おすすめの本:「エンジェルフライト」

2012.12.6(Thu)

こんにちは。編集部のナモセです。

今日は一冊の本をご紹介します。

engelfreight

エンジェルフライト 国際霊柩送還士』。

「国際霊柩送還士」。耳慣れないことばだと思います。
私もこの本を読んで初めて知りました。
海外で亡くなられた日本の方、
あるいは日本で亡くなられた海外の方のご遺体を
本国へ送還することを専門とするご職業があるそうです。
本書は、その国際霊柩送還士の日常を綴ったノンフィクションです。

遺体に対する扱いは国によってまちまち。
発展途上国では、十分なエンバーミング(防腐処理)を
施さないまま送還する例も珍しくないとのこと。
そうした遺体を生前のきれいな姿に回復させ、
ご遺族のもとに送り届けるのも国際霊柩送還士の仕事だそうです。

海外での不慮の事故やトラブルは、
ご遺族にとっては予想もしなかった「青天の霹靂」。
事件性があればマスコミの注目を集めてしまうこともあります。
そんな中、動転するご遺族にどう寄り添うのか、
なにが故人の遺志に適うことなのか。
本書では、ときに苦悩しながら
目の前の仕事と誠実に向きあう送還士の姿が
丁寧な筆致で綴られています。

読んでいて感じたことは、
人の死には生物学的な死と社会的な死の
2つがあるのだなあ・・・ということ。
送還士が扱うご遺体は、
生物学的には亡くなっていても、
まだ社会的には葬送されていない。
いわば生物学的な死と社会的な死の狭間で
宙ぶらりんになっている状態です。
その2つの死をどう仲立ちするのかという問題と
日々格闘しているのが、
国際霊柩送還士という職業なんだなあ・・・と感じました。

本書でも触れられていますが、
日本社会では死にまつわることを「タブー」とする風潮があると思います。
そんな中、生死の境目に立ち会う職業の方々が
その矛盾を一身に抱えて、もがいている。
そうした様子を克明に表したこのノンフィクションは、
社会への大きな問いかけを含んでいると思います。

***

著者の佐々涼子さんはフリーライターで、弊社でもお世話になっている方です。
私も何度か仕事をご一緒させていただきました。
「いま、ほかの仕事のない日は毎日、羽田空港に通っているんですよ~」
と、おっしゃっていたことを覚えています。
こうして一冊の本にまとまるまでには
膨大な時間の積み重ねがあったのだろうなあ・・・と推察します。

その甲斐あってか、
本書は第10回開高健ノンフィクション賞を受賞しました(!)。
ぜひこれからも優れたノンフィクションを
たくさん生み出してほしいですね~。

文章はライトで読みやすいのに、読後感はずっしりと重い。
おすすめの一冊です!

(※ちなみに本書は弊社の制作実績ではありません)