目指せ! 民間初の月面無人探査 〜世界規模の宇宙開発レースが繰り広げられる

XPRIZE財団が主催し、Googleがスポンサーになっている国際的な宇宙開発レース「Google Lunar XPRIZE」(以下、GLXP)。優勝賞金は、なんと2000万ドル(日本円で約23億円)! この世界規模のレースに、日本から唯一参加しているのがチーム「HAKUTO(ハクト)」です。チームリーダーの袴田武史さんに話を伺ってきました。(公開:2015年6月30日/更新:2022年1月24日)

“2017年末までに無人探査機を月面に着陸させ、500m以上移動させる。その内容を証明する静止画や動画を地球に送信せよ。ただし、国や政府の力を借りてはならない”

リーダーは元コンサルタント

袴田武史さんは子どもの頃、映画「スターウォーズ」に惹かれ、宇宙開発を夢見るようになったそうです。

「当時は、映画に出てくるような宇宙船をつくりたいと思っていました」

名古屋大学工学部を卒業後、アメリカのジョージア大学で宇宙工学を学びます。その後は、日本のコンサルタント会社に入社。

「私自身がエンジニアとして宇宙開発に携わるよりも、プロジェクト全体をまとめ、前進させるような役割を担ってみたい。そう考えるようになったんです。そのためには、エンジニアやお金の手配といった経営手腕が不可欠で、コンサルタントになって腕を磨きました」

そんな袴田さんの元に、ヨーロッパのチームから声がかかったのは2009年のこと。
「僕らと一緒にGXLPに参加しないか?」
袴田さんはレースへの参加を決意し、ボランティアスタッフとして奮闘します。
けれど、宇宙開発にかかる費用は、民間企業にとって大きな負担であり、欧州チームは途中で断念(このほかにも途中棄権したチームは多く、参加チーム数はレース開始時から半分近くに減っています)。しかし袴田さんは、「日本からもすごい人たちが参加しているのに途中であきらめるのはもったいない!」と考え、日本単独のチーム「HAKUTO」を結成。2015年1月には、一定の技術水準に達したチームにのみ贈られる「中間賞」を受賞しました(「HAKUTO」を含め、計5チームが受賞)。

チーム「HAKUTO」のメンバー。前列右から4人目が袴田さん。その隣は、小惑星探査機「はやぶさ2」のプロジェクトにも携わった東北大学の吉田和哉教授。ほかにも、弁護士、惑星科学者、エンジニア、デザイナーなど、多彩な人材が揃う。

期限は2017年末。優勝は不可能じゃない!

現在は、2017年末の期限に向けて、ローバー(調査用の小型探査機)のさらなる改良に力を入れています。

「ローバーが500m以上走ったことをいかに証明するか、その方法も検討中です。期限は2017年末ですが、当初のスケジュールを前倒しにしてロケットを打ち上げるかもしれません。複数のチームがロケットの打ち上げや探査機の走行に成功した場合、一番最初に地球へ動画を送ったチームが優勝ですから」

予想は難しいと知りながらも、あえて「勝算は?」と尋ねてみると、「優勝は決して不可能じゃない」と頼もしい言葉が返ってきました。

「私たちのチームには、人工衛星や宇宙機の開発をリードしてきたメンバーなど、各方面のエキスパートが揃っています。このレースで結果を残し、宇宙開発の歴史に新たな1ページを刻みたいですね」

2017年にはレースの結果が明らかになる予定です。チーム「HAKUTO」の活躍に乞うご期待!