そもそもハラールって何?

※このイベントは終了しています
■ハラールエキスポジャパン2016
会期:2016年11月22日(水)〜23日(木)
開催時間:10:00〜17:00
会場:東京都立産業貿易センター 台東館4階・5階(東京都台東区花川戸2-6-5)
主催:ハラールエキスポジャパン2016実行委員会
URL:http://expo2016.halalmedia.jp/

ハラール食品・製品をメイドインジャパンで!

この見本市は日本が世界に誇る観光地・浅草で開催されました。浅草や上野ではハラール認証された飲食店やお土産屋さんが増え、マップが制作されています。この「ムスリムおもてなしマップ」は浅草以外にも京都、大阪、札幌、佐野(栃木県)なども。ムスリム訪日客対応にチカラを入れている証しですね。

▲画像は左右にスライドできます(PCの場合、写真左右にある矢印をクリック)

都市部ではなくても「ムスリムおもてなし対応」にチカラを入れている地方自治体が多く、研究・開発の末にハラール認証を受けた特産品の数々が出展されていました。
会場に入ってまず目についたのは徳島県内からの出展が多かったということ。徳島県産の食材を使い、ハラール認証を受けた手延べそうめん、カレー、西阿波牛、柑橘類、こんにゃく、発酵食品、スイーツなどがずらり。徳島県はハラール認証の商品をシンガポールやマレーシアに輸出していて、取り組み方がアツいですね。

徳島産の野菜や果物を使ったハラール認証ドリンク
調理試食はムスリムだけでなく日本人にも人気
ハラールカレー販売
こんにゃくにもハラール認証のシールが
無限の可能性秘めてます!
ハラールスイーツも抹茶が人気

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北海道は広大な自然と大地が売りなのは皆さんご存知ですが、「雪ミク(初音ミク)」という公式キャラクターに応援されて、ますますパワーアップですね。ショップ&ミュージアム「雪ミク スカイタウン」は新千歳空港国内線ターミナルビル(4F)にあるようです。気になります(笑)。

このポスターは「雪ミク」の髪などがピカピカ光る仕掛け
北海道産ブランドは強い!
小麦粉・米粉製品だけでなく、マヨネーズやケチャップもハラール
今回試食した中でベスト3に入るおいしさ

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千葉県は、鎌ヶ谷市の茂野製麺がハラールに取り組んでいたり、南房総の鋸南町が団体旅行のコースを売り込んでました。しかし、何といっても注目したいのは千葉市美容事業協同組合と千葉市が取り組んでいる「ムスリム対応ヘアサロン」です。ムスリムの女性は男性の前でヒジャブ(ムスリム女性が頭にかぶる布)を取ることができません。そこで「ムスリム対応サロン」では様々な対応をしています(完全個室対応、女性スタッフ対応、英語メニュー対応、アルコールや動物性由来成分のないシャンプー使用、お祈りスペース対応)。この取り組みによってムスリム訪日客を呼び込んでいます。

千葉市ブースはムスリム女性に人気でした
ムスリム対応サロンのマップ
「着物の生地でヒジャブを作りませんか」

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宮城県石巻市からも出展してました。「石巻元気復興センター」でも石巻ノンアニマル・ノンアルコールフードに取り組んでいます。魚介類がおいしい石巻だったらハラールと相性も良さそうです。

鹿児島などで採れる自然な素材を元に作られた商品を出展していた「香実」や「ボタニカルファクトリー」。ボタニカルファクトリーには肌に優しい繭玉もあったりと、日本人でも興味をそそる素敵な商品ばかりでした。

応援してますよ!
日本人でも普通に食べたい
香実
ボタニカルファクトリー

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実は一番目立っていたのは栃木県佐野市のブース。佐野の人気キャラ「さのまる」(2013年グランプリ!)が来ていたお陰です。会場を練り歩いたり、ムスリムの方々も「さのまる」と記念撮影したりと1日じゅうひっぱりだこ。「とちおとめ」などなど、ハラール認証食品をアピールしていました。ムスリムは犬がNGのようですが安心してください。「さのまる」は公式にお侍さんであり、犬ではありませんよ。

お店番をするさのまる
さのまるはムスリムの方々にも人気!

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自治体以外にも企業・団体の出展も数多く、食品、飲料、医療や薬品、化粧品、衣料(テキスタイル)などのブースが並びます。ちょっと変わったところでは和風の礼拝室の販売・施工会社! 民泊がどんどん増えていますが、これから民泊ビジネスに乗り出そうとしている人には見逃せないアイテムです。

民泊ビジネスに、礼拝室の設置はいかがですか
ハラール対応のラーメンも人気
大阪からハラールたこ焼き
猫の肉球をかたどったマドレーヌ
ハラール認証キムチ
米発酵アイスは女性が好きそう
ハラール認証カレー
日本のお茶は世界中で人気

▲「民泊用和室ユニット」(豊裕物産)/「ムスリムフレンドリーラーメン」(麺屋 帆のる 日本橋店※現在は閉店)/「ハラール認証キムチ」(サンセイフーズ)/「深蒸し茶といえば鹿児島は大隅の和香園画像は左右にスライドできます)

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▼「ハラール認証の虫よけ、洗浄・抗菌・除菌剤」(リタ・コーポレーション)/「ハラール対応カラオケ店」(まねきねこ四谷三丁目店)/「ハラール専用検査室」(エムビックらいふ)/「ハラールレシピジャパン クッキングクラブ」(画像は左右にスライドできます)

チョーヤ梅酒「酔わないウメッシュ(瓶)」がハラール認証取得
虫よけ、除菌剤もノンアルコール
カラオケチェーンもハラールメニュー開始
日本の医療ツーリズムはムスリムにも対応
ハラールマニキュア
新素材として播州織、西陣織をアピール
もちろん英語版ポスターもあります

シンガポール、インドネシア、マレーシアなどからの出展、輸入されたハラールフードの出展もありましたが、今回の「ハラールエキスポジャパン2016」では圧倒的にメイドインジャパンの出展が多く、そしてとても目立ちました。セミナーやファッションショーも興味深かったです。
これからもハラール認証品も、それに取り組む日本企業・団体はどんどん増えていくと思います。2017年もこの見本市は、5月には大阪で、11月にはまた浅草で開催が予定されています。入場無料なので興味がある人は気軽に立ち寄ってみてはいかがでしょう。

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「ムスリム」と「ハラール」

ここ数年、外国人観光客の増加が著しいですが、国の習慣や宗教によってもおもてなし対応は変わってきます。外国人の中でもムスリム(神に帰依する者=イスラム教徒)は戒律が厳しく、今までは日本へ旅行に来ても不自由が多く、満足に旅を楽しめない場面が多く見られました。

世界中にいるムスリム推定人口は約16億人。大々的な調査がされていないため日本に住んでいるムスリムは正確な人数は不明。ただ、確実にムスリム訪日客は増加傾向にあります。ビジネス的に見てもそのマーケットの規模は見逃せないほどに巨大です。

ムスリム・ファッションショー
モデルさんがかっこいい!

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そんななか、ムスリムが訪日した際に不便を感じる理由はハラール認証の食品・製品がほとんどなかったことでした。もちろん、ハラールを知っている日本人も少ないわけです。また、項目が細かく、国によってもハラールが微妙に違っていっている可能性もあり、ある程度の勉強も必要になってきます。

さて、その「ハラール」とは「許されている」という意味で「イスラム法において合法なもの」です。逆に「禁じられている」という意味で「非合法なもの」のことは「ハラーム」「ノンハラール」「非ハラール」といいます。イスラム教の聖典コーランには「食べて良いもの」=「ハラールフード」が明確に定められています。

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イスラム教の宗派やその国によって戒律に細かな違いはありますが、ここでは基本的な食に関して中心に「ハラール」と「ハラーム」を紹介します。

・豚肉は禁止(イスラム教において、豚は不浄な動物とされている)
・豚肉を使った料理、ポークエキスが含まれるスープやブイヨン、ゼラチンを使ったデザート類。また、トンカツを揚げた同じ油で揚げられた野菜や魚も食べることができない
・アルコール、お酒は全面的に禁止(ワイン、みりん、日本酒、ラム酒を使った料理やお菓子もNG)
・飲食店厨房で、アルコール入り除菌剤などを使っていた場合、その厨房で調理した料理も食べてはいけない
・鶏肉や牛肉は、「イスラム教のルールに従って屠殺した肉」ならOK
(家畜の餌にハラールに違反したものが入っていないこと、屠殺の行為は必ずムスリムがアッラーの御名を唱えて行うことなどの厳密なルールを守ること)
・魚介類(河豚など毒がある魚は調理の際に毒を抜けばOK)や野菜はOK

▲会場に用意された礼拝室スペース。男女別です

薬品や化粧品に関してもハラールは細かく存在しますが、ちょっと多すぎて割愛させていただきます。
日本でこれらのルールをすべて守り認証され「ローカルハラール認証」を受けている食品・製品も増えてきました。ただし、いい加減なものもあり、今後は日本政府が実態調査に乗り出す方針を打ち出しています。

冒頭で紹介しましたが、ハラール認証店を探しやすいように観光地ではガイドマップも制作しています。これからもムスリム訪日客が楽しく過ごせるためのハラーム食品・製品などの研究・開発以外に、情報を整理して発信することも求められると思います。実は出版業界もビジネスチャンスなわけです。重い腰を上げて、まずは「知る」ことから始めてみてはいかがでしょう。

ブルネイのキャリアウーマンです
ブルネイのファッションブランド

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●撮影・文・編集=魚住陽向フリー編集者、小説家
●編集=大山勇一